プログレは自家栽培こだわりの野菜のようなもの(プログレッシヴ・エッセイ 第27回)
前回、金属恵比須は曲づくりにおいて「マーケティングをしないことが一番のマーケティング」と吹聴してしまったが、少し不安になった。「マーチャンダイジング(商品化計画)」は必要ないとしたが、本当にそうだろうか。
そもそもマーケティングとは何なのか。ピーター・ドラッカーはこう表現する。
元・山崎製パンの夏八木康之氏が要約するとこうなる。
リスナーの聞きたいツボを知る調査をして(=マーケティングリサーチ=市場調査)、それに添った音楽を作り上げること(=マーチャンダイジング)がマーケティングとなる。
しかし、金属恵比須は少なくともこういったことを一切行なっていない。なぜか。答えは簡単。プログレバンドのメンバーもまた「顧客(お客様)」だからである。顧客のニーズを知り尽くしている。長い組曲、複雑な構成、変拍子、難解なコンセプト、ヴィンテージ・シンセサイザーにメロトロンの音色。「こんな曲があったら絶対聞く!」というツボを知っているし、実際にそういったものを曲づくりの際に詰め込む。
ということは、マーケティングリサーチもマーチャンダイジングも誰にも頼まれず自主的に行なっているのではないか。マーケティングを行なっていないわけではないのではないか。
この状態を例えるならこうなるのだろうか。自分の好みのものをつくって自分で満足するタイプ。例えるなら、こだわりにこだわった家庭菜園で自家栽培したこだわりの野菜を、近所にお裾分けしているような感覚。
そう考えると、やはりマーケティングはしていないかもしれない。
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