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「わたしの想い」Vol.1~認知症とともに生きる~ 地域包括支援センターときわぎ国領

調布市地域包括支援センターときわぎ国領では、住み慣れた地域で生活されている認知症の方や家族介護者同士で対談を行い、小冊子『わたしの想い』を作成し文章で発信しております。なかなか知ることのできない当事者の皆様の想いにぜひ触れてください。


わたしの想い Vol.1   ~認知症とともに生きる~(令和3年11月作成)

登場人物・・・野村さん/Aさん(当事者) 小嶋/佐藤(当センター職員) 


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「イントロダクション」

小嶋:よろしくお願いいたします。この場の趣旨を簡単に説明しますと、そもそもちょうど来週9月21日に世界アルツハイマーデーというのがありまして、世界的にアルツハイマーのことをもっと勉強しましょうとか、認知症の方を皆で支えていきましょうという、そういう日なんですね。それにならって調布市では9月を認知症サポート月間と位置付けて、例えば、認知症の方のために色々な支援をする方の講演会があったり、若年性認知症の方とか、若くても認知症になるかたもいるのでね、そういった講演会をしたり、認知症サポーター養成講座とか、我々も講師として開催していますが、調布市内でイベントが数多くある予定だったんです。ところが、このコロナの状況があって開催が難しくなったので、9月はそうしたイベントが軒並み中止となってしまったんです。我々もいくつか実施する予定だったんですが、流れてしまって。でも別の形で何かできないかと考えまして。

・・・認知症の診断を受けたとしても、地域の中で自分の家で頑張って暮らしていらっゃる方はたくさんいるんですよね。でも、なかなかそれが外からは見えづらい、周りの方からはわかりづらかったりする。色々な日々の苦労とか大変な部分とか、なかなか人にはわかってもらえなかったりそういう苦しさを抱えながらも、それでも自分の家で、ご自分でどうにかこうにか頑張っている方がいらっしゃいます。そうした方の生の声、想いとか、そういうのを文章として作って、皆様に発信をして、こういう方がいるんだなとか、自分や家族の認知症についてもっと考えなきゃダメだなとか、あ、なんか認知症って、発症したらすぐにもう自宅で暮らせなくなっちゃう、施設に入らなきゃなんないって思っていたけど、自宅で生活を頑張れるし、ある程度今の生活が続けられるんだなってことを知ってもらえる、そんな物が作れたらと思っております。

そして、今回こちらの野村さんにご協力いただきました。野村さんは、日々色んな活動をされていて、地域包括支援センターの広報協力員という当センターのPRやイベントのお手伝いをしてくださっている方なんです。野村さん自身も、以前認知症の診断をお受けになっているんですが、ご自分で認知症の関連団体にも顔を出して、いろんな活動にも精力的にされていらっしゃいます。今回はAさんと対談をお願いしています。
 
A:そうなんですね。
 
小嶋:野村さん、こちらのAさんはお一人暮らしをされていて、私も何年も関わりがあるんですが、認知症と診断をされたんですが、今も一人暮らしをしておられます。
 
A:大変なんですよ今。こういうふうになってね(みんなで集まっていること)、今日(調子)いいかなって思うとね、今夜はわからなくなってます。

野村:その大変さを言われると、あとちょっとの大変さみたいなことってね、とても聞きたいなって思います。どういった大変さが起こるのか教えてもらえますか?
 
A:覚えてないんですよ。昨日、何食べたのって聞かれても、分かんないんです。
 
野村:それは気にしないでもいいんじゃない?だって食べたのは覚えているんでしょう?
 
A:一応は。ちょこちょこ食べ過ぎてますけど、でも、何を食べたの?って聞かれたら、ねぇ。今朝のことを考えたくないっていうか、その、今より前のことは思い出すことも大変だし、そういえば、なんかお鍋に残っていたものを食べたんだなって。洗いものをしてきたから、それが記憶に残ってるくらいなんですよね。
 
野村:そうですよね、うん、あー、一緒。ただ、例えば一昨日に何食べたかって聞いてもわからないと思うんですよ。私達だけに、一昨日の食事を覚えてないの?なんとかかんとかって聞かれるけど、覚えている人の方が少ないじゃん。だから、なんか、私はそれで悩まない。
 
A:そうですね。

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「これまでの経緯と現在の生活」
 
小嶋:これを読まれる方にもわかってもらうために、Aさん、差し支えなければ、大体いつ頃から物忘れが気になりだして、で、病院で検査等をして、で、今に至るっていう、最初のきっかけとか、もし覚えていたら教えていただけますか?
 
A:そうですねー、だいぶ前になるんですけどね、慈恵医大の精神内科の先生に、息子と行って認知症の検査をしますって言われまして。係の方に検査されて、なんかこう、物を出されて、隠されて、さっき出た物の名前を言ってくださいとかやったんです。それで、二つぐらい言えたけど、あとは答えられなくて。そんなことが4〜5年前ぐらいにあって、それからなんとなくお薬が出るようになって。ただ通院が遠いと大変だなということで、こちらの方で精神内科のお薬、よくわからないけど、要するに認知症が進まないようにする薬ですよね。とりあえず、ずっと寝る前に飲んでいます。あとまぁ、安定剤とかも一緒に。まぁほんとにもう、しっかりしているように見えるかもしれないですが、まぁわからないです。全くわからない。
 
A:記憶が出てこない。ちょっと前のことでもですよね、聞かれても。そうですね。昨日食べたものはまず出てこない。なんとなく、こう、いただいたものはなんとなくおいしいなっていうのは記憶に残っている程度なんですよ。
 
小嶋:私とAさんは、4年位のお付き合いになりますかね。で、先ほどの流れの後、介護保険を申請して、要支援の認定を受けて、デイサービスに通っていた時期もありましたが、やめられて。先ほどの病院で検査してっていうのは、たしか2年ぐらい前だったと思うんです。そこからアリセプトという薬が、今でも出ていて。
 
A:覚えてないです。
 
小嶋:そして毎日薬は飲まれてらっしゃるんですよね。、それで、診断を受けて、大体2年ぐらいになるんですけど、ご自分がその時どんなふうに感じたか教えてもらえませんか?気持ち的に。
 
A:あー。そうですね、子どもと行ってね、あの、認知症だって言われて。言われてみると、ほんとにそうなんだなって感じでしたね。先生に言われて、もっとひどいのかなぁ。ほんとにね。思い出せないんですよ。人の名前がもちろん出てこないんですよね。ただ、体は動かせないとダメになってしまうので、こう、歩くんですよ。でも、じゃあ、昨日誰とどこに行ったのかって聞かれると、即出てこない。午前中は・・・午後は、息子がちょこっと来てくれたのは覚えているんですけど、午前中には具体的には・・・うーん出てこない。
 
野村:うーん。私も同じですよ。なんか、それで、あっと忘れてってると思うんだけど、一時間、二時間したら、そのこと考えてるわけじゃないけど、突然思い出したりはありません?
 
A:あります、あります。
 
野村:そうですよね、完璧に全然思い出せないんじゃなくて、時間もね、ちょっと、そこで追求されちゃうと、ちょっとねぇ。それはなんかもやもやしますね。それはそれで良いって感じで、自分の中で思ってて。不思議よね。
 
A:一番困るのは数字なんですよ。自宅で、カレンダーを使ってるんですが、結構大きな縦になっているものを使っていて、それを一つ一つ日が変わるごとに、目印をとめていくんですよ。で、今日終わったら次の日にって。そこにスケジュール書いておきますよね。そうしないと、今、何日って言われても、今日約束して来てますよね、今日何日だっけ、小嶋さん。
 
小嶋:今日はね、土曜日ですよね。

A:11日?
 
小嶋:18日ですね。
 
A:それくらいわかんないです。数字がわからないです。

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野村:私もこういうふうに会ってるけど、私はカレンダーにその日終わったら丸つけるようにしてる。
 
A:それでもそのとき、自分でスケジュール見て・・・今日は11時?
 
小嶋:今日の約束はね、14時ですね。
 
A:そう14時。・・・カレンダーに書いたスケジュールに従って、その日その日を生き抜いてる。私、しっかりしているように見えてもね、わかんないんですよね。みんなに、あの、嘘ついてるんじゃない?って言われるくらい、傍目に見てると、しっかりしてるらしいんですけどね。
 
野村:あの、あたしが最近感じているのは、えっと。例えば、認知症です、やっぱり認知症だよって言われた時からあたし、5、6年経ってるんですけど。
 
A:認知症なんですか?
 
野村:そうです。診断出されてるんです。
 
A:見えないですね。
 
野村:見えないでしょ。
 
佐藤:お互いにですね。
 
一同:笑
 
小嶋:Aさん、さっき数字が苦手とお話がありましたが、お金のやりとりとか、どうですか?例えば、支払いで困ったりとか。
 
A:あ、この間、銀行でおろす際、ATMで金額を間違えました。5000円なのか、5万円なのか覚えてないけど、50円おろしちゃったんですよ。50円出てきた際、となりに知り合いの方がいたので、おしゃべりしながらやってたんですけど。ゼロをいくつ押したのか、50円玉が出てきて。その時、これなんだろうって思ったんですが、深く考えると落ち込むから。あまり考えないようにして。未だかつて50円だけをおろした事無いんですよ。それで、最終的に窓口に行って、通帳とカード持って、窓口行ってね。ただ、その事を、あんまり考えたくもないし、おかしいとも思わないし、今後、どうしたらいいんですかねぇー。
 
野村:でも、その時すぐに、気づくことができるので、いいんじゃない?
 
A:いや、だって、50円しか出てこないんですよ。お金必要だから銀行に行ってるのに。言葉じゃ言えないです、恥ずかしくて。
 
野村:でも、あたしだったら、自分の中でね、うっかり間違いって、誰でも起こるからって。それが度々だったらあれだけど、そのまぁ、ね。一回や二回あっても、あるよねって。私だって若い時あったかもしれないって思っちゃう。そう、なんか自分ではね、前よりそういう間違いは起きてるって思うんですよ。でも、ニコッと笑って通過させちゃう。なんか、悩むと、なお私の中で何かが減ってく感じがしちゃうんですよ。起きたことは起きたんだけど、あ、そういうふうにやりやすい私がいるんだなって、もうねぇ、悩まない。だんだん、この6年くらいで、そういうふうに自分をしつけてますね。
 
A:もう歳だから、不思議なことも起こるんですよ。銀行に行って50円おろすなんてね。考えられないでしょ。雨が降る中に行ってね。
 
野村:で、そのまま帰っちゃったんですか?
 
A:また、ちゃんとおろしましたよ。
 
野村:だったら、やり直しできるから、いいやって、私の場合は思っちゃう。
 
A:まだ、暗証番号出てくるからいいんですよね。途中で変えたりすると、もう、あの、わかんないですよね。
 
小嶋:コロナのこういう状況ですが、Aさんはたくさん外出してるんですよね。

A:毎日出かけてます。家にいるとだめになります。歩くようにしてます。
 
野村:素晴らしい!
 
A:多摩川を歩くとか、国領に歩くとか、狛江まで歩くとか、あの、歩かなきゃだめ。それでもこんなひどくなっちゃって。
 
野村:あの、この共通点は、たぶん、外に出る、歩くってことが、二人の共通点かな。それは強調しておいて。
 
佐藤:わかりました。しっかり書きます。
 
野村:お話してると、どこが悪いのかなと思いますね。
 
A:私はぬけてるの。銀行に行って50円ですし。
 
野村:あたし、周りに認知症始まってるのよって言うと、やっぱり違うって言われるけど、あ、Aさん見てて、ほかの人から見た時のあたしがこれなんだってわかった。信じてもらえない。だって、あたしAさんじゃない、ごく普通だと思っている人の中に、怪しげな人もいるって思ってますけど、言わないと全然わかんないですよね。あ、こういう感じなんだって分かりましたね。
 
佐藤:お互いがどう周囲から見られてるか、分かりましたね。
 
A:どこがおかしいというか、おかしいけれどもなんて言ったらいいの?
 
佐藤:周囲から見てどういうところを、違和感として感じるのかみたいなことですかね?
 
A:そう。私がね、じゃあこうやってね、小嶋さんみたいなね、包括の方にお世話になってね、今ここにいるのかはね、おしゃべりしてる分にはわからないんだけども、じゃあ、今カレンダー見てね、今日の日にちも出てこないんですよね。そのぐらい、おしゃべりしてるのと、頭の中っていうのは、逆。それが子供にとっても、おばあちゃんどこまでごまかしてんの?って思う。あの、日にちとか人の名前とか、まずわかんない。
 
野村:人と何か話してて、変だと思われることがあったとしても、周囲から何も言われない。でも会話の中で、あ、それ、なんて言ったっけなって? 言って、言い方を変えてしゃべったりはする。えーと例えばね。あ、東京タワーって名前を忘れちゃったら、昭和30年くらいにできた高いタワーね、テレビの、とか言って。そうすると、私が言い換えた際、詰まって言っちゃうと周囲にも分かっちゃうけど、すらすらって言えてると、会話の中だからね、分からないと思う。私はそういう感じでやってる。今日電話をかけてきた人と話してて、昭和の頃はあの人、こういう人だったとかの話題が出たんだけど、(電話をかけてきた人は)全然人の名前覚えてなかったの。認知症じゃない72歳くらいの人なんだけどね。そういったことがあると、Aさんや私は自覚症状があってお医者さんにかかってるけど、市内にはお医者さんにかかっていない認知症の人はいっぱいいるんだろうなって、私は思ってるんですよ。それでまたね、お医者さんに来てる人を見てると、家族とか人がいっぱいついてきて、挙動不審で、あそこまでなっちゃってから来るよりは、Aさんや私みたいに自覚症状があるうちにさっと病院行って、変なとこはあるけど、そういう方がいいと思うのね。認知症だってわかってれば、普段の生活で計画的にカレンダーにあれするとか、自分で計画するとかできるものね。
 
A:そうですね。
 
野村:忘れるとこはあるんだけど、どうしたら失敗しないで済むかとか、そういった工夫ができるかできないかがとても大事なんじゃないかと思ってるんですよね。自分が認知症だって認めるのを怖がって、周囲に隠そうとして生きてくよりは、忘れるとこあるんだよねって言いながら、体操したり、外に出てくとか、閉じこもらないでいることが大切だと思う。
 
A:こういう、私みたいな人って、結構いるんですか?いないんですか?小嶋さん。自分以外はわかんないんですよね。
 
小嶋:います。いるんですけど、野村さんもAさんもお出かけしているとか、まぁこうやってべらべらおしゃべりできるっていうのはいいことで。逆にその、家に籠り気味になって、外に出かけても失敗ばかりするし、それでストレスもたまるし、もういいや外にはでない、人とも会わない、運動もしない。そうなると人間って誰でも、別に高齢者じゃなくても、おうちに籠りっきりになれば、体の筋力も落ちて、体力も落ちて、頭の感覚も鈍くなってって当たり前だと思うんですよね。で、特に今コロナ禍になって、自粛、自粛で家に籠っている方も多いじゃないですか。そうするとどうしても、今まで頑張ってきた生活が、自宅に籠ることでがくーんと認知的にも、能力が低下してしまう。そういった方々が増えている印象です、この一年間。あとはお二人とも一人暮らしなので、もちろん不安なこと、大変なこと、ご苦労はあると思うんですが、それでも毎日毎日ご飯食べて、買い物に行って、お掃除、お洗濯、お風呂入って、寝て、っていうのを毎日毎日自分で基本的には全部やらなきゃいけないので、この生活のリズムと、自分でやらなきゃいけないっていう意思は、ものすごく生活していく上で大事なんですよね、気を張って、気を遣って、大変だけど、なんとかやらなきゃっていう気持ちがあるから、生活が続けられるわけなんです。逆に、例えばすごい優しい息子さんや、すごい優しい娘さんと一緒に住んでて、もう全部ご飯は準備してくれて、もうお母さんは何にもしなくていいよ、ゆっくりしててねみたいな、掃除も洗濯も全部やるから、買い物も外出も今はコロナで危ないから出かけないでって。そしたら、傍から見ると家族から大事にされてて、優しい息子や優しい娘がいてあぁよかった、っていう感じがするんですけど、本人は何もしなくなって、それで認知症が一気に進んでるかもしれない。だから、あぁ、ご家族がいるから安心だとか、一概にそうも言えない部分もある。一人暮らしだからこそ、頑張って、認知症の進行を食い止め、キープできてるっていうのは、お二人の日々の頑張りがあってこそだと思うんですよ。怒られるというお話もありましたが、Aさんは市内に息子さんがいらっしゃいますけど、息子さんに怒られたり、そういうことは?
 
A:いや、息子は私の事、相手にしてないですよ、また同じこと聞いてると思ってるんじゃないかな。でも、心配してさらりと色々やってくれる。元気かっていうのと、おうちの中のこと見てさっとね。で、さらりと一服して、コーヒー飲んで、安心してもう帰る程度。あの、それでいいんですよ、私もそれでいいんです。息子は優しいですから。だけど、結構ちょくちょく来てくれて。昨日も来てくれてね、マクドナルドでね、昔食べたものを買ってきてくれてたんです。私はそんなことすっかり忘れていて、あーおいしいねーって、言ったら、おかん、昔よくこれ食べてたよって。最近、食べないんですよ、マック行かないから。そしたらもう、これ(今回の座談会の協力)終わったら、マックに行こうと思ってるんです。そんな感じでね、息子はよくやってくれてますけどね、すべて忘れてますよね。言いたいのは、なんかその、そのぐらいの距離感がいいですねということ。がっつり心配するわけでもなく、でもちょくちょく来てくれて。来なきゃ私電話入れるし。住んでる場所は近いといえば、近いけど、男の子だからね。だから、いてもいなくても同じようなもん。
 
小嶋:Aさんは今年80歳になられましたが・・・やはり80という数字は重いですか?
 
A:重いしね、今、旅行とかカラオケとか今全部ストップなんでね、頭ダメなんだけど、お友達を残してるんで、本当はいろいろしたいんですよ。うち、娘がいないのね。だから、せめて趣味に生きないことには、生き延びられないのね、自分自身が。今、全てストップだから、頭ん中も全部だめになっちゃう。
 
野村:でも、そんな感じしないです。
 
A:いやー、きついですね。
 
野村:うん。えっと、Aさんそうやって元気なんだけど、認知症の診断なんか全然受けてないような人でも、(コロナの状況が始まって)ほんと一年半経つでしょ?今年の初めくらいから、結構みんな鬱とか、なんかいろんなことになってる人、これから増えてくんじゃない?今の状況が大問題で、どんどん出てくるんじゃない?コロナの影響で。
 
A:なんか、外へ、どんどん出ていった方がいいのよね、足が動くうちは。歩けなくなってからでいいんですよ、家にいるのは。今日はどの方角へ行こうかなって朝決めるんですよ。東西南北でね。今日は町田方面、たまには行ってみようかなとかね、この間は、デパートで北海道展やってるっていうからね、京王デパートに、何も買わないですけど行ったんです。歩かないとだめだから。国領まで歩いて、吉祥寺出るか、府中に出るか、調布にいくか。どっかしらか出てます。

わたおも2

 
野村:えらい!
 
A:そうしないと、一人暮らしでジっと家にいてTV見て、冷蔵庫あけてる、ろくな事ないですよ。

小嶋:この間、どっかラーメン行ってきたって。どこでしたっけ?登戸?
 
A:小田急線のね、下り、登戸の隣、百合丘。あそこまで、二駅くらい歩いて。で、またこう、下りて、狛江に出てきて、今度狛江から疲れたから、バスに乗って帰ってきたんですよ。一万歩歩かなきゃいけないと思って、今、ちょっと歩かないけど。そうやっていかなきゃね、人生やってけないのよ。
 
小嶋:皆さんに聞かせたいですね。
 
A:それでいて頭はね、ダメなのよ。頭はダメ。小嶋さんはよくご存じ。カレンダー、今日がいつか今も分からないですよ、何日かも。今日カレンダー見て出てきてるんだけど。
 
野村:忘れて良いんですよ。私もさっき言ったように、あの、その時なんか見て分かればよくて、いつまでも今日がいつかを覚えておく必要ないと思って、もう居直ってる。
 
A:おうちのカレンダー、しっかり予定がね、書いてあって。今日もちゃんとね、何回も確認して出てきたんですよ。

小嶋:ありがとうございます。
 
A:間違えたらいけないと思って。
 
 
「わたしの想い」
 
小嶋:なにかお二人、Aさんもね、なかなか大変なこともあるんですが、こういうのがあったらいいのにとか、こういうサービスとかあったらいいのにとか、我々も市から委託を受けた地域包括支援センターなので、そういう要望があればお聞かせください。
 
A:こちらの方は、そういうところからいらしてる方?
 
佐藤:ここの職員の佐藤と言います。
 
A:あ、そうなんですか、よろしくお願い致します。
 
佐藤:よろしくお願いします。
 
小嶋:なんか要望とかね、こういうのあればもっといいのにとか、何かありますかね?もっと生活が楽になるのに、頑張れるのにみたいな。
 
A:もうそろそろどこかに入りたいなって気持ちがだんだん、だんだん出てきてるんですよね。今が一番チャンスかなって思ってる。全くダメになると、あの、最終的にそういうとこに入れられちゃうでしょ?ほんとに自由がない寝たきりで過ごすみたいな所、ホームにね。だったら今、一歩手前で入りたいと思ってるんです。でもお金がないから、その大手のなんとかっていうのには入れないんですよ、かといって生活保護でもないし、年金で細々、こう、毎日やってるもんだから、そういうことをねー、考えてます。寂しすぎて毎日が、(独居生活は)もう、いいです。この年になると。そういう施設に入って、ちょっとこう、みんなとね、お話したり、自分の趣味をその中で活かしたりね、そーゆーの、真剣にここのとこ、考えるようになって。これから小嶋さんに、ほんとに、皆さんにお世話になります。
 
小嶋:いえいえ。
 
A:真剣なのそれ、ほんとに。もう嫌になったのね。近所付き合い自体も嫌になって。いくら家族がいてもね、所詮一人ですのでね。なにかと動けるうちに、落ち着きたい。ただ、条件があるので、なかなか難しいですね。
 
小嶋:そうですね。


A:真剣に今、考えてる。もう、嫌になりました。
 
佐藤:施設もね、考え始めますもんね。やっぱり一人暮らし長いと。しばらくはまだ、予算の兼ね合いとかもあるだろうから、すぐに動くことはできないとこはあるとは思うんですけど、その予算がいいとこが見つかるまで、今の生活が継続していくわけなんですが、その時に、こういうのがあれば、 もうちょっと生活が楽になるなとか、こういうことしてくれたら自分は一人暮らし続けていくのも大丈夫かななんて、ナイスアイディアがあれば、もしよかったら教えていただけたらと思うんですが、なにかありませんか?こういうことしてくれる人がいたらとか、こういうものを買うことが出来たらとか。僕たちもとても知りたいんですよね。
 
A:生活の面で?
 
佐藤:もちろんそれでも構いません。外に出ることでも構わないですし、今みたいな生活をずっと継続していくために、その施設に入るまでの間、楽しく生活を続けていくために、こういう風なことをしてくれたら、自分は、今の状態をキープできるなっていうアイディアがあれば。
 
A:家庭訪問をしていただいて助かってるんですけど、それとこの(地域包括支援センターの)事務所の中間がないですよね。その、私たちと似たような状況の中の人たちを何か、グループみたいにして、たまにはこう、多摩川でもいいし、なんでもいいですよね、ちょっとこう、見に行くとかね。深大寺も近いし、調布だからね、なんかそういうような活動をする。こういう、無理な話なんですけども。
 
佐藤:僕たちと、Aさんのちょうど中間にいるような?
 
A:そうですそうです。
 
佐藤:それは、困ったときの手伝いだったり、お外に一緒に出掛けたり、ちょうど、包括の職員と、Aさんの中間の立ち位置で、Aさんを理解してくれるような存在が住民の中にあると、もうちょっと安心しながら生活できるかなって感じなんですかね?
 
A:はい。
 
佐藤:勉強になりました。ありがとうございました。
 
A:それは日々、考えて、願っていることですけど、無理なんでしょうかね。
 
野村:コロナだから、こうやって人が集まるのは難しいとは思ってるんですけど、例えば、今日、Aさんとあたしがいて、おんなじような感じで何人かが集まって、ちょっと公園にね、佐藤さんが付いて行って、みんなでお弁当持って行って、一時間とか二時間とか外出する。
 
A:月に一回でもいいですよね。
 
野村:そう、月に一回でもいいんですよね。そういうの、あったら、たぶんね、Aさんのおっしゃっていることで、二人とか、三人とか、四人ぐらいの、こう、おんなじような人が、例えば、ときわぎさんが分かってたら、声をかけて集めて、ちょっとね、バラがきれいだったら見に行こうとか、ラーメン食べに行こうとか。月一回でもいいからね。
 
A:そういう横のつながりっていうのは分からないですから、そちらさんから、このおばあちゃんとこのおばあちゃんと、ちょっと気が合いそうだなって。話す度合いとかもね、そんなことをね、うまくそうやってくださったら、ほんとに楽しくなると思うんですよね。無理なんですよね?
 
小嶋:アイディアはすごく良いので、なんらかの形にはできるような気はするんです。かつてAさんもそうであったように、我々ね、例えば認知症の方、介護保険の認定を受けて、いろんなサービスをね、大体やっぱりデイサービスとか提案するんですけど、デイサービスって、自分よりも認知症が重い方も結構いるし、その場の雰囲気とか、自分のやりたいことがあるかとか、職員の雰囲気とか、それによって利用してみてもなんか違うって辞めちゃう方、デイサービスを転々と変えられる方、いるんですよね。そういう介護保険のサービスはそぐわないけど、同じような想い、同じような境遇の方がちょっと集まって、ちょっとお話したり、みんなでお弁当食べたり、そういうのは確かに、なんか、すごくいいなと思うんですよね。「青空なんちゃら」みたいなね。できればやっぱり外がいいのでお花見でもいいし、多摩川とかもありますからね。
 
A:深大寺も多摩川も近いですしね。
 

小嶋:今日の場もそうなんですけど、我々はお仕事柄ね、固くなっちゃうんです。例えば、認知症当事者の会っていうのを設定して、皆さんご苦労を分かち合いましょうの会を、例えば染地地域福祉センターで設けます。まぁそれはそれで別にいいんですけど、ちょっとそれだとハードルが高かったり、固い「お話の場」っていう、イメージがあったりするので、なんかAさんからの「お外でみんなで、たわいのもなく」っていう雰囲気が、すごくいいですね。
 
野村:Aさんが提案したのは、何年か先になるかもしれないけど、絶対やってほしいよね。それが介護保険の中に入っててもいいんだと思うんですよ。ただ、役所はね、縛りを付けたいと思うんだけど。でも、私たちの気持ちは包括の人から伝えてもらって。うん。こう、支援する人もやってやるぞっていうんじゃなくて、将来未来の私たちも一緒で、こうなるんだから、将来自分たちの姿を想像しながら関わって欲しい。
 
佐藤:一緒に楽しんでくれるような人がその場でいるだけっていう感覚の方がいいですよね。なんか手伝ってあげようとか思って、参加するスタッフじゃなくて、一緒にお弁当食べたいから一緒にいるんだっていう人が、一人でもいてくれると、良いグループになりそうですよね。
 
野村:あーいいですね。とってもいいです。とりあえず、お二人が元気なうちに。
 
A:明日の事もわかんないけど。笑
 
野村:元気なうちに。外でやるのがいいなと思うんですよね。
 
A:ここは深大寺も多摩川とかも近いですのでね。外に出たいですね。

佐藤:そうですね。さて、お時間も押してきてまして、そろそろ締めせていただきますが、今後、今日のお話を纏めた冊子をお配りしていくことになっています。例えば、実際に認知症のご家族様がいらっしゃる方や、もちろん皆さんみたいに、認知症になってもお元気に過ごされてらっしゃる方。色々困りごとはありますけど、外に出て、という方もいれば、おうちの中に引きこもっていらっしゃる方もいると思います。最後になりますが、よろしければエールみたいなものをお送りいただければと思います。
 
野村:あたしは、籠ってないで、引き籠ってないで、前へ前へと、外へどんどん出ていこうよっていうことを伝えたいです。どう言えば良いか難しいですけど。その、なんか、認知症は怖い事じゃなくて、だれでも起きる事だから、怖がってないで、今の自分を大事にして、一歩ずつ前へ出たらって思いますね。伝わるかな?
 
佐藤:伝わっていると思います。Aさんはいかがですか?
 
A:同じような感じですかね。孤独との闘いでいかに生き抜いていくか、日々そればっかりで、これをしてほしいっていうよりも、今の状況をどうやって切り抜けて生きていくか。頭の中はそれしかないのが今の気持ち。もうそろそろ世の中、明るくなるんでしょうけどね、コロナが流行してあまりにも辛い二年間でした。いっそ施設に入って、みんなの中でレクリエーションしながら、わいわい過ごす一日の方が、孤独に耐えているよりいいのかなって日々迷っている。今でも考えている。
 
佐藤:みんなで一緒に居たほうが気楽だよってお気持ちが強いんですね。
 
A:そうですね。でも今、こうしていることも幸せですね。対話できてるでしょ。これって、使っているんですよね、頭も。ここまで来るのに足も使ってきてますでしょ?それによって暑がるってこともしてますしね。ありがとうございます。またこういう会をしていただきたいですね。
 
佐藤:そうですね。
 
A:またできたらね。今日はありがとうございました。
 
佐藤:こちらこそありがとうございました。
 
一同:ありがとうございました。

わたおも3

あとがき
 
この度は『わたしの想い』をお読みいただきありがとうございました。お二人の想いが少しでも皆様の励みや元気に繋がればと思います。
末筆ではございますが、『わたしの想い』の作成にご協力くださいましたお二人には心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
 
 
令和3年11月吉日

〇発行 調布市地域包括支援センターときわぎ国領

〒182-0022 東京都調布市国領町7-32-2-101 

TEL:050-5540-0860 MAIL:houkatsu@tokiwagi.org

〇禁無断転載

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