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中高生が地元を選ぶ理由を作る|室井泉海さん(群馬 / 20代)

LIVE DESIGN School の23年度メンバー同士が、根掘り葉掘りするインタビュー企画! 各地で活動するメンバーたちが日々考えていること、そして、LDSの参加を経て見えてきた展望とは...?

プロフィール
 群馬県館林市出身。大学を中退し福井県のガラス会社で働いた後、リードデザイナーの新山直広さん率いるTSUGIに入社。今年の秋にTSUGIを卒業し、現在は地元で地域に根ざしたデザイン事務所「KAERU」を開業した。エビオタクで家ラーメンガチ勢。
 LDSにはTSUGIの会社枠として参加。社員が参加するかは立候補制だった中、地元での活動を控えていたこともあり手を挙げた。

━━ オンラインプログラムで各地のリードデザイナーの話を聞いたり、鯖江フィールドワークの運営を手伝ってくださった中で、印象に残っている回やシーンはありますか?

新潟で活動されているhickory03travelersの迫一成さんのレクチャーが好きでした。僕の地元である群馬県館林市は東京に近くて都会への憧れが強いんですけど、これから地元で動き出すにあたって、東京の模倣をするんじゃなくてこの地域だからこそできることを示す必要があると思っていて。迫さんは、柔らかいながらも大事なところはゆずらない人柄はもちろんのこと、その地域に溶け込んで、そこに必要なものを見つけ、昇華する能力がすごい。表現についても、それがめちゃくちゃかっこいいとか洗練されているとかいうより、とにかくその地域に最適な表現を選んでいて。

━━ 室井さんはこの秋に地元にUターンされましたよね。先ほどおっしゃっていた「その地域に最適な表現」を館林ではどんな形で実現するか、構想はあるんですか?

館林って、産業もなければ工芸もなくて、都心や埼玉のベッドタウンみたいなまちなんですが、僕は今の中高生が地元で働きたくなる環境づくりのために、やっぱり地元が楽しいと思ってもらいたくて。館林の人たちって祭が大好きなので、いろんなお店を巻き込みつつ、スモールスタートでもいいから若者を中心に人が集まるイベントをやって、館林を楽しんでもらえる土台を作りたいと思ってます。

あと館林は、食べたい物のためなら行列に並ぶのをいとわない人が多かったり、隣の栃木県佐野市からの影響で家の一階を改装して店舗にしている「アットホーム居酒屋ラーメン屋」みたいな店がすごく多かったりと、飲食事情が面白いんです。それで、飲食店の方々へのデザイン面からのサポートはできるかなって思ってます。

それで、将来的には学校を作りたいです。なんというか「自分がやりたいことをやるためには、こうしたらいいんじゃない?」みたいなことを、中高生の段階で相談できる場所を作りたいと思っています。

━━ なんと!中高生への思い入れを感じますが、なぜですか?

ただ一点、僕が中高生の頃、館林が大っ嫌いだったからです。「館林って本当に何もねえな」って思ってたし、仮に夢を持ってもそれを相談できる人も環境も無くて。

実は、高校の頃からデザイナーになりたかったんですよ。デザイン系の大学のオープンキャンパスに行ったり、デッサン教室に通ったりもしたんですけど、なれるかどうか分かんないし、親が前向きに応援してくれないし。で、悔しかったけど諦めて埼玉の超Fラン大学に行ったんです。

でもやっぱりデザイナーになりたくて、オンラインゲームのプレイ動画を作るのに必要なサムネイルやバナーを大学1年生のときから独学で勉強して作りはじめて。そしたら僕が作ったバナーを有名な配信者が使ってくれるようになって、それから本格的にデザイナーを目指すようになりました。大学に行かず夜な夜なデザインを学んでいたら、ついに大学3年目になったときに教務課から「室井くんはまだ2年生です。奨学金が止まります。」って言われて大学を辞めたんです。そういえば、テストを受けた記憶もないし、成績の見方も、どうやったら進級できるのかも分かっていなくて。

━━ そういった経験から、「高校を卒業してとりあえず大学に行く」以外の選択があってもいいのでは、と思われたんですね。

僕の地域って、特に夢もなくて「とりあえず東京や県外の大学に行ってから将来のことを考えよう」みたいな人が多いんですよ。東京に行くのも別にいいとは思うんですけど、その選択って、その子にとっても地域にとっても、とにかくもったいない。僕も中高生のときにそれに気付けてたら、もっとできるやつになったんじゃないか、みたいな考えもあったりして。それで、中高生がやりたいことを具体的な進路として相談できる場を作りたいんです。

━━ 最終的な目標は学校作りだとして、当面はデザインが本業になるんですか?

最近、よく分からなくなってきました。リードデザイナーにも、人を繋げたり、コミュニティづくりをしたり、イベントを企画したりで、自分がデザイナーかどうかも分からないみたいな方がいますし。

ただ、救われた言葉が一個あって、それがLDSのキャッチコピーなんですよ。「格好悪くても、不器用でも、ここで生きていく」。あれを読んで「自分の肩書きにとらわれる必要ないな」って思ったんです。なにかを必要としている人がいたら、やれることをできる限りやるっていう気持ちで、デザインという方法だけにくくられずにやろうと思ってます。

━━ 最後に、LDSに入ってよかったですか?

良かったです。やっぱり地域ごとに差があるので、他のリードデザイナーのやり方でそのまま真似できることは少ないとは思うんですけど、僕みたいに拠点にする地域とやりたいことがある程度決まっている人にとっては、レクチャーを聞いていて楽しいのはもちろん、モチベーションを高く保ち続けられるので、ありがたいです。

あと、感謝を忘れちゃだめだなって思いました。僕を含めたどんなプレイヤーも、どれだけ自分たちが率先してイベントをやろうが、それで感謝されようが、それを地元の人にさせてもらっている大前提の上で出来ているわけで。どんな小さいことでも、それに感謝しなきゃっていうのも気付かせてもらえた気がします。地域に生かされてるっていうか。

━━ 地域に生かされてる!まさにそう思います。ありがとうございました。

(聞き手|運営局 森谷)


地域で必要とされる「広義のデザイン」について、各地のデザイナー陣と参加者とが学び合う場として始まったLIVE DESIGN School。デザイナーはもちろん、行政職員 / 地域おこし協力隊 / 学生 / 経営者 / ディレクター / ディベロッパー / コンサルタント / 編集者 / イラストレーター / 理学療法士 / 八百屋 / 販売員 / 印刷業 / 百姓 など、多様な方にご参加いただいています。詳細は 公式HP から!

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