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『一人っ子の国』 文字通り、産み落とされた命たち

Amazon Prime Videoで、『一人っ子の国(原題:One Child Nation)』を観た。小学校でテストのために記憶した”一人っ子政策”。それは36年間続き、2016年に終了した。「夫婦は1人しか子供を持てない」政策。それについて深く考えたことなどなかったが、大人になった今、その政策の無謀さや、残酷さは、ちょっと考えただけで分かる。改めてドキュメンタリーとしてその事実を突きつけられて、正直、ゲンナリした。

今年の北海道は雪が少ない。それでも寒さは、体感で例年並みかそれ以上。雪がないと冷気を遮るものがないし、湿度が上がらず余計に寒さを感じる。寒さに身体をこわばらせながら駅からマンションへ歩くとき、よく、この寒さを生き抜く野生動物たちを想像する。彼らはこんなに寒い北海道でも、産まれもった毛皮と本能を頼りに、たくましく成長する。ふにゃふにゃツルツルで産まれる人間の赤ちゃんには到底できない。しかし、ここ36年ほどで、お隣さんの中国では、そんな赤ちゃんが何十万、何百万人も産まれたてのまま路上に捨てられていたらしい。

『一人っ子の国』というドキュメンタリーは、2019年のアメリカ制作映画。Amazon Prime Video会員であれば無料で視聴できるし、ヘビーな割に89分間なのであっという間に観終われる。

アメリカに暮らす中国人の監督は、一人っ子政策世代。母親や親族、政策に関わった役人や助産師へのインタビューから、政策遂行のための生々しい”舞台裏”を明かしていく。

正直観る前の私は、一人目作るのもままならないので、できちゃった2人目をどうとかこうとか、不妊の私からするとちょっと贅沢な悩みだなーとか呑気なことを考えちゃったりもした。ごめんなさい。

ネタバレをしたい訳ではないので、簡単に、作中で語られる事実を並べておく。

・できてしまった2人目は、何か月だとしても強制流産。
・みんな男の子が欲しいから、女の子は路上に捨てられた。
・捨てられた子どもは、業者に拾われて、施設に売られ、施設は海外へ養子として売ってた。

かいつまんで、なおかつ稀釈しているけど、ちゃんと作品を観ると、信じられないようなことの連続。それを国家として実行していた、数年前まで、って考えると、頭がポワーっとしてくる。「一人っ子政策」立案して、国家主席にプレゼンしてきたやつ連れてこい、こんなんちょっと考えれば予測できることじゃねーか、と。

案の定、中国は急激に少子高齢化している。今度は、子どもに”老人”が捨てられることが問題になっているそう。さらに、男ばかり産んで育てたがために、男女のバランスが大きく崩れて、結婚相手として農村地から女の子を誘拐したりっていうことも起きてる。こうなることは最初から分かってたよね?こんな未来のための犠牲だったの?

寒空の下、言葉も話せない、泣くしかないし、泣く力もなかったかもしれない、”産まれてきてしまった”大量の赤ん坊が、捨てられて、命が尽きるのを待っていたのかなぁ。明日からの帰り道、またそういうことを考えてしまって、心がしんどくなるなぁ、なんて思った。知らなかった頃には戻れないなぁって。


この1週間で観た映画

・『ザ・レポート』2019年 アメリカ
・『一人っ子の国』2019年 アメリカ
・『バーニング 劇場版』2019年 韓国
・『アリー スター誕生』2018年 アメリカ

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