観劇のススメ

 今日は演劇を見に行く。数年前演劇の先生からオススメされた劇団の公演。心なしか昨日の夜からウキウキしていた気がする。間違いない。

 観劇する日は最新の注意を払って劇場に向かわなくてはならない。まず初めに朝ごはんを必ず食べること午後13時や15時開演なら尚のことである。なぜか?13時公演の直前に昼ごはんを食べた場合必ずお腹ぐるぐるリスクが高まるからだ。朝に食べることでそのリスクを下げることができる。いや、私は朝も昼も食べないなどという輩もいることだろう。だが、それにも大きなリスクが存在する。それは、お腹ぐーぐーリスクである。いつ鳴るかもしれないお腹に気を取られるのはいけない。観劇の敵は多い。完璧を目指す必要がある。やはり朝にしっかりと食べなくては。


 さて、朝ごはんを食べた後はシャワーを浴びる。これは目を覚ます為である。朝ごはんを食べて少し眠くなるのをシャキッとさせる。そんなこと必要ないと思うかもしれないが、シャキッとしているのと眠気が残っているのは観劇中の眠気に大きな差が出る。例えるなら、買ったばかりのもやしと1週間冷蔵庫に眠っていたもやしほどの差がある。眠気は最大の敵だ、僕は既に数万円分の観劇のを睡眠で溶かした。


 そして、身支度をする。こういう日の身支度は心なしか楽しい。うん。楽しい。これこそが観劇の最も楽しい一つである。どんな格好で行こうか。知り合いもいないんだから少し派手にしてみようか。あは。楽しい。今日はいつもより多めにワックスを塗った。例えるならシュガーマーガリンパンのようである。ちょっとかっこ悪くなった。でも、知り合いいないんだし。まぁいいや。


 その辺で時計を見る。だいたい時間ギリギリになるはずだ。急いでトイレを済ませて。家を出よう。でも!ここで待たなくてはならない。冷静にならなくてはいけないことがある。さぁ、深呼吸をして。まず、メガネ、オペラグラス、腹痛薬、移動途中に読む小説。これらを忘れてないか確認しなくては。よし。いいね。行こう。楽しむ準備は完璧だ。時間はだいたい予定していた出発時刻を過ぎる。


 さあ。いそげ!!電車に乗ったらもう勝ちだ!ここで一度ウキウキがヒヤヒヤになるが仕方がない。息を切らして全力で走れ。
 滑り込む。勝った。ここからはもう、ワクワクタイムだ。大切なのは童心を取り戻すこと。電車の外を眺めて心を過去に透過させていく。電車の音に耳を傾け。これから着く街の景色を想像する。初めての町。初めての劇場。今まで見たことのなかった街並みを心に描き。硬い殻に困った感性をほぐしていく。


 電車の扉が開く。劇場の扉を目指して一歩を踏み出す。そして、幕があがる。

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