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『雌蛇の罠&女豹の恩讐を振り返る』(11)ケンカ空手少女、元幕内力士を血祭り。

重要な脇役と考えていたシルヴィア滝田。

そのプロ格闘技戦でのデビューは、物語の構成上からも華々しく勝利を飾らせたいところ。しかし、その対戦相手は元幕内力士設定の巨漢雷豪ですからね。
常識的に考えて、18才の女子高生が自分より120㎏近く大きな(元)力士相手に勝てるわけがない。いくらケンカ空手の使い手であってもそこには理由がなければリアリティがない。まぁ、それは架空の物語なので、あまり気にする必要はないと思いますが頭を悩ませたことがあります。

私は大相撲が大好きです。
お相撲さんに対して、少年時代から一種の尊敬の念のようなものがあり、一番強いのは力士だと信じていた時期があります。
相撲界での最高峰、元横綱曙がボブ・サップに倒された場面は自分の目を疑いショックで暫く立ち上がれなかった程。自分の信じるものが崩れ落ちるシーンは正視出来るものではありません。
それを思うと、尊敬する父がまだ高校生の女子選手の腕の中で失神する姿を目の当たりにした堂島龍太の気持ちは計り知れないですね。彼にとってみれば、父には宗教にも似た感情を抱いていたでしょうから。

想像してごらんなさい…。
もし、もしもですよ、、大相撲の幕内力士が女子選手とリングで戦い、あの曙のような無惨な姿をさらしたならば? うつ伏せで倒れている力士の前で少女が勝ち名乗りを上げている光景を。。。 いくら男が女に打ち倒されるミックスファイトに被虐心を刺激される私であっても、その光景は切なくて想像もしたくないですね。
そんな力士が、凶暴なる褐色のケンカ空手少女シルヴィア滝田相手とはいえ、まだ18才の女子高生なのですよ。そんな女子高生の噛ませ犬に力士を選んだからには、負けねばならない理由が必要。

巨漢 雷豪は元幕内力士といっても3年前に不祥事から角界を追放された。それ以来、酒と博打で碌な生活を送っていない。
雷豪が女子との格闘技戦オファーを受けたのは、きっと、金に困ってと想像出来る。
彼は女を甘く見ていたのか、、 それとも生来の怠惰な性格なのか? 試合が近付いてきてもトレーニングらしきものはせず酒ばかり飲んでいるという噂だ。

そして、ゴングは鳴った。

この試合の詳しい模様は。
本編『女豹の恩讐』(12)顔面崩壊。

いくら3年以上もブランクがあり酒浸りの雷豪とはいえ、174(68)のシルヴィアより身長で11cm以上高く、体重にいたっては120㎏近く重い。それに何と言っても元幕内力士の肉体は岩のように強靭だ。
雷豪は、こんな女の子なんか捕まえて、至近距離から張り手かぶちかましてやれば簡単に勝負は決すると考えていた。ところがシルヴィアは華麗なフットワークで雷豪の周囲を回ると、時折り、その胸板に正拳突き、下半身に下段蹴り、、、しかし、雷豪はビクともせずニヤニヤ笑っている。
尚もシルヴィアは雷豪の眉間に強烈な正拳突きを炸裂させるも、ぶちかまし稽古で鍛えられていた力士の額は恐ろしく固い。逆にシルヴィアの拳がダメージ。

力士の肉体恐るべし!

打っても打っても、それを平然と受け止め笑みさえ浮かべている人間山脈。
だが、その怪物性を誇示出来たのは1Rまでであった。2Rに入ると3年間のブランク?酒ばかり飲んで碌にトレーニングも積んでこなかったつけが出る。スタミナが切れかかってきた。焦りを感じた雷豪はシルヴィアを捕まえに出るが、シルヴィアは雷豪の動きが読めてきた。逆にその左膝に狙いを定め、ピンポイントで何度も何度も蹴り続ける。次第に脚を引きずり出す雷豪。

決着が付いたのは3R
スタミナ切れとピンポイントで左膝を蹴られ続けた雷豪の動きが鈍い。立っているのがやっとの状態だ。それでもシルヴィアの道着を掴むと強引に振り回す。その怪力に倒されたシルヴィアの上に覆い被さろうとダイブする雷豪。しかし、シルヴィアの動きは速くさっとそれを避ける。チャンスを逃した雷豪が立ち上がろうとする。

ズドッ!

サッカーボールキックが飛んできた。
それでもふらふらと立ち上がる雷豪。
そこに待っていたのは?

グシャッ!!

真正面から顔面に正拳突き。
額は鍛えられている力士とはいえ、顔面を鍛えることは不可能。手で顔を覆うとそこから血がダラダラ流れている。顔面崩壊?鼻骨骨折というより潰れている。
崩れ落ちる雷豪に馬乗りになり、仕留めようとするシルヴィアをレフェリーが止めに入った。元幕内力士が、18才の空手女子高生相手に血の海に沈んだ。

それを観ていたダン嶋原が呟く。

“女子高生といっても、あの娘(シルヴィア)は日々真剣に空手に取り組んでいる。トレーニングも碌にせず、緩んだ身体で彼女の前に立てば殺されるぞ。何が元幕内力士だ!大相撲の面汚しじゃねぇか… ”

角界から追放された男といっても、元幕内力士が少女に敗れた。日本国技の名誉を傷つけられた相撲界は、後にシルヴィアのもとへ、元小結 翔龍道 という刺客を送る。
翔龍道は雷豪とは逆に小兵力士ではあったが番付は雷豪より上。しかも、引退してまだ1年しか経っておらず、引退後も部屋の若手に稽古を付けることもある。
しかし、雷豪戦からNLFS流トレーニングで格段に進化したシルヴィアは強い。角界の威信をかけてリングに上がった翔龍道には
“女になんか絶対負けられない” というプレッシャーがあった。
シルヴィアの強打にダウン。戦意喪失寸前の翔龍道に襲いかかろうとするシルヴィアだが、彼女は自信過剰になっていた。まともにその真正面に立ってしまったのだ。

バチィーーン!!

元三役力士の張り手を至近距離からまともに受けてはたまらない。シルヴィアは操り人形が崩れ落ちるようにその場で失神。

この試合の模様は。
本編『女豹の恩讐』(16)シルヴィア失神。

しかし、これを糧にシルヴィアは更に進化していくことになります。

さて、NOZOMIの遺伝子たち。
「動」のシルヴィア滝田の次に登場するのは「静」の奥村美沙子。

続きます。



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