勇気を出してミシンを買った話

今年に入ってから、ミシンを購入するかどうか、ずっと考えていた。

特別、裁縫が得意とかではないけれど、何かを作るのは嫌いではない。

今までに、トールペイントやエコクラフト、ワイヤークラフトなどを楽しんでいた時もあったな。　

これはきっと母譲り。

まだ私が子供の頃、母はミシンで服を作ってくれることがあった。

でも母が一番得意だったのは、編み物。セーターやカーディガンは、既製品を買ったことがなかったと思う。手袋やマフラーも母のお手製だった。

手編みだけに留まらず、機械編みも習得していた。

他にも多趣味で、私の記憶にあるものでは、籐籠編み、革細工などもやっていて、子供の手が離れた頃からは、油絵を習っていた。

母の現在だが、軽度のアルツハイマー型認知症と診断されて２年半程経った。得意だった編み物も難しくなっている。

そんな母のことは、いつか記しておきたいなと思っている。

ミシンの話に戻る。

結婚した時に、母からミシンを買ってもらっていた。

子供が生まれる時に、ベビードレスをミシンで作ってみたりしたけれど、その後は子育て中心で、裁縫などする余裕がなかったなー。

ミシンを使うようになったのは、子供が幼稚園に入園する時。いわゆる「幼稚園グッズ」を作ることになった時から。

絵本袋、上履き入れ、体操着入れ、ランチョンマット、お弁当入れ、コップ入れ・・・

既製品を購入してもいいのだが、当時は手作りする人がほとんどだった。入園前の母親の一大イベントだ。

大変だったけれど、久しぶりのミシンでの物作りを、楽しんでいる自分がいたのを覚えている。

その後も、たまにクッションカバーや
ソファーカバー、子供のスカートなどを作る時に、ミシンを引っ張り出していた。

そのミシンも、数年前に調子が悪くなってしまい、下糸調節がうまくいかなくなった。その後は騙し騙し使っていたのだ。

そんな中、去年、とある会合で高齢の女性と出会う。白髪をキリッとまとめ髪にしていて、とても雰囲気がおしゃれで、若々しい。

話してみると、裁縫が趣味で、身につけている洋服は、ご自身で作ったとおっしゃるではないか。

一瞬で、私の心を奪った。

私もこんな風に、自分のために裁縫をしてみたいなと思ったのだ。

そして、その数カ月後。
友人から、ソーイング教室に一緒に行ってみないか、という連絡が入る。

ビックリするほど、タイムリーな誘いだった。

そして、トートバッグと、ワイドパンツ作りのレッスンを受ける機会に恵まれたのだ。

そのソーイング教室で使わせてもらった、職業用ミシン。その無骨な感じと、使い勝手の良さが私の心を掴んでいた。

さらにさらに後日、手芸屋さんで働いているママ友の１人に、ミシンを購入するか迷ってることを相談してみた。

彼女は裁縫が得意で、ミシン２台、ロックミシン２台を所有している。

そんな彼女に、

「これから歳を重ねたら、外に出ることも大事だけど、家の中でできる趣味をもっていることも、大切だと思うんだよね。」

と言われて、確かにそうだなと思って、あの素敵な高齢の女性のことを思い出した。そして、ミシンを購入することを決心した。

その後も、決して安くないものなので、とても悩んだけれど、半世紀以上生きてきた自分のために、ご褒美あげてもいいよねと、わけの分からない理由で、自分で自分の背中を押した。

そんな不思議な御縁で、ミシン購入の決意までいざなわれたわけだが、その数日後、私は自宅の階段から落ちて、足関節脱臼骨折という災難に見舞われたのだった。

そしてその後、１ヶ月以上の入院を経て、先日やっと手芸屋さんで行われる、ミシンの相談会に参加することができた。

実際のミシンを触らせてもらい、やっぱり使い勝手の良さそうな、壊れにくい、職業用ミシンに決めた。

ミシンのフットコントローラーを痛めた右足でも踏むことができたことが嬉しかった。

ミシンが届いたら何を作ろうかな。
妄想が止まらない。