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「東北の難しさ」を面白がる入口をつくる|野村隆文さん(福島 / 30代)

LIVE DESIGN School の23年度メンバー同士が、根掘り葉掘りするインタビュー企画! 各地で活動するメンバーたちが日々考えていること、そして、LDSの参加を経て見えてきた展望とは...?

プロフィール
 兵庫県出身。大学時代を東京で過ごし、コピーライターとして広告会社に就職。奈良に拠点を置く中川政七商店へ転職後、今年の春から福島県いわき市に移住。会社経営のノウハウなどを全国の工芸メーカーにコンサルティングする事業のサポートやプロマネに従事し、そこから派生したプロジェクト「地産地匠アワード」にも関わる。
 開校の発表と近い時期に地産地匠アワードの企画が始まったり、それと前後して福島に引っ越したりと 地域 × デザイン に興味を持つ機会が重なり参加を決めた。企業枠での参加ではあるが、そうでなくても参加しようと思っていた気がする。

━━ 東北フィールドワークにご参加くださったときは、リードデザイナーの吉野敏充さんの拠点・山形県新庄市からの合流でしたが、印象に残っているところなどありましたか?

吉野さんの作るものに共感する部分が多いので、まずフィールドワークに行けてよかったです。もちろん吉野さんの事務所に行ったり、その土地の風土を学んだり、地域の人たちと話したりするのも面白かったし楽しかったんですけど、いちばん印象に残ったのは懇親会の後に行った駅前のスナックかもしれない。カウンターにいたお兄さんが「このまちでは結婚式が1回あるたびに葬式が10回あるよ」って話してくれたり、店主がご高齢の方だったのでフィールドワークの1か月後くらいに店を閉めたりと、やっぱりスナック的なところってその土地のリアルが出るなと思って。本当は店が閉まる前にもう1回行きたかったです。

福島に住みはじめた自分からすると山形は、自分が住んでいる地域のちょっと違う場所みたいなイメージで、どこか通ずる部分もあって。フィールドワークを通して、いろんな意味で「東北の難しさ」が相当なものだと改めて感じましたし、ただ、その中でも楽しくやっている人たちに会えたのが良かったです。

━━ 野村さんは福島に移住されて半年ほどかと思いますが、これから取り組んでいきたいことなどがあれば教えてください。

さっき「東北の難しさ」って言ったんですけど、僕の住むいわき市の港町は、原発事故も含めた海の近くのいろんな問題がある地域なんです。でも、遊びに来てくれる東京の友達が、港町の暮らしや昔から残る漁の道具だったりを面白がってくれるので、そういった人たちとここを繋いで風通しを良くするような、入口になるような場所を作りたいと思って準備しつつあって。

━━ 準備しつつある!どんな場所になりそうなんですか?

広い家を借りられたので、自宅の中でちょっとしたお店をやってみる予定で。このまちの文脈を生かしつつ、商品を作ったりもする、平たく言うとギャラリーショップみたいな場所を考えています。

リードデザイナーの新山さん率いるTSUGIさんがやっている鯖江のSAVA!STOREのように、地域の産業や文脈を生かしたお土産物屋さんであり、良いショップでもある空間。あんなふうに地域の入口となったり、そこが起点となってそのまちを観光するみたいなことが起きたり、帰りに寄っていくお土産屋みたいになったりすると楽しそうだなと思っています。いわき市は鯖江ほどものづくりが盛んではないので、全く違う形の、それも、もう少しふざけた感じになりそうではあるんですけど。今年春のプレオープンを予定しているのですが、今は妻と妄想している段階で時間が無い。やばいかも(笑)。

━━ お店で展開するコンテンツの構想は進んでいるんですか?

僕の妻が、いわき市の地域おこし協力隊として、古くから残る漁業資料の整理をする仕事をしていて。例えば、かまぼこを作るための魚形の金型が200個とか残っていたりするんです。それをうまくアップサイクルしてプロダクトにするとか、もしくはそのまま売ってもいいかもしれない。そうやって、なにかしら自分たちの視点で編集して出す、みたいなことを考えています。他にも、こういうものは使えるかもとか、この人に相談したら色々もらえそう、とか考えてはいるんですが、まだラインナップの構想にまではいけていないので、来春のプレオープンは怪しい気がする(笑)。とはいえ、このまちでこういうものを面白がったらよさそうだなっていうのが、なんとなく見えてきつつある状況です。

あとは僕の仲のいい友達が、東京から行く福島の浜通りのツアーみたいなのを月1ぐらいでやっていて。その人はもともと原発の周りの仕事をしていて繋がりも持っているので、特別に原発の中に入らせてもらえたりもするんです。みんなで現場に行って「あそこが事故ったとこだね」とか「今、あそこから処理水を出してるんだね」みたいな話をした後、外でうまい魚を食べるみたいな。僕も1回参加させてもらったんですが、被災地としてすごく大変なことが起こってるんだけど、それが観光としては見ごたえのあるものでもあって。今後、そういった色んな側面が見られるツアーをちゃんとやりたいねってその友達と相談していたり、そのツアーの中で自分たちのお店にも寄ってもらうみたいなイメージをしていたりします。

━━ そうなんですね。オープンしたらツアーと併せてぜひ伺いたいです!最後の質問なのですが、LDSに参加してよかったですか。

もちろんです。講義も面白いんですけど、参加者さんは既に何かに取り組んでる人が多くて、そんな人同士が繋がっていく面白さを感じています。スクールでもあるけれど、それよりはコミュニティ的なニュアンスが強いというか。僕みたいに、特定の地域の中でやっている自分のプロジェクトがあると、それに対していろんな角度で刺激をもらえるので、すごくありがたいなと思っています。

━━ ありがとうございました!

(聞き手|運営局 森谷)


地域で必要とされる「広義のデザイン」について、各地のデザイナー陣と参加者どうしが学び合う場として始まったLIVE DESIGN School。現在、24年度のエントリーを受付中です!デザイナー(志望)はもちろん、イラストレーター / 大学生 / 行政職員 / 地域おこし協力隊 / 販売員 / 製紙業 / 百姓!などなど多様な肩書きの方にエントリーいただいています。詳細はこちらから!


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