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100倍、身につく国語力 (48) 独特表現篇

❤小~高校生と,母親向けのレッスン

(1年間で国語力の悩みが解決できる!)

独特表現篇 ⑨

  
【独特表現の日本語の特徴】
 
2.日本語特有の独特表現の実態
 
(9) 気になる「~のだ」の文末表現
 
 最近では、日本語の書き言葉の文末に
「~のだ」という表現が非常に多く見ら
れる
ようになりましたが、みなさんは気
にならないでしょうか。
 
 ときには論文の文末などに、このよう
な「~のだ」を見かけると、なんとなく
落ち着きません。話し言葉の場合、この
「~のだ」はほとんど使われないのに、
考えてみると不思議ですね。
 
 そこで、「 ~のだ」が文末に現れる
場合を、少し考えてみることにしまし
た。これについて、大野 晋著『 日本語
練習帳』
に、筆者が文章を書く心得と
して「『 のである』『 のだ』を消せ」
とまで、強い口調で説いていらっしゃ
います。それは、宮井一郎著「『 夏目
漱石―人と作品』の中で、漱石を論じ
る中でも、 
 
 ~胚胎(はいたい)しているので
  ある。
 ~英国へ留学するのである。
 ~まことに素朴な表現なので
  ある。
 ~没頭するのであって、
 ~脱皮を遂げることができた
  のである。
 
のような例が挙げられています。
 
  これは、本文の文末をよく見ると、
「 のである」多く使われているのに
気づかれたからで、「 のである」は
「 のだ」とも「 のであります」とも
使うということを指摘されています。
 
 こういった文末は、普通、強い断定
を表わすだけでなく、相手に物事を教
える場合によく使われるということ
です。その由来は古く、江戸時代に遡
(さかのぼ)ることができるようです。


 大野先生は、「 此(この)橋が永代橋
(えいたいばし)と云(い)うのだ」【洒落
本(しゃれぼん)『 辰巳之園(たつみの
その)』】という例を挙げられています。
これは「 お前は知らないだろうが、
永代橋というのはこの橋 だ」と相手に
教えているところだそうです。
 
 ちなみに、以前ほどではありません
が、大学の先生は講義の中で、しきり
に「~であります」を使いますが、
これなどは、「 君たちは知らないだろ
うが、こういう事実があるんだよ」と
いう気持ち込めた表現になっているの
だとも指摘されています。
 
 從って、大学の教授の話には「~ので
ある」
が多くなる理由は分かりますが、
この短縮形である「~のだ」があまりに
も頻繁に使われると、筆者の意見が押し
付けられているようで、何だか落ち着き
ません。
 
 ところで、私が大学院時代の頃に某
先生から「最近、論文の中に『~のだ』
という文末が多く見られるが、できれば
そういう断定的な表現は避けた方がいい
でしょうね」という話うぃ伺ったことを
記憶しています。
 
 その話を聞いた後、数多くある本から
一冊選ぶ場合、私の本の選択基準にも
なっているくらいです。

 つまり、「~のだ」に対して、友人間
「のだ君(くん)」と呼び捨てにし、
パラパラと本をめくりながら、もしこの
「のだ君」をいくつも見つけると、決し
て購入しないことにしていました。なぜ
なら、この「 のだ君」タイプの本という
のは、往々にして自己主張の押し付けが
多く、あまり内容の価値が見い出せない
からです。


 これは、作文の文末でも同じ傾向があ
り、特に若い人は好んで「 ~のだ」を使
いたがりますが、本人も「のだ君」
自己主張の強い表現だと気づいていない
ことが多いのです。

❤少し困るのは、学生がこの「 ~のだ」
 の表現は、格式のある表現という先入
 観があり、レポートや論文などにも
 無意識で使用するため、私は、可能な
 限り早目に注意してあげることにして
 いました。
 
<参考> 大野 晋著『 日本語練習帳』
    (岩波新書、1999初版)
 
アナミズ (2024.03.30)
 

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