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『雌蛇の罠&女豹の恩讐を振り返る』(12)普通の女の子に敗北する屈辱。

奥村美沙子は何処にでもいそうな地味な女の子という設定でした。
NOZOMIのような華やかさ、鎌田桃子のような豪女さ、シルヴィアの気性の激しさ、
小さい頃からレスリング一筋の桜木明日香等とは違い、格闘技とは縁のない生活を送っていた普通の少女だった。
そんな彼女が小学生時代夢中になっていたのは体操。ところが、成長期に入るとぐんぐん背が伸び、長身の自分には体操は向かないと悩む。中学になって彼女が選んだのはなんと柔道でした。

そんな奥村美沙子をNOZOMIがどういう経緯で見出し、内弟子にまでしたのかは不明だが素質を見抜いていたのは確か。
後に “柔術マジシャン” と異名を持つまでになったのは、、あのNOZOMI譲りの身体の柔らかさは体操経験が大きかった。それになんと言っても何事にもひたむきに努力する姿勢、“努力こそ天賦の才” なのだ。

奥村美沙子のデビュー戦は16才の時。一年前まではまだ中学生というから驚きだ。
対戦相手は小杉稔。彼は高校でレスリングを指導する実直な体育教師。全国マスターズレスリング(45〜50の部)で三位入賞の猛者。46才であり美沙子とは父娘ほども歳が違う。この試合は打撃なしのクラッチルールで行われたが、小杉は終始美沙子の身体をコントロールし何度もマットに叩きつけた。まだ高一の少女で格闘技経験も3年程しかないにも関わらず、その防御テクニックに驚かされる。投げられ、何度もマットに叩きつけられても、うっすらと目に涙を浮かべながら立ち向かってくる美沙子。この試合、防戦一方だった美沙子が残り時間一分のところで、小杉の背後に回ると蛇のようにその身体に巻き付いた。胴締めスリーパーが決まった! しかし、そこで無念のタイムアップ。小杉の判定勝利だった。

”実質、俺の負けだな、、もう余力がなかった。あと一分あったらどうなってたか?
それにしても、こんな大人しそうな少女なのに内に秘める闘志はすごい。男として悔しいけど感動させてもらった“

試合後、感動した小杉は美沙子にハグをするとその健闘を称えた。

奥村美沙子が再びリングに上がったのは小杉稔戦から一年半。18才になった美沙子はNLFS流トレーニングで劇的に進化。小杉戦はクラッチルールであったが、今度は打撃も何でもありのMMAルール。
相手はこれがMMA戦デビューとなる増渕哲人。デビュー戦とはいえ、アマチュアではそこそこ実績のある男子選手である。
美沙子はこの増渕をまるで練習台の如く終始圧倒した。打撃で活路を見出そうとする増渕だが、打たせる距離をとらせずその身体に密着し蛇のように巻き付く。増渕は美沙子のしつこい密着に何も出来ない。絞められ関節を取られまるで実験台だ。

最後はマウントから数発殴打すると増渕は鼻血を流した。それを見た美沙子は打つのを止め、レフェリーに向かって “これ以上は危険よ” とばかりに首を振った。美沙子にはそんな冷静さ、否、やさしさがあるのだ。
もし、これがシルヴィアだったらレフェリーが入ってくるまで容赦なく相手の顔面を破壊していたでしょうね。
「動」のシルヴィアと「静」の美沙子。
シルヴィアの戦い方は破壊力があり相手に対して容赦がない。美沙子は破壊ではなく相手の身体を支配する。打撃中心のシルヴィアに対して、縦横無尽柔術マジシャンの美沙子。その戦い方はファンタスティックであり美しさが漂う。

私は思うのです。
ミックスファイトで女子に敗れる男子に自分を重ね合わせ、そこに被虐的悦びを感じる私のようなM性の強い男にとって、普通の女子に負かされるのは至高の快感。
シルヴィアのように、気性が激しくいかにも強そうな女の子に破壊されるのもいいのですが痛そうで恐ろしい(笑)。
奥村美沙子は決して男を睨み付けるような闘志を剥き出しにするタイプではない。普段は控え目で内気、大人しい女の子。
そんな普通の女の子に負けてしまうのは、よりマゾヒズム的悦びを得られると思う。例えるなら、クラスでも気が強くやんちゃな女子と取っ組み合って負けてしまうより普通の地味な女子に負ける方が屈辱感があり脳内快楽が強いでしょうね? あんなに強い奥村美沙子が、普通の女の子であるかどうかは置いておいて、こんな微妙なことを想像する私は変態ですね(笑)。

奥村美沙子のファイトスタイルは徹底した密着攻め。体操経験がありNOZOMI譲りの柔軟性がある彼女には柔術の才能があったのでしょうね?  一旦相手の身体に巻き付き密着すると、それは蛇のようにニュルニュルと全身支配し絞め上げる。密着すれば相手が自分より大きな男子であってもそのパワーを封じることが可能なのだ。。
荒縄のように巻き付くのではなく、紐のように正確にヒュッと巻き付く。大木に巻き付く蔓のように外すことは難しい。

逃れようとすればするほど巻き付く。
これが『無間蛇地獄』である。

美沙子が初めてMMA男子日本ランカーと対戦した時。終始、相手男子はその蛇地獄によって肉体征服、支配され続けた。
その間、美沙子は密着しながら相手の顔に細かいパンチをコツコツ打ち続けた。時間と共に男子選手の顔が腫れ上がり、それを見たレフェリーが試合ストップ。

場内からは、そんな柔術マジシャン美沙子に向かって声が飛んだ。

「ファンタスティック!」

「アメージング!」

そんな奥村美沙子のウィークポイント(弱点)は打撃であった。

シルヴィア滝田と奥村美沙子。
NLFS次期エース候補の2人。
2人にとっての名勝負があるんですね。

村椿和樹vsシルヴィア滝田
ダン嶋原vs奥村美沙子

この異色対決を次回で検証していきたいと考えています。
更新は週末になると思います。









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