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「台湾籍」「日台重籍」の語について

先に書いたこちらの記事「「日台重籍」者の国籍選択」

は、思いがけずたくさんの方に見ていただきありがとうございました。ご意見・ご質問もいただいており、そちらは、個別にお返事させていただきました。「なるほど読まれた方は、そういう点に疑問を持たれるのか?」と、こちらにとっても気づきとなりました。

ご参考まで、主なものを紹介しておきたいと思います。

「台湾籍」って何? なぜ「中華民国籍」と書かないのか?

 そういう疑問を持たれるのはもっともなことかと思います。筆者の意図しているのは「台湾当局」の側において「国民」として登録されている籍のこと。あくまで日本の法律上の表現にあわせて書いています。

(1)日本側では入管法施行令(出入国管理及び難民認定法施行令)の第1条で「政令で定める地域」として、台湾とパレスチナを挙げています。

出入国管理及び難民認定法施行令
(法第二条第五号ロの政令で定める地域)
第一条 出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)第二条第五号ロの政令で定める地域は、台湾並びにヨルダン川西岸地区及びガザ地区とする。

「法第二条第五号ロ」というのをたどると

出入国管理及び難民認定法
(定義)
第二条 出入国管理及び難民認定法及びこれに基づく命令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(・・中略・・)
五 旅券 次に掲げる文書をいう。
イ 日本国政府、日本国政府の承認した外国政府又は権限のある国際機関の発行した旅券又は難民旅行証明書その他当該旅券に代わる証明書(日本国領事官等の発行した渡航証明書を含む。)
ロ 政令で定める地域の権限のある機関の発行したイに掲げる文書に相当する文書

この条文により「(台湾という政令で定める地域の)権限のある機関が発行した」パスポートとして台湾パスポートも、日本において正式なパスポートとして扱われています。

(2)日本が台湾に置いている実務処理の業務を行う組織は

「日本台湾交流協会」という名称です。

これらのように、日本側では、台湾当局を呼称する際、「台湾」の語は使っていますが、「中華民国」という名称は使われていません。それに合わせて、拙文においても「台湾籍」の語を使わせていただきました。

「日台重籍」って何? なぜ「日台重国籍」と書かないのか?

これは、法務当局が国籍法の説明をするときに、

という案内を出しており、「日台重国籍の場合なんですが・・」と相談すると

言葉尻をとらえて、「重国籍なら選択義務がある」という風に論点ずらしの回答をされる場合があるからです。

 当事者側が本来知りたいことは、

・「選択義務の対象になると日本側が取り扱っている」ところの「重国籍」「定義」はどういうものなのか?
台湾当局「籍」があるということは、その「重国籍」の定義にあてはまるのか?
・当てはまるならば、どのように手続きをすることが求められているのか?

といった点です。この辺がはっきりする前に、「日台重国籍」という言葉を使うことで、役所側から「重国籍なら選択義務がある」というつまらない誤魔化し、揚げ足取りに使われてしまうことを避けたい。そう意図して「日台重籍」という表現を使っているのです。

「国籍選択手続き」における「重国籍」の定義は?

冒頭にも紹介したこちらの記事

の中で取り上げている総務省情報公開・個人情報保護審査会による答申書(令和元年(行情)295号)

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https://www.soumu.go.jp/main_content/000654465.pdf

の13ページ上方には、諮問庁(法務大臣)側の説明として、

「国籍法14条の定める国籍選択義務を有する「外国の国籍を有する日本国民」における「外国の国籍」とは,日本国が国家として承認している国の国籍を指す」

と明記されています。そして、14ページ ウには

「国籍喪失又は国籍離脱の手続の際に,台湾当局発行の証明書を国籍証明書として届書に添付された場合には,受理することができないことは,国籍法の規定から導かれる当然の帰結」

これを読めば「日台重籍」は「選択義務対象外」だと解釈するのが妥当じゃないですかね?

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