ぷるんとした子犬、長生きは罰ゲーム、濁流まいまい、訥弁で何が悪い、
十二月十二日
午後十二時三〇分起床。コーヒー、フルグラチョコ。ココスで森進一にからまれる夢をみる。外は雨。ちなみに雨模様とは、今にも降りそうな空の様子のこと。お前もいつかは世の中の、傘になれよと教えてくれた、あなたの真実いまいずこ。どうせ二人はこの世では、花の咲かない枯れススキ。
昨夕、イオンの書店で新刊を二冊買った。リチャード・ホガート『読み書き能力の効用』と松村圭一郎『所有と分配の人類学』。いずれも、ちくま学芸文庫。今の日本の文庫判レーベルのなかでは俺が最も高く評価しているもの。ホガートの本は二〇世紀の大衆文化論における「古典」。ブルデューよりまずはこっちを先に読むべき。
青木理『カルト権力:公安、軍事、宗教侵蝕の果てに』(河出書房新社)を読む。
時評集。「賞味期限切れ」と思われる文章も含めてそなかなか愉快に読めた。昨年の元首相銃撃事件をめぐる感懐や考察はごく平凡なもの。まだ自民党と旧統一教会の癒着問題が浮上して間もないころだったから、誰が書いてもこんなもんか。私が覚えている限り、(これといった歴史観や政治観もないのに)「右派的・排外的」言動を取りたがる人たちはしばしば、韓国発祥の旧統一教会のことも悪しざまに言っていた。その教団が自分らが「支持」している「親分」とがっちり手を組んでいたことが明るみに出たのだから失望の声がもっと噴き出してもいいはずなのにそういう様子はあまり見られなかった。その「見たくないものから目を背ける能力」に私は感心してしまう。
「桜を見る会」とか久しぶりに聞いた。安倍の元公設第一秘書が略式起訴を受けたというやつね。いま自民党各派閥の政治資金パーティ問題で各メディアは大盛り上がりだけど、政界には「マスコミの報じない公然の秘密」というやつが多分おびただしくあって、それらが本格的に「表沙汰」になると、もう取り返しのつかない事態に陥るのかも。
「大川原化工機事件」をめぐるルポはちょっとした恐怖読み物。『日本の公安警察』の著者だけあって、警視庁公安部の沿革や内情にはやはり詳しい。この組織の存在意義はもともと「治安維持」と「防共」にあった。だから冷戦終結によってその主たる目的を失ったということになる。にもかかわず組織内の「エリート意識」は変わらない。だから厄介。組織の必要性を世に知らしめるためならあまり手段を選ばない。政府中枢に働きかけることにも熱心になる。一九九九年に成立した「盗聴法」(通信傍受法)などもその産物。著者はいわゆる「見込み捜査」や「人質司法」といったこの国の刑事司法の悪弊を糾弾している。法務省は、今の刑事司法制度においては身柄拘束によって自白を強要することにはなってないのだから、「人質司法」という批判は不当だという。でもこの事件で会社の代表らは11か月も勾留されている。保釈請求も何度も却下された。僕は日本の司法行政のことにはかなり疎いので、こんご勉強して「問題点」をいちど整理してみたい。
もうそろそろゴハンが炊ける。四時に図書館だな。できれば年内に『美徳なき時代』を通読したいものだけど。
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