まず、渡辺氏の論考はこちら
(2024.6.26 改訂があったそうです。)
本稿は、この論考に関する
の続きです。
解釈論は専門家に委ねます
渡辺氏の論考中、前半部分にでてくる
こうした解釈論(このように解釈すべきだ、と言う話)については、渡辺氏はじめ専門家の方々にお任せすべき話で、私のような一般人の法律素人が割り込んで、渡り合うような議論ができる領域ではあるまい、と自覚しています。
さらに、専門家同士が異なる解釈論、学説をぶつけ合っている場面があるとした場合、どちらが妥当か?なんてことを判断する素養を、私は持ち合わせていません。
法律概念で自分が知っていることと言えば、入門レベルの話、「信義則」とか「禁反言」という概念くらい。(あとこれは法律に限った話ではありませんが、詐欺的な話にだまされないように論理の誤謬には敏感でいるように意識しています。)
・「信義則」は、誠意をもって行動せよ、相手方の信頼を裏切るな。(⇒欺罔的な叙述トリックで、相手を煙に巻くようなことをするな。と私は解釈)
・「禁反言」は、説明を聞いてそれを信用し、それに基づいて行動している人に矛盾した主張をしてはならない。
・・・くらいの意味でしょうか。
一般人の立場で言えること
ある法解釈が妥当であるかどうか?などと素人判断できないにしても、
「役所が実際、これまで、どのように当事者に対して説明していたか?」「それについて、当事者の立場ではどう考えてきたのか?」というファクトは示せます。
過去のある時点で、何らかの説明を役所から聞いて、それに従って行動している人がいる。
そういうときに、役所側が不意打ち的に、はしごを外すようなことをしてくるのであれば、それこそ「信義則」も「禁反言」もあったものではない。法律やら行政制度やら、そうしたものが根底から信頼を失うと言うものではないでしょうか。
そういう意味では、渡辺氏の論考中、私がもっとも関心があるのは
のあたりです。
・(役所側が)従来当事者にどう説明していたか、
・もし、必要に迫られて説明を変えたのならば、妥当な変更のプロセスを踏んだか。当事者・関係者への不意打ちになっていないか?
・今現在の運用については、法律素人の一般人が納得できるような説明、十分な広報がされているのか?
といったことに注目したい。
役所は当事者にどう説明してきたか
渡辺氏の論考中
には、当事者への説明事例が2つ出てきます。
・「神戸法務局」での説明例
・「東京法務局」での説明例
です。
「神戸法務局」での説明例
引用されている、2018年10月27日付けの岡野翔太さんの記事によれば
とあります。リンク先記事内には、いつの時点で説明された内容か?が記載されていませんが、同じ著者(岡野氏)による、ちくま新書「二重国籍と日本」第4章のp113ー114には、2018年7月時点の神戸法務局の説明であることが明記されています。これは蓮舫氏の国籍騒動(2016年9月)より後になります。
なお余談ですが、このちくま新書「二重国籍と日本」の、第3章のp85-86には、別の方が、広島法務局で
と説明されたというファクトも出てきます。2018年4月時点の説明で、これも蓮舫氏の国籍騒動(2016年9月)より後になります。
「東京法務局」での説明事例
渡辺氏の論考では、その次の箇所に
と書かれていますが、2016年ではないですね。リンク先を開くと、法務省ではなく「総務省」の「情報公開・個人情報保護審査会」がまとめた令和元年(2019年)の答申書ですね。
「令和元年5月9日(令和元年(行情)諮問第4号)」という法務大臣からの諮問に対しての
「令和元年11月12日(令和元年度(行情)答申第295号)」という答申書の中に書かれている内容なので、文書を特定する場合は、「令和元年11月12日(令和元年度(行情)答申第295号)」を使うのが良かろうと思います。
これについては、録音がYoutubeで公開されているので、当事者がどんなふうに説明されていたのかは、実際のやり取りを聞いてみましょう。
このやり取りを証拠提出された法務省側は弁解をしています。答申書では情報公開・個人情報保護審査会が次のように記載しています。
「電話での回答は不正確」「担当者が資料を確認していなかった」
しかし、そんな理由で話をひっくり返せるものなのか・・。
仮にひっくり返すことを認め、受け入れるとしても、ここにある
と言う表現は決して、
と言うことを意味してはいないはず。もっと具体的な判断基準が示されない限り、このままで、「台湾の籍を有する日本国民」の当事者側が国籍選択手続きをしなければならない、と解するのは誤謬ではないでしょうか。
解釈変更の時期について
渡辺氏は
と書いていらっしゃいますが、先に挙げたような法務局の説明があったのは、いずれも2016年以降(2017年,2018年)のことです。
さらには、2022年段階でも、東京法務局の民事行政部長が
との認識を付して、法務省本省に問い合わせをしている。要は、「台湾当局発行」の「パスポート」「戸籍謄本」「中華民国国民身分証」の三点セットを添付して申請してきた場合でさえも、「外国の国籍を有する日本国民(二重国籍者)」と認めることはできない、と認識していたことが分かります。