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アマルナート巡礼の旅 自分の記憶を残しておきたくて

ヒマラヤの山中に、ヒンズー教の神聖な場所のひとつであるアマルナートという洞窟がある。
標高 3,888 メートルにあるこの洞窟は、ヒンドゥー教徒ならば一生に一度は巡礼をしたいと願う聖地でもある。

祈りの姿は美しいと思う。
人間は大自然の中であまりにもちっぽけで、かつ俗でもある。
私はそんな祈りの姿に心打たれ、なぜか涙が溢れてしまうのだった。

今から何十年も前のこと、私はヒマラヤに向かっていた。
若かったからこそ出来たのだと思う。
メンバーは男性リーダーをはじめ女性5人。
予定は12日間ほどだったと思う。
私が最年少で、何たってその頃は怖いもの知らずだった。
インターネットなど無い時代だったから、情報はほとんどないに等しく無知であったとも言える。

もちろん私に登山の経験などない。
登山靴さえ持っていなく、普通の運動靴に上下スエットのジャケット姿、普通のリュックを背負っただけだった。
今なら登山の便利グッズなどたくさんあるのだろう。
たぶんその頃もあったのだろうが、そもそも知らないとはそんなことなのだ。
どうやら現地は雨のようなので、傘とテントの下に敷くプチプチを用意するようにと言われ、リュックに詰め込んだ。

ヒマラヤ登山といっても巡礼の旅だ。
険しい山を登るのではなく、どこまでもどこまでもゆるやかな坂が続く。
その道をたくさんのヒンドゥー教徒が、ゾロゾロと聖地を目指して行くのだ。
女性はサリー姿。
高齢のおじいさんがおばあさんの手を引いて歩く。
足の悪い人が地面に手をついて歩く。
ほとんどの人の足元はサンダルだ。
時々荷物や人を乗せた馬が、ホーシ ホーシと掛け声をかけ追い越して行く。
信仰とは何だろう?と思いながら私も歩く。
そこにはたくさんの人々の感動の姿があった。

一番最初に高山病の症状が出たのは私だった。
するとそばにいたインド人が心配そうに、正露丸の親玉みたいな薬を差し出してくれた。
だんだん頭が痛くなり吐き気で食事も取れなくなったものの、一晩休むと体がやがて高地に順応していく。
インドの薬のおかげか?

何日目かに大雨が突然降り出した。
今までゆったりと流れていた眼下の川が、いきなり濁流となり勢いを増して流れて行く。
その光景に、私は怖くなり思わずその場所にしゃがみ込んでしまった。
皆は先へどんどん進んで行く。
もしこの道が途中で二股に別れていたらどうしよう。
そんな不安と共に、このまま止まっていては進まない。
とにかく歩かなければ進まなければと思い歩き出した。
まさに人生と同じだ。
歩きながら野ヤギに当たり散らし、私は泣きながら歩き続けた。
そしてやっと休憩をしている皆に追いついたものの、すぐさま出発となり山とはなんと過酷で残酷なのかと思ったのだった。

景色は次第に緑の木々がなくなり、草花も少なくなりやがて周りは所々に氷河が広がる。
もはや人間が生きる場所ではないと感じるも、道だけが行けども行けども続くのだった。
その時、山の谷間にエメラルドグリーンの湖が現れた。
フィルム写真はもう色あせてしまったけれど、それはこの世とは思えないほど美しかった。
今でもあの風景は私の心の中で、一生忘れられない色となっている。

その後も皆に遅れをとる私だった。
到着すると、すでにテントが張られインスタント食品の夕食が出来上がっていた。
せめても食後の洗い物をしなければと、ひとり川で食器を洗うもその時の水がなんて冷たかったことか。
その時、川辺で見上げた星があまりにも綺麗で、空にはこんなに多くの輝く星があったのかとひとり感動したのだった。

数日後、多くの巡礼者と伴にようやくアマルナートの洞窟に到着した。
洞窟にはシバ神の象徴であるリンガム(男根像)の氷柱が祀られている。
私たち異教徒にどれだけ御利益があるのかはわからないが、祈る姿や気持ちは同じだったと思う。

その後更に山の頂上を目指し4500メートルまで登ることが出来た。
それも運動靴でだ。
その時の写真が、最高の笑顔となって今も残っている。

下山は早かった。
山のふもとでは巡礼が終わった人々にマンゴジュースが配られていた。
あの時、緑の木々や草花を眺めながら飲んだマンゴジュースが、なんて美味しかったことか。

その後私が山登りにはまることはなかった。

しかし何事もやろうと思えばできるのだと。
どんなに苦しくても周りに遅れを取ろうとも、1歩1歩前に進まなければならないということ。
山登りは私にそんなことを教えてくれたのだと思う。
この経験は、その後の私の生き方に大きな影響をもたらしたことだけは確かだった。

今となってはまるで遠い日の夢のようです。
でもこの経験は決して夢ではなかったのだと。
これからも自分の記憶を書き残しておこうと思った今日のnoteです。
少し長めのnoteを最後まで読んでいただきありがとうございます。



お茶にしましょう
マンゴたっぷりデニッシュ
冷やして食べると美味しいのです
これからもおやつの存在を残しておきたくて🩷

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