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新作 『Genderless 雌蛇&女豹の遺伝子』(18)蜘蛛少女と美少年のキス。

NLFS単独興行春の大会は盛況の内に無事に終えることが出来た。
一時、所属女子ファイターは男子に研究され勝てなくなると客足は遠のき単独興行は無理があると思われたが、女王蜂AKANEこと植松あかねという新たなヒロインを得ると完全に人気を取り戻した。

大会は桜井姉妹、角川聖子、AKANEが出場したが、長年スクールを引っ張ってきた桜井姉妹の衰えが明らかになってきた。現役スクール選手最年長といってもまだ28才であるが、中学卒業と共に入校すると12年間ものあいだ多くの男子ファイターと戦ってきたのだ。女子にとって、これはかなり過酷であったと想像できる。

共に男子MMA下位ランカーに判定負け。

それを見ていた榊枝美樹は “あの二人にはこれ以上無理はさせられない…” と思う。
とは思っても桜井ツインズのテクニックは素晴らしいものがある。その技術は後輩に伝えてもらいたい。スクールでのコーチは現在シルヴィア滝田と嶋原(旧姓奥村)美沙子であるが、嶋原美沙子は年内で退校する意向である。それに代わる新コーチとして桜井姉妹は人柄良く皆から信頼されうってつけの存在だと美樹は思うのだった。

角川聖子は自分より一回り大きい元男子プロレスラーと対戦。聖子も女子プロレス出身であり、元とはいえ、男子プロレスラーと女子プロレスラーを台本なしの真剣勝負で戦わせることで話題になっていた。
試合は1Rこそ元男子プロレスラーのパワーに圧倒されていた聖子だったが、それでも負けずに真っ向から挑んでいた。2Rに入ると引退してから2年になる元男子プロレスラーの動きが鈍くなってきたようだ。明らかにスタミナ切れを起こしている。
3Rに入ると聖子が俄然攻勢に出る。スタミナ切れと、真剣勝負など経験したことのない元男子プロレスラーの表情が弱気になるとタックルからマウントになりその顔面に拳を叩き込んだ。鼻血を流し失神している男子プロレスラーを見たレフェリーが慌てて試合をストップ した。角川聖子も不器用ながら着実に力をつけているようだ。そのフィジカルの強さはスクール1だろう。

メインでは植松あかねが男子MMA65kg以下級3位の杉浦玲央に挑戦。
NLFS単独大会でこれだけの大物男子ファイターが出場することは珍しい。杉浦としてもアカネの評判は聞いてるだろうが、MMA男子上位ランカーとしての名誉もあり女子には絶対負けられない。
流石のアカネも大苦戦であった。精密機械のようにピンポイントで刺す正確な打撃も杉浦は研究してきたのだろう。鉄壁なガードで思うように刺すことが出来ない。逆に組んでも離れても杉浦の圧力に防戦一方。
しかし、第3Rに入って杉浦は勝利を確信したのか? 不用意に飛び込んできた。

シュッ! ビシィ!!

狙いすましたようなストレートがカウンターで杉浦の顔面を貫いた。
その場に崩れ落ちた杉浦は完全に失神。レフェリーはカウントする必要もなかった。
女子ファイターが男子上位ランカーを倒すのは久しぶりのことだった。

女王蜂 AKANE 恐るべし!

大会後数日経つと、榊枝美樹は桜井幸、咲の姉妹を事務所に呼ぶと現役引退、その後はスクールのコーチになってくれないか?と打診。姉妹もそろそろ潮時かと思っていたのか? 快く引き受けてくれた。そんな姉妹の長年の労を美樹は心から労った。
これで、スクールの現役選手は角川聖子、
久住琴、白木志乃、そして植松あかねの4人だけで寂しくなるが、夏のG主催格闘技大会で二人の少女がデビューする。

スパイダー・ガール 奥平美由紀と、もう一人は美由紀の一年先輩 神永紗織。


あの日、アツシ少年と和風レストランでランチをしてからというもの、植松拓哉は悶々とした日々を過ごしていた。
美少年を前に緊張で言葉少なの植松と違ってアツシ少年は屈託がない。イキイキした表情で、高校では演劇部に入って色々なことに挑戦をしてみたいと夢を語っていた。

「あそこの演劇部は全国的にも有名だからね。アツシくんは見た目が女の子のようだから歌舞伎の女形なんか似合うんじゃないかと思ってたんだ。ハハハ!」

植松が似合わぬジョークを言うと、アツシは意味ありげな目を送ってきた。

小一時間ほど食事をすると、鳩中姉弟の住むマンションまで車で送った。
到着すると、アツシは真面目な表情で植松を見つめる。植松はドキっとした。

「 俺の顔に何か付いているのかな?」

「おじさん、、あの日、試合会場で隣り合って座っていた時、ボク、、一瞬おじさんの股間に触れちゃったんだ」

「・・・・」

「おじさんのアソコ勃ってたよね?」

“やはり気付かれていたのか…”

「あ、いや、、、 あれは試合に、熱戦に興奮してたから。そういうことあるだろう?」

しどろもどろに植松は言い訳した。そんな植松を美少年はジッと見つめている。

「べつにいいんだよ、おじさん。ボクだっておじさんのこと…」

少年はそれ以上のことは言わない。

それはいきなりだった。
アツシ少年は植松に顔を寄せるとその左頬に “チュッ” と、キスをした。

「おじさん、ボクに会いたくなったらいつでも声をかけてね。きっとだよ…」

アツシは植松の耳元にそう囁いた。

「それじゃ、今日はご馳走様でした」

アツシは車を降りるとマンションの中に消えて行った。それを植松は呆然と見送るだけだった。その少年とは思えぬ妖しく神秘的な色香に狂ってしまいそうだ。

“アツシ、、君は少年なのに何故そんなに美しいのだ? 俺の魂を奪おうというのか…”

狂おしい! アツシ少年のキスは植松拓哉に魔法をかけたのだろうか?
気が付くと植松の股間は又反応していた。

その日。
G主催夏の格闘技大会のカードが発表された。NLFSからは植松あかねが、いよいよ男子MMA65kg以下級1位西村仁と、王者鞍馬友樹への挑戦権をかけて戦う。
他に、奥平美由紀、神永紗織のデビュー戦が組まれていた。神永紗織の対戦相手は武田義彦というレスリング経験のある23才の青年で彼もデビュー戦となる。

難航したのは奥平美由紀の対戦相手である。美由紀サイドはあの植松拓哉の弟子に当たる潮崎三四郎にオファーを出していたのだが、彼は女子とは戦わないということで何と宍戸拳児と戦うことになったのだ。
最終的に美由紀の相手に決まったのは、アカネとのデビュー戦で滅多打ちで倒された空手家 園川天空であった。
園川は女子(アカネ)に敗れた屈辱を胸に猛特訓をしているそうだ。女に負けたまま引き下がれるはずがない。

「なんだと!今度の オレの相手は中学を卒業したばかりの女の子だって? 舐めやがって。 試合会場を惨劇の場にしてやる!」

園川はそう言って怒りをあらわにしたが、事態は思わぬ方向に流れることになる。

大会一ヶ月前、潮崎三四郎が稽古でケガをして欠場を余儀なくされた。
宍戸拳児の相手がいない! 更に。。。

つづく。

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