ノンアル

自分の不在を妄想して、酔っぱらう。

『サマーフィーリング』という映画を観た。突然”彼女”を失った青年と、突然”姉”を失った妹の再生の物語。ベルリン、パリ、ニューヨークと舞台を移しながら、数カ月、数年おきの彼らの姿が描かれ、何も起こらない感じが心地よい。

物語中、彼女の"不在"が圧倒的。序盤であっという間に死んでしまうので、彼女の人物像は最後まで曖昧だが、彼女に寄りかかっていた人々の、深い喪失感が様々な形で表れてくる。


深夜に一人で鑑賞しながら、死んだ彼女に自分を投影して、「ある日突然、私が死んだら」と考えた。

東京の家族は悲しむはずだ。きっと母はしばらく立ち直れないだろう、父は、そんな母を懸命に支えようとする。妹は…。夫は悲しむだろうが、しっかりした人なので、ちゃんと前を向いて生きていけると思う。私に構わず、素敵な人に出会ってほしい。…などと妄想しながら、自分の不在に酔いしれていた。

ノンアルで妄想だけで酔っぱらいながら、「私って、自分が愛されてると信じて疑わない、幸せ者だ」と思った。空想や妄想は大好きで、現実的なことにはなかなか頭が回らない。


物語の終盤、酔いも冷めて、すこしリアルに考えられるようになってきた。

でも、突然死んだとして、明日やるはずだった仕事はどうなる?夫のお弁当は?猫の世話は?北海道で死んだとして、葬儀のために東京へ遺体を送るための費用はどこから出る?っていうか、葬式代誰が出す?死亡保障のある保険には入ってない。私が死んでも、保険がでない!誰にも何も残してあげられない!突然死ぬなんてめっちゃ迷惑!

だんだん不安になってきて、映画の最中、"死亡保障" "見積"でググり出した。よし、月額10万円出るプランで、月2,000円ちょっとだ…。30歳になる前に加入しよう。


映画は、亡くなった"彼女"の彼氏と妹が、それぞれの形で彼女の不在を克服し、ジ・エンドとなる。死んだ人目線で映画を観ることは少ない。良い機会だった。

私が死んだら、お墓は要らないので、遺灰はトイレに流してください。


この1週間で観た映画

・『アイ・トーニャ』2018年 アメリカ
・『女神の見えざる手』2016年 アメリカ
・『ジョーカー』2019年 アメリカ
・『サマーフィーリング』2015年 フランス・ドイツ
・『コンジアム』2018年 韓国


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?