ラグビーワールドカップ2023 ニュージーランドと南アフリカの強さの源についてその2

 ラグビーワールドカップ2023 決勝戦で対戦するニュージーランドと南アフリカの強さの源泉、特徴について独自の視点から論じたい。以下、独自の分析・推測(憶測?)による仮説です。ご了承ください。

 2回目の今回は両国の戦術の前提の違いとその背景について論じたい。

 ラグビーは、それぞれの局面でいかに優位を構築するかを競うスポーツである。その局面での優位性を積み上げた結果が得点となり勝利となる。では、両国はその前提としてどのような想定をおいているのか?ニュージーランドは個々の力は相手に劣ると仮定(実際にそんなことは稀だが)し、逆に南アフリカは数的同数であれば自分たちが勝っていると考える。その前提に立てば、それぞれが採用する戦術も異なる。

 個々の力は劣ると想定するニュージーランドは各局面において数的優位や質的優位を作ろうとする。1対1で劣るのであれば2対1や3対2といった数的優位を作る。あるいはスペースのある場所で、足の速いバックスが足の遅いフォワードとマッチアップするような質的優位を作ればよいと考える。
 そういった数的優位や質的優位を作るには、相手の陣形が整っていない状態に持っていく必要がある。だから、ニュージーランドのアタックは時間をかけて相手の陣形を崩そうとし、そしてアンストラクチャーな状態を好む。
 しかし実際のオールブラックスは個々で劣ることがほとんどない。逆に個でも優位であることが多く、その優位も考慮したうえで状況判断している。そもそも個で劣っている前提の戦術に、個で勝っている戦術をプラスアルファできるので戦術のオプションがより多くなる。だからオールブラックスのアタックは多彩になる。

 一方の南アフリカは個で勝っていることが前提となっている。1対1や数的同数であれば、自分たちの方が強いという前提。そして実際に強いという現実がある。数的同数であるスクラムやラインナウトは世界一。個々あるいは数的同数で勝っているのであれば、数的同数となる局面を作ればよい。逆に言えば、数的不利やミスマッチを生じさせなければよい。それにはインプレーの時間を短くし、スクラムやラインナウトといったセットプレーの時間を増やすこと。それが彼らの勝利への近道となる。
 しかしそれではなぜ南アフリカは各ポジションにスペシャルな人材がいるのかといった疑問がわく。南アフリカは歴史的な背景から多様な人種・民族が混在しており、ラグビーの各ポジションの適性を有した人種・民族がいる、そして人口が多いというのが私の答えである。
 かつてオランダやイギリスの植民地であったことから、オランダやイングランドからの移民が多い。オランダやイギリス系移民は高長身、横幅のでかい体格の良い人が多い、まさに横幅があってパワーのあるプロップや高長身でたくましいロック、フォワード第3列に適した人材が豊富にいる。一方のバックスは、背は高くなく細身だが、やたら俊敏な黒人や混血の選手が多い。そしてラグビー強豪国の中でもその人口数はトップクラスであり、かつラグビーは南アフリカで最も人気のあるスポーツの一つであることから有能な人材がラグビーに集まる。ということで南アフリカは各ポジションに世界最高クラスの選手が揃っている。それが南アフリカの一番の強みである。

その3に続く(続かないかもしれない)。

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