見出し画像

【短編小説】マイガールフレンド

サービスだよ。

はい、コンちゃんいつもお疲れ様。
いいのいいの、私が渡したかっただけだから。
開けて見てみてよ、そんな大したものじゃないんだけどね、ほら早く早く。何でしょう。

そう!これ前に見に行きたいって言ってたよね?
今前売り券買うと特典ついてくるんだって。
いつも仕事では "みんなの憧れのエース、近藤さん" で頑張ってるんでしょ?
たまには映画でも見に行って、ゆっくりデートしようよ。

最近はずっと残業続きでなかなか一緒に過ごせなくて、私も寂しかったし…って寂しくならないように同棲始めたのに、私寂しがり屋過ぎ?
ふふふ、だってコンちゃんがお休みの日はずっとイチャイチャしてくれるから、お仕事行っちゃうと余計に人肌恋しく感じちゃうんだもん、コンちゃんのせいだからね。

あのさ、コンちゃんもお仕事してる時、私のこと考えて寂しくなったりする?
…え、なんで。
私ばっかりこんなにコンちゃんのこと考えてるってこと?
仕事中だから?なにそれ。

私は、行ってらっしゃいって見送ってから朝ご飯の片付けして洗濯して掃除してお昼食べて買い物行って夕飯の用意してコンちゃんが帰ってくるまでずっとコンちゃんのこと考えてるのに?
コンちゃんのいいお嫁さんになれるように毎日頑張ってるのに?

ふざけないでよ。
コンちゃんも、行ってきますってドア閉めてから通勤中も仕事中もお昼のお弁当食べるときはさずがに思ってくれてるよね、会議中も残業中も帰りの電車でもうちのドアを開けて夜ご飯の匂いを嗅ぐまで私のことずっと考えててよ、ねえ!

……あ…またやっちゃったどうしよう、ごめんね、ごめんねコンちゃん許して。
コンちゃんこれ嫌いだもんねごめんね。
もうしないから、ねえごめんね。
なんか喋ってよコンちゃん、こわいよ。
嫌わないで、ね、ちゃんと直すから。

…もしかして会社に好きな人できた?
最近残業多いのって。
ちがうよね、ちがうよねコンちゃん。
…ほんと?噓じゃない?
よかった…ごめんね、コンちゃんのこと疑ったわけじゃないの、私がコンちゃんに嫌われるようなことするから自信なくなっちゃっただけなの、最低だね私。

でも、いつもコンちゃんのこと思ってご飯とか掃除とか頑張ってるのは本当だよ、嘘じゃないよ。
ごめんねコンちゃん、だからこんな私でも好きでいていい?

…ありがとう大好き。
…あのさ、その、映画デートは、行ってくれますか?
やった、よかった、だあいすきだよコンちゃん。

……………ふぅ、お疲れした。
あ、研修これで終わりすか?
はぁ…あ、いや全然大丈夫です。
なかなか見ないプランだったんで前日にいただいた資料読み込んで頭に叩き込みました。

あはは、そうすね、自分の中にはあまりない人格だったんで出来てるか不安だったんすけど、大丈夫でしたかね。
あ、そう、合格すか、ありがとうございます。
明日から?
全然入れますよ。
はい、また資料お願いします。

あの、さっきみたいなのってよくあるんすか?
だからその、オプションていうか、こんな重いメンヘラ女わざわざ注文してくる客…へぇ、いろんな人がいるんすね。

ちなみに今のオプション付きでいくらになるんすか?
ひぇ〜追加料金えぐ。
あ、分かってますって、オプションの合図は
『サービスだよ』
でしょ、忘れませんから。

えーと時間が来たら追加料金の受け取り、挨拶をして解散っと、はい了解です。
え、挨拶の練習すか。
はぁ。分かりましたよ。


サブスク彼女サービス「マイガールフレンド」をご利用いただきありがとうございました。
担当のアスカでした。
また来月も月額更新してくださいね、コンちゃん。

作者:雪田

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?