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やっちゃば一代記 思い出(7)

大木健二の洋菜ものがたり
 誤解 誤用 嬉しい誤算
ベルギーエシャロット
らっきょうの若いのと混同されやすいので、〔ベルギーエシャロット〕と名づけて販売しているのがフランス生まれのシャロットです。
一般の小売店や一杯飲み屋の付け合わせに出されるエシャレットとは全く違います。ただし、こちらは卸売市場のセリ人が勝手に命名したもので、ずっと古株なんですよ。
私がベルギーエシャロットを初めて輸入した時期は〔アンディーブ〕といっしょです。フランスはブルターニュ地方の片田舎で栽培されていますが、運賃の安いベルギー経由で輸入されるため、ベルギー産と誤解されることがしばしばあります。
 アンディーブと同様に販売には往生しました。品傷みが出ると、その臭いたるや生ゴミの中にいるみたいです。六、七、八月は品傷みを警戒して冷蔵庫に保管しながら販売したものですが、結果として十年間は私の独占販売の形となりました。
 数年が経ち、季節が逆のニュージーランドとオーストラリアに出かけ、夏場用のシャロットを栽培てくれるよう依頼しました。その気になったニュージーランドの生産者の歓待ぶりは並大抵ではありませんでした。ところが、わたしらがすっかりいい気分になって帰国したところ、翌年の夏にはフランスでも栽培して輸出してくるという情報が入ったのです。
 フランス産のほうがいいに決まっているので、直ちに了解し、ニュージーランドの生産者との約束は反故になってしまいました。あの時の大歓待を思い出すと恐縮の至りです。おそらくニュージーランドでシャロットが生産されるとの情報がフランスに伝わったのでしょう。情報が入ってから三年後には、夏場でも新鮮なフランス産が切れ間なく入荷するようになり、結果的にはフランス産のシャロットの周年供給が可能になったのですから、ニュージーランドには悪いことをしましたが、嬉しい誤算でした。

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