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短編小説

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短い妄想文をまとめてみました。 お口に合えばよいのですが。
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#妄想

「逃し屋ジョーの記録」 (短編小説)

 「24ジョー」  その名で呼ばれるようになったのは、仕事の成功率が99.99%から純金を意味す…

9

「来訪者たちの黄昏」 (短編小説)

 駅からすこし歩いた通りの両脇に、あたたかそうな灯りを抱えた店が並ぶ。  それぞれ思い思…

8

「つぐみの独立国家宣言」 (短編小説)

 そのため息はフローリングを滑り、リビングのソファーの上で弾んだ。  なぜなら、その所有…

11

「イカロスの翼」 (短編小説)

 白い機体に走る、鮮やかな青いライン。  流線形の終点に立つ尾翼には、スカイブルーの鷹を…

12

「聖母のように」 (短編小説)

 カフカの「変身」の主人公であるグレゴール・ザムザは、目覚めると毒虫になっている最悪な朝だ…

3

「3つの願い」 (短編小説)

 「お前はどうも落ち着きがないねぇ。 いいかい、人生にはどうしても慌てちゃあいけない時が…

7

「煌る墨痕」 (短編小説)

 ふたつの白い月が紫の空に朧げな孔を穿つ。  月が重なるくらいに近づくけば、もうすぐ電磁嵐がやってくるとショウの12年間の人生経験でも告げていた。  地下から続くタラップを上り、マンホールの蓋のずれたすき間に鼻をすりつけるように外の気配を感じようとするのが日課だ。  テトラポッド型の砂つぶが渦を巻きながらマンホールの穴にまで吹き付け、ショウのゴーグルを叩きつける。  マンホールから顔を出して、逆巻く風の中にオオヒトサライイヌの鳴き声が紛れてないか慎重に見回すと、ボロボ

「ポチの一生」 (短編小説)

 今日、ポチが死んだ。  あれは何年前だろう、年明け早々のテストの採点で遅くなった雨の夜…

10

「誰がため」 (短編小説)

 深夜2時。  閑散とした薄暗い事務所の中で、仄明るい島がある。  パソコンのモニターの明…

7

「粗にして野だが、卑ではない」 (短編小説)

 5月の緑の風はどんな身分にも平等に吹いてくれる。 昼間からこうして縁側にいて、何もせず…

16

「群青日和」 朝日奈 昭 著 (短編小説)

書店にて購入、物語りに引き込まれて一晩で読了。 本書の作者である「朝日奈 昭 」氏は、前著…

7

「株式会社 悪田工務店」 (短編小説)

 (へっ、本当に捺しやがったよ。)  応接セットに腰掛けた目の前に、痩せていかにも気の弱…

6

「ツイてるひと」 (短編小説)

 「おい、またお前が売り上げトップなのか? そろそろどんな魔法があるのか教えろよ」  メ…

9

「赤い糸」 (短編小説)

 辞表を出した時、部長の「形だけは引き止めてます」丸出しの顔を備品の詰まったロッカーを整理しながら思い出していた。  一瞬、お前誰だっけ? と云う眼をして、急激に活性化した脳細胞がようやく同じ課の部下であると知らせたようだ。  いい、慣れている。  いつもそうだった。    クラスメイトがはしゃぐ教室で小説を開いていたが、眼は同じ文面を漂っていた。  友人など皆無で、ひとりでいる姿をごまかすために読みもしない本を開いていたのだから。   家にも安らげる場所は無かった。   両