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心の底から好きじゃない、ごめん。⑥

彼女とは別れたんだよね



息が止まりそうだった
平然とした顔をして見せたけど
心臓はドキドキしていた


友人を交えて再会したとき
みんなの前で彼はそう言った


久しぶりに会う彼は
あの頃と全く変わっていなかった


やっと夢が叶えられる
彼の引っ越し先は

彼女が就職する所と同じ方面だったそう

けれど別れてしまった



久しぶりに昔よく遊んでいた
仲間との食事はとても楽しかった


みんなで楽しい時間を過ごしたあと

彼はお酒を飲んで
同じ方面のわたしに

『帰り道、家の近くかどこかで降ろしてくれない?』

お願いされた



いいよ

そう返した


みんなと別れたあと 

わたしが運転し、彼が助手席に座る


『元気そうだね  綺麗になったね』

『会わない間に変わったことあった?』


そう聞かれて

『付き合ってた人がいたよ』
『1年続かなかったけど、
    とてもいい人だった』


『今はフリーなの?いい人は?』


『いないよ。1人も楽だし楽しいんだ』

そう答えた

『どうして別れちゃったの?』


『恋愛感情じゃないことに気づいて…
   本当にいい人だったから
   話し合って決めたの』


『そっか…REIならまた素敵な人が
    すぐ見つかるよ』


『あはは、どうかなぁ
   しばらく恋愛はいいかなぁ』


そんな会話をした


『今日久しぶりに話せてよかった』
『俺 もう引っ越すからさ』
『会えなくなるけど、こっちで頑張ってね』
『また…連絡してもいい?』


『いいよ   お互い頑張ろう』
『新しい場所でも頑張って』
『いい仕事できるよ』


彼女となぜ別れたのか
どんな付き合いをしていたか
どのくらい一緒にいたのか

気になることは沢山あったけれど
何も聞かなかった


もう深入りしてまた好きと自覚するのが
しんどかったから

車を降りる彼に
笑顔で手を振った

彼も笑顔で手を振り返して
『気をつけてね』

そう言った




わたしは

彼の笑顔が大好きで

18のとき 彼を意識した瞬間も

まさしく笑顔だった




屈託のない無邪気な表情で笑うから

帰り際 泣きそうになった



また遠くへ行ってしまう

こらえながら
車を発進させようとすると




『REI……!また…会える?』



『……うん。じゃあね。』


そのまま車を走らせて帰った


危なかった
本当はもう少し2人で過ごしたかったけど

自分を抑えられなくなりそうで我慢した


彼はどう感じているだろうか


数日後
彼は引っ越した


少し経って 彼からメールが届いた


『REI この間は久しぶりに会えて嬉しかった
   大人っぽくなっていて驚いたよ
   
   仕事が落ち着いたら、帰省するから
   また会えないかな?
   今度は2人で
   気が向いたら返事ください』


返事はすぐ返さなかった


2週間ほどして
連絡した

『ありがとう  帰省したらご飯でも行こうね』

一言だけ返した
もう追いかけることには疲れていた

前のわたしなら、喜んでいつ帰省するか
すぐ聞いたと思う

決してカッコつけたわけでも
プライドを守ったわけでもない

ただただ
翻弄されたくなかっただけ

ある意味 臆病さ故に
プライドを守ったのかもしれない

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