北海道横断の旅 ショート版 第4話 危険運転
僕の番だ!
今日の宿までまだまだ150kmくらいあるが、ここで僕が運転すると名乗り出た。恐怖や不安はもちろんある。だが、コメダは昨晩そんなに寝られていないと言っていたので、ゆっくり休んでほしいという気持ちもあった。それ以上に、冬の北海道を走ってみたいという好奇心が前のめりに出てしまったのだ。フロントガラスをきれいにふき取って、再出発した。さすがはマツダ車。デザイン面が素晴らしい。ドライバーにだけ見える形で磁束表示がフロントガラスの向こうに表示されている。助手席では気づかなかったことだ。きれいにしたはずのフロントは、瞬く間に視界を悪くした。これはいくら何でもワイパーが悪い。危険すぎる。マリオカートのイカ墨よりも視界が悪い。だがもう止まることなどできない。己の感覚のすべてを使って車を前に運んだ。隣にはヌートバーが乗ってくれていて、サポートをお願いした。主に左側の視界担当である。途中から車線が1つに減り、追い抜かしに気を付けなくてよくなった分、幅の狭さに心理的圧迫感を迫られるようになった。少し滑ったら、もしくはハンドルを間違えたら床にぶつかるのだろう。そんな恐怖の中目の前には大きな山が現れた。トンネルだ。ライトこそ正常に動作するが、それでも前が見えないのには変わりない。まるで、左右から銃口を突き付けてくる兵士がいる状態で前進しているかのようだった。ただただまっすぐ進めばいい。カーブならば、それに沿って走ればいい。たったそれだけのことなのに、視界を奪われると途端に不安になるのはいかに人間が視覚に頼っているかが分かることであろう。一つ死線を潜り抜けた時、僕はこの状況に楽しんでいることに気が付いた。上手くバランスをとれるようになったサーフィンやスキーのようなスリルと喜びに近い。途中、他の3人も適当なところで番を代わる覚悟はできていると言ってくれたが、このノってきた自分を止められるものなどいないのだ。道中鹿がいたようで、3人は興奮していたようだったが、さすがに僕は運転に集中した。写真を撮ってくれと頼んだが、もう遅かった。こうして恐ろしい高速道路は終わり、下道に入った。まあ、車が多かったらぶつかっていたのかもしれない。今回はそれが不幸中の幸いだったということにしておこう。
下道もただただまっすぐに伸びる道が続くだけであった。あるものと言ったら「この先7km、セブンイレブン」という看板だ。300m先のような雰囲気で大々的に掲げられていたが、7kmというところは見逃さなかった。何もかもスケールが北海道サイズである。田舎民が言えることではないが、徒歩で行けるような、決してコンビニエンスではないコンビニが、ここにはあるのだ。ナビの通りに従って、無事目的地まで来ることができた。旭川の層雲閣MOUNTAIN RESORT 1923という大きなホテルだ。もう既にたくさんの車が停まっていて、駐車場の奥の方に誘導された。道には全然車が無かったのに、意外である。降りてホテルに入るまでの間でノアを探したら、割と手前の方にあるのを見つけた。どういうことなんだ。
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