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マイナス金利解除

なんといっても今日はマイナス金利解除の話題で持ちきりだ。17年ぶりの利上げだからだ。しかし実態がよくわかっていないので関連ニュースを取り上げて、外観だけでもまずは理解したいと思う。

要約文

日本銀行は、2024年3月19日に金融政策決定会合で、マイナス金利政策を解除し、政策金利をマイナス0.1%から0〜0.1%に引き上げることを決定した。これに伴い、長期金利を低く抑えるための長短金利操作やリスク資産の買い入れを終了することも決めました。植田和男総裁は、2%の物価安定目標が持続的に達成可能と判断し、大規模な緩和政策がその役割を果たしたと述べました。また、賃金上昇と物価上昇の好循環が確認できるとして、17年ぶりに利上げに踏み切った理由を説明しました。今後は、日銀のバランスシートの縮小も視野に入れつつ、短期金利を操作する普通の金融調整に移行していく方針です。新たな政策方針についての名前は特に考えておらず、利上げのペースについては急激な上昇を避けると見ています。また、24年の春季労使交渉での賃上げ率が5.28%と33年ぶりに5%を超えたことも新政策決定の重要な背景となりました。

政策金利とは?

政策金利とは、中央銀行が金融機関に対して適用する金利のことで、経済全体の金融環境に影響を与える重要なツールです。この金利を通じて、中央銀行は経済成長を促進したり、インフレーションを抑制したりする目的で、市場における資金の供給量を調節します。政策金利が低い場合、借り入れコストが下がり、企業や個人の投資や消費が促進され、経済成長を支援します。一方、政策金利を引き上げると、借り入れコストが増加し、過剰な消費や投資を抑え、インフレーションの抑制を目指します。

普通預金の金利を0.001%→0.02%に

日本銀行のマイナス金利政策の解除を受けて、三菱UFJ銀行と三井住友銀行は、普通預金の金利を現在の0.001%から0.02%に20倍引き上げると発表しました。この金利上げは、17年ぶりのことで、みずほフィナンシャルグループとりそなホールディングスも同様の措置をとる予定です。さらに、三菱UFJ銀行は定期預金の金利も引き上げると発表しました。この金利上昇は、マイナス金利政策が始まった2016年以来、預金金利が下がったことに対する反動として、預金者にとっては恩恵となります。また、長短金利操作の撤廃に伴う長期金利の上昇が、定期預金金利の上昇を促し、住宅ローンの金利にも影響を及ぼす可能性があります。ネット銀行の中には、大手銀行よりも早く金利を引き上げる動きを見せるところもある一方で、消費者の間では固定型の住宅ローンを選択する傾向が増えています。

長短金利操作(YCC)とは?

長短金利操作(YCC: Yield Curve Control)とは、中央銀行が短期の金利と長期の金利の両方をコントロールする政策のことです。この政策によって、中央銀行は経済全体における借入れのコストを管理し、経済成長や物価安定を目指します。

簡単に言えば、長短金利操作は、人々や企業が銀行からお金を借りるときの利息(金利)が高くなりすぎないように、また低すぎず適切なレベルを保つようにする政策です。中央銀行は、短期間で返す必要がある借金(短期金利)と、もっと長い期間で返す借金(長期金利)の両方の利息を一定の範囲内でコントロールします。

しかし、この長短金利操作の撤廃とは、中央銀行がこの金利の直接的なコントロールをやめることを意味します。操作をやめると、市場の状況や経済の需要によって、長期金利が自然に上昇する可能性があります。なぜなら、投資家たちはリスクが高い(つまり返ってこない可能性がある)長期の投資に対して、より高い利息を求めるからです。

長期金利の上昇というのは、例えば、家を買うためのローンや企業が大きなプロジェクトに資金を借りる際の利息が上がることを意味します。これによって、ローンを利用して家を買う人や投資をする企業の費用が増えるため、経済全体にさまざまな影響を及ぼすことがあります。

簡単に言うと、長短金利操作の撤廃による長期金利の上昇は、お金を借りるときのコストが高くなるということです。これは、家を買ったり、企業が新しい事業に投資したりするときに影響します。お金を借りるのにより多くの利息を払う必要があるため、人々や企業がお金を借りて何かをするときに、より慎重になるかもしれません。

YCCの撤廃理由

長短金利操作(YCC: Yield Curve Control)や他の金融政策が撤廃または変更される主な理由は、経済状況の変化や中央銀行の目標達成に基づきます。具体的な理由には以下のようなものがあります:

1. **物価安定の目標達成**: 中央銀行は通常、一定のインフレ率(物価上昇率)を目標としています。経済がその目標に沿って進んでいる、または目標を上回るインフレが予測される場合、中央銀行は過剰な物価上昇を抑制するために金融緩和策を縮小または撤廃することがあります。

2. **経済成長の加速**: 長期間にわたって低金利政策を続けると、経済の過熱や資産価格のバブル(不動産や株式市場の過大評価など)が生じるリスクがあります。経済が安定的に成長し、過熱の兆候が見られる場合、中央銀行は金融政策の正常化(金利を標準的な水準に戻すこと)を図るかもしれません。

3. **金融市場の歪みの修正**: 長期にわたる異常な金融政策(例えば、マイナス金利や大規模な資産購入)は、金融市場に歪みをもたらすことがあります。例えば、銀行の収益性に悪影響を及ぼしたり、リスクを正しく価格付けしない状態を生み出したりすることがあります。これらの歪みを修正し、健全な金融システムを維持するため、中央銀行は政策を見直すことがあります。

4. **市場の自立性の回復**: 長期間にわたる強力な金融政策介入は、市場の自律性を低下させることがあります。市場が中央銀行の政策に過度に依存する状況を是正し、より市場力に基づいた価格形成へと移行するため、政策の撤廃や調整が行われることがあります。

長短金利操作の撤廃や金融政策の変更は、中央銀行が現在及び将来の経済状況を総合的に評価し、その目標(物価安定、持続可能な経済成長など)を達成するための最適な策として行われます。撤廃のタイミングや方法は、国によって異なり、それぞれの経済状況に応じたものになります。

「金利ある世界」景気底堅く

日本銀行がマイナス金利政策を解除し、金利が再び上昇することで「金利のある世界」が戻ってきました。この変化は、家計にとっては預金金利の上昇などの恩恵をもたらし、経済全体には新しい活力を与えることが期待されています。大手銀行は普通預金の金利を17年ぶりに引き上げ、これにより家計は預金の利子収入増などで全体的に恩恵を受けることになります。一方で、住宅ローンの金利上昇や企業の金利負担増加など、負の側面も存在しますが、これらは経済の健全な回転や産業の新陳代謝を促すことに繋がると見られています。エコノミストの間では、マイナス金利政策の解除後も景気は底堅く推移するとの見通しで、経済活動の進展によりインフレ率が低下することも予想されています。

日経新聞の図引用

緩和継続、円売り促す

日本銀行のマイナス金利政策解除は市場の期待通りで、これによって緩和政策が続くとの見解が示されました。この発表は円の売りとドルの買いを促し、一部には金融引き締めを示唆する要素も見られましたが、円安を進めることなく進行すると予想されます。今後の市場の焦点は、米国の金融政策動向と日銀の今後の見通しに移り、これらが通貨や株価にどのような影響を与えるかが注目されています。日銀の決定は、為替市場だけでなく株価にもポジティブな影響を与え、長期金利の動向や金融市場全体にも関心が集まっています。

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