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『フラグを立てるな!〜これで貴方も生き残れる?鬱ギャルゲー完全攻略法〜』

◾️キャッチコピー

魂に刻みたい・・・そう思える人と会った事はありますか?『愛し合い』じゃない『殺し合い』ラブコメ!

◾️あらすじ

一部のマニアに絶大な人気を誇る
200を超えるマルチエンド恋愛シュミレーションゲーム『さよなら My Tomorrow 』

しかし、このゲームは隠しエンドである2つを除いて、ヒロインとフラグを立てた時点で死亡が確定するギャルゲーの皮を被った鬱ゲーだった。

そんなゲームなど全く知らない『鷹宮 廉』は主人公として、自称鬱ゲーのスペシャリストの『カルト』はモブとして憑依してしまい、2人は死を回避する為に奮闘する。

そんな中、フラグを立てさせない為にモブの少女と付き合う作戦に出るが、1ヶ月後に少女はヒロインの内の誰かに殺させてしまう。

2人は悲しみの中でヒロイン達に復讐を誓う────

◾️第1話のストーリー

「────えー、次の奴は・・・『隠崎 晴夢』、前に」

先生がそう言って、『聞いた事の無い』名前を口にする。

前の席の奴の自己紹介が終わり、次は俺の番だというのに全く別の名が呼ばれた。

違う、俺の名前は隠崎晴夢なんて名前じゃない、俺の名前は『鷹宮 廉』だ。

「はい!・・・えーと、俺の名前は隠崎晴夢です。え〜、趣味は────」

しかし、俺の意思とは裏腹に身体と口が勝手に動き、俺自身について、脳の何処にも収納されていないような内容が口から留めなく流れ出る。

これは不味いかもしれない・・・いや、『かもしれない』じゃない、想像以上にヤバい事が身に起きている

俺は・・・隠崎晴夢という男に憑依してしまった!

鷹宮はその事実に気付き、放課後の親睦会にも参加せずに謎の人物・隠崎晴夢について調べてあげるが、何の成果も無く、次の日の登校時間になってしまう。

全てが謎である世界の学校など行きたくないが、身体が勝手に学校へと足を進める。

しかし、そこで『共崎 隼人』という男に出会う。

「幾つか質問します・・・君は隠崎じゃないですね?」

「・・・どうして分かった?」

「落ち着いて下さい、僕の質問はまだあります。君は『さよなら My Tomorrow 』をプレイした事がありますか?」

そして、話を聞けば共崎も憑依しており、名前は『カルト』と言うらしい。

「この世界は『さよなら My Tomorrow 』の世界です。そして、君はそのゲームの主人公に憑依してるって訳です」

「え?マジ!?」

ギャルゲーの世界の主人公に憑依した事実に心躍る鷹宮だったが・・・

「おおっと、嬉しそうにしている所悪いですが、このゲーム唯のギャルゲーじゃないですよ」

カルトが言うにはこのゲームは2つのルートを除き、全てのルートで主人公がヒロイン達に殺されるというギャルゲーの皮を被った鬱ゲーである事を聞かされる。

「・・・死を回避する方法はあるのか?」

「僕はこのゲームの細部の設定まで頭に叩き込んでいます。死を回避するなんて造作も無い・・・君も手伝ってくれたらの話ですが」

「手伝うに決まってるだろ、死ぬなんて嫌だからな」

「それは良かった、じゃあまず手始めに・・・」

カルトはそう言って厚さ5cmはあるレポート用紙を取り出した。

「これは?」

「ヒロイン達全ての情報です、僕が昨日徹夜で作った。生き残る為にこの全てを頭に叩き込んで貰うよ」

「えぇ・・・」

◾️第2話以降のストーリー

「────廉、あれから1日経ったけど、全て頭に叩き込んだかな?」

「いや、無理だって!これを全て覚えるなんて!」

「覚えなきゃ殺されますよ?」

鷹宮はカルトに渡された攻略対象であるヒロイン達の情報が書かれた厚さ5cmを超えるレポート用紙と格闘していた。

このレポート用紙には各ヒロイン達の趣味や性格は勿論の事、癖、家族構成、出現場所、徘徊ルートなど通常では絶対に分からないであろう情報まで事細かく書かれていた。

これが攻略対象の数15人分あるという訳だ、覚えるのに相当な時間が必要である事は明らかであり、尚且つギャルゲーのようなゲームに手をつけた事の無い鷹宮にとっては地獄そのものであった。

「(う〜ん、これでは全て覚えるまでに相当な時間が掛かりそうだな。こちらが戦略を整えている内にフラグでも立てられたら即、死ぬ訳と考えると悠長にしている時間も無い・・・)」

カルトはそう考えて、ある決断をする。

「廉、ここは多少のリスクを鑑みてもこちらから攻撃すべきだ。よって、君にはそれを覚えるのと並行してある事をやって貰いたい」

「うん?ある事って何だ?」

フッ、と不敵な笑み浮かべながらカルトは答える。

「女の子付き合う事さ」

「・・・はぁぁぁぁ!?お前っ!付き合ったら俺死ぬじゃねーか!?」

「落ち着いて下さい、別に攻略対象の彼女達と付き合えなんて僕は言ってません」

「んなら、何が言いたいんだ?」

「攻略対象に選ばれてない、ゲームでも焦点を当てられていない者・・・所謂モブの子と付き合うって事ですよ」

カルトの作戦はこうである・・・

攻略対象と付き合えば問答無用で主人公である隠崎こと鷹宮は死が決定する、それから逃れられる術は無い。

それに加えて彼女達は鷹宮と会えば意識してか、無意識かは関係無く、フラグを立てさせる行為をばら撒いてくる。

それ全てを避けて、フラグを立たないようにするなど、到底無理な話であるのだ。

そこで考えた作戦が『既に鷹宮には彼女がいる』という事・・・つまり、フラグをへし折るのではなく、フラグ自体を立たせない作戦だ。

「でも、彼女となる人物は誰でも良いわけではない」

カルトは続けて、彼女となる上での必要条件を以下にまとめた・・・

 ① 攻略対象(ヒロイン)は論外
 当たり前の条件
 → 速攻殺される

 ② 攻略対象(ヒロイン)の友達や知り合いも論外
 ヒロイン達と接触する可能性が高い
 → 何かの拍子でフラグが立ちかねない

 ③ 有名過ぎる者も論外
 有名過ぎる者と付き合えば鷹宮自身も有名になる。
 → フラグが立ちかねない

 ④ 見た目が可愛い過ぎる、美人過ぎる者も論外
 ③と同じく付き合う鷹宮自身が有名になる。
 → フラグが立ちかねない

 ⑤ かと言って、見た目が残念な者も論外
 『あの子でいけるなら私でも』という思考になる。
 → フラグが立ちかねない

「・・・そんな奴いるか?」

「まぁ、いなかったらいなかったで、君が殺される確率が上がるだけですよ?」

「クソッ!探すよ!探せば良いんだろ!」

こうして鷹宮は己の命を守る為、彼女を探す日々に明け暮れる・・・

そして、1週間後・・・鷹宮から彼女となれる人物を見つけたと連絡を受けたカルト。

「(自分で言っておいて、そんな女いるか?と考えてたんだが、廉の奴見つけたんだな。はてさて、鬼が出るか蛇が出るか・・・)」

カルトは不審がりながらも鷹宮の彼女となる女子と会う事となる、そして連れてこられた少女は・・・

「は、ははは、はい・・・すすす、『鈴木 唯』です・・・、よよよよろしく・・・お願い・・・します・・・!」

とんでもないコミュ障陰キャだった・・・

どれくらいコミュ障かというと、鷹宮が間に挟まらない限り会話が成り立たないレベルだ。

しかし、話を聞くに以前述べた条件を全て満たしている。

①は当たり前として、②は友達がいないからクリアという、③は言わずもがなだ。

④の可愛い、美人過ぎるかと言えばそうでもなく、じゃあ⑤の残念なのかと聞けばそうでもない・・・逆に磨けば④になりかねないぐらいだ。

しかし、『磨けば』であるので磨かなければ普通の(少し血の気が悪いが・・・)容姿だ。

「(よくもまぁ、あんな条件に合う女子を見つけてくるとは・・・しかし、どうやって廉は彼女を説き伏せたんだ?)」

疑問が残るカルトは後でどんな出会いだったか聞くも、たまたま空き教室に1人で弁当を食べてた所を見つけたという・・・

「(まぁ、何はともあれこれでヒロイン達も近づいてこれまい・・・もう半分攻略したと言っても過言じゃない。後は卒業するまでの3年間、息を潜めながら過ごせば良いだけ・・・ゲームの時みたいに理不尽な世界だと考えてたけど、そうじゃなかったな)」

この読みの『後半』は概ね正しい・・・しかし、カルトはヒロイン達の『恐ろしさ』を完全に見誤っていた・・・それに気付く事になるのが1ヶ月後である。

そして、その問題の1ヶ月後・・・悲劇が起こった。

この日、いつものように鷹宮は鈴木、カルトと共に登校し、いつものように鈴木は付かず離れず鷹宮の後ろでくっついていた。

放課後・・・鈴木は鷹宮から離れ、突然「今日は用事があるので、晴夢と隼人さんは先に帰って下さい。では、また明日」と言い、何処かに向かった。

鷹宮とカルトは不審に思いながらも、それについて言及する事なく、鈴木と別れた・・・しかし、これが鈴木との会話が最期になる事なんて2人は知る由も無かった。

次の日の朝・・・

いつもなら鷹宮の家の前に真っ先に来ている鈴木の姿が無い・・・メールや電話をするも音沙汰無し。

何か事件に巻き込まれたのかと思い、探しに行こうとするも、身体は許す事なく、学校へと歩を進める。

そして、学校で知らされたのであった・・・

鈴木が自殺したという事を────

「鈴木さんが自殺なんてする訳が無い!現に『また明日』って鈴木さんはあの時言った!」

鷹宮は言い放つ・・・しかし、他の人間は誰も耳を傾けようとはしない、ただのコミュ障女が死のうが皆んな眼中にないのだ。

その後、鈴木が死んだ場所を聞かされたが、それを聞いたカルトはある事に気が付く。

「鈴木さんはヒロイン達の誰かに殺されたんだ!」

鈴木が死んだ場所はゲーム内でよくヒロインに主人公が殺されていた場所であったのだ。

しかし、この事実が2人を苦しめる。

「俺のせいで死んだ・・・俺が鈴木さんと付き合うから・・・俺が巻き込んだから・・・死んだ・・・俺が殺したのと同じだ」

「廉・・・」

「でも・・・でも・・・此処で逃げちゃ駄目だ」

鷹宮は話を続ける・・・拳は硬く握られ、血が滲ませていた。

「1ヶ月だけだ、彼女と過ごした時間は・・・だが、俺の心の中から消えることは決してない・・・不器用ながらも見せる笑みも、俺やカルトに無茶振りされて困った顔も、最期に『また明日』と言った時の顔も・・・俺の魂に刻まれている」

鷹宮の瞳から涙が溢れ出す・・・それに誘われ涙するカルト。

「『誰が殺したのか分からない?』なら、1人ずつ殺せばいい、どうせアイツらは俺を殺しに来るからな」

「・・・それでいいのか?」

「こんな事言ったら、『私みたいな芋虫なんかの為にそんな事しないで下さい』って、鈴木さんに怒鳴られるかもしれない・・・だが、俺はもう逃げたくない!だから手を貸してくれ、カルト!」

「・・・あぁ、一緒に戦おう」

鷹宮とカルトの反撃が開始する────


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