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プログレは自家栽培こだわりの野菜のようなもの(プログレッシヴ・エッセイ 第27回)

前回、金属恵比須は曲づくりにおいて「マーケティングをしないことが一番のマーケティング」と吹聴してしまったが、少し不安になった。「マーチャンダイジング(商品化計画)」は必要ないとしたが、本当にそうだろうか。

そもそもマーケティングとは何なのか。ピーター・ドラッカーはこう表現する。

「顧客というものをよく知って理解し、製品(ないしサービス)が“顧客”に“ピッタリと合って”ひとりでに“売れてしまう”ようにすること」

『今日から即使えるマーケティング戦略50』中野明著・朝日新聞社

元・山崎製パンの夏八木康之氏が要約するとこうなる。

マーケット(市場)を起点とした考えで、その市場に存在する二大主役である①顧客(お客様)のニーズ(欲求)をつかみ満足度を高め②競合(競争)相手に対しては差別化をはかることで、売れる仕組みをつくること

『できるビジネスマンのための経営知識』夏八木康之著・文芸社

リスナーの聞きたいツボを知る調査をして(=マーケティングリサーチ=市場調査)、それに添った音楽を作り上げること(=マーチャンダイジング)がマーケティングとなる。

しかし、金属恵比須は少なくともこういったことを一切行なっていない。なぜか。答えは簡単。プログレバンドのメンバーもまた「顧客(お客様)」だからである。顧客のニーズを知り尽くしている。長い組曲、複雑な構成、変拍子、難解なコンセプト、ヴィンテージ・シンセサイザーにメロトロンの音色。「こんな曲があったら絶対聞く!」というツボを知っているし、実際にそういったものを曲づくりの際に詰め込む。

ということは、マーケティングリサーチもマーチャンダイジングも誰にも頼まれず自主的に行なっているのではないか。マーケティングを行なっていないわけではないのではないか。

この状態を例えるならこうなるのだろうか。自分の好みのものをつくって自分で満足するタイプ。例えるなら、こだわりにこだわった家庭菜園で自家栽培したこだわりの野菜を、近所にお裾分けしているような感覚。

そう考えると、やはりマーケティングはしていないかもしれない。


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