読書ノート:「月と雷」角田光代

読みました。
「月と雷」角田光代 中央公論新社
仕事で関わる人たちのことが思い浮かんだ。様々な理由で、生活や暮らしにいきずまって、家を失った、失いそうになっている人を支援するNPO法人で働いているんだが、その中で、生活困窮者支援に関する事業の事務局もやっている。少し支援よりのこともしていたりする。
で、その時に、支援者側が「規律・規範」の中で人を捉えていて(無自覚に)もやーーっとすることがよくある・・。
ここに書かれている人たちは私が出会った人たちの姿に似ていた。

主人公、泰子が社会との違和に気づくところの言葉にグッときた。
「泰子は先ほど感じた違和感の正体を突き止めたようなきになる。そうなのだ、世のなかにルールは1種類であるべきなのだ。
孫が生まれたら戻ってくるはずだし、結婚話が進んだらほかの男と子どもをつくったりはしない。子どもは服をきて学校に行くべきで、女は見ず知らずの男の家においそれとついていってはいけないのだ。ルールは一種類で充分だ、いくつもあって混乱するだけだ。」

自分の身近にルールを逸脱しながら生きている人がいると、できれば関わりたくないと距離をとるか、または、ルールにはまることを求めるか。わけのわからなさに対する、自分自身の規範がおびやかされる恐怖。
どうやっていきてきて、どうやって生きていくんだろう・・?そんな人がいる。
「そんなことでは、ダメだよ」って、支援している側(読者)は思う。「どうしてなの?」「なんで、お金つかっちゃうの?」「なんでやめられないの?」という言葉が本の中に出てくる。
それを言うのは、読者であり、社会なのだ。理由を知りたいのは、相手を知りたいんじゃなくて、支援者(周りの人)が納得したいからなんだよなぁ・・と思う。
ラストどう着地するのかなと思っていたが、読者・支援者が描く就労自立・更生・絵に描いたようなハッピーではなく、引き続き本の中で主人公の人生は続いていくと思える終わり方でよかった。


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