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#75 「紅茶を注文する方法」

やっと。

 僕がこの本を古本屋で買ったのが10月24日。それから結構な月日が経った。
 2020.12.10(木)24:00、ハライチのターンが始まると同時に僕はようやくこの本を読み始めた。
 というのも、その週の金曜日に授業でビブリオバトルをする必要があったからだ。
 前日にその存在を思い出し、重い腰を上げた。(ラジオのTFもそうだが、基本的には始めるのが億劫なだけでやって後悔することは少ない。)

理由

 この本は哲学者でありながらお茶の水女子大の名誉教授でもある土屋賢二さんという方のエッセイ本だ。
 僕がこの本を選んだ理由は単純明快、「紅茶を注文する方法」というタイトルに惹かれたからだ。
この本を見つけたのは学校の図書館だった。
というのも担当の先生に「ビブリオバトルの本は学校の図書館で探せ」と言われたからだ。
僕は改めて読む必要のない若林さんの本にしようと勝手に思っていたが、学校の図書館にはなく作戦は失敗に終わった。
小説とかは読んだことがないのでまぁエッセイがいいなと思っていた。
エッセイコーナーを払拭すると、僕には明らかにこの本のタイトル「紅茶を注文する方法」が輝いて見えた。
 僕がこの本のタイトルに惹かれた理由。
それは僕が前に書いたnote、「テンプレートで生きる生活」に書いたようなことが不意に頭をよぎったからである。

これは散髪に行った時でも、スタバに行った時でも、スーパーに行った時でも、ファミレスに行った時でも、先生に指名された時でも、発表をする時でも当てはまる。
注文するときの「テンプレート」が頭にないとレジに向かうことができない。
ポイントカードを出すタイミング、商品の受け取り方、食券の渡し方、会計のタイミング、入り口や出口の場所。
部屋に入る手順、先輩に話しかける手順ですら気になってしまう。
全ての「テンプレート」というものを知っておかないと気が済まない。
(要約)

 ちなみに僕が昔のnoteに書いた例は「散髪の頼み方が分からない」みたいなことを書いた。
「テンプレート」を気にしすぎるのはどうしたらいいのか。
その解決方法が書かれているのではないかと思って僕はこの本を選んだ。

読んでみて

 ある程度読み進めたところで僕が知りたかった解決方法が書かれていないことがわかりましたがめちゃくちゃ面白いエッセイでした。
共感したページの角を折って目印にしていたのですが、自分でも意外な数ありました。
一応羅列しておきます。

問の章
・人の不幸を笑うな
・一過性の肥満
・検査は身体に悪い
題の章
・不可解な命令
・事物がライバル
・卒業生に贈る言葉
山の章
・新入生の皆さんへ
・最近の歌はなってない
・合成の誤謬
・自分を説得する方法
・知らないでいる権利
・絶対に失敗しない方法
・親切な二枚舌
積の章
・紅茶を注文する方法

 このエッセイは、著者が教え子に慕われていない、奥さんに逆らえない、世の中への屁理屈などを軸に構成されているが特段嫌な感じはしない。
屁理屈といっても理由にしっかり筋が通っている。
どんな暴論でも納得できてしまう、俺が好きなタイプだ。
何気ない書き出しでもいつのまにか話がすり替わって誰かの悪口になっていたりもする。笑

ビブリオバトル

 発表当日の0時から読み始めので結局半分までしか読み終わらなかった。
僕はそこまでの内容で発表をすることにした。
発表の軸は「不可解な命令」という話に共感した話。
下に発表の練習のために作ったメモを貼っておきます。

今日紹介するのは「紅茶を注文する方法」という本について
この本は哲学者兼お茶の水女子大学の名誉教授である土屋賢二さん著作のエッセイ本


僕がこの本を選んだ1番の理由はタイトルに惹かれたからです。
僕はタイトルだけを見て「生きていくうえで型やテンプレートというものにハマらないと生きていくのは難しく、気になってしまう」という内容を想像しました
そこに僕は勝手に共感し、その答えが書かれているのを期待しました。


ある程度読み進めたとこまでであまりそのことが書かれていないことをある程度察しましたが、
このエッセイは一貫して「後輩になめられている話」と「世の中への愚痴」で構成されています


その中で特に印象に残った話
2章目の「不可解な命令」というタイトルのパート

哲学者である著者は世間から「マシなことを書け」「素直になれ」「嘘をつくな」という声もあり、指針を示すはずの哲学者でありながら自分のことすら決められないことを嘆きます。
しかし、筆者は命令は常に有効な訳ではないといます。
例えば
「100メートルを3秒で走れ」のように明らかに能力を超えているときや
「毎日呼吸しろ」のような言わなくてもすること
あとは「身長を伸ばせ」のような意図的に実行できないもの。
ただ、最後に該当するものの中で奇妙な命令文存在すると筆者はいいます。
大まかに2つ合って
一つ目は軌道哀楽である。
言ってしまいがちですが
「自信を持て」「がっかりするな」「恐れるな」「落ち着け」のように言われてもなすすべはない。
もう一つは
「テストの点数、高くあってくれ」のような天や神に命令するようなものもある。
神に命令することに躊躇しない部下たちが、筆者に命令することをためらうはずがない。
著者は「バチよ、当たれ」で文を締める。

このように、ある程度考えの根拠があったうえの屁理屈なので読んでいて納得する。


そして、4章の最後の方に「紅茶を注文する方法」というパートがくる。
たった4ページだが、紅茶を頼むときに頭をぐるぐるまわる思考が全部言語化されている。
散髪でもスターバックスでもファミレスでも当てはまるこの考えがしっかり文字になっていて、
解決法すらわからなかったが、この言語化されているという事実に感動した。

皆さんにもぜひ読んでみてほしいです。

先にあげた14個のパートもそうだが、僕はこれらの話が本当に心に響いたし、本当に共感した。
発表を終えた後に担当の先生が一言、「やる気出せ、みたいなのはまぁみんなでやろうって感じで一つになれて良いと思いますけどね、私は。」って。
真っ向からちゃんと否定された。
ビブリオで発表者の意見を否定するのはナンセンスみたいなしょうもない話はどうでもよくて、共感できない人もいるのでかと気付かされた。
いつも僕の視界にいるのは若林さんのエッセイに共感できるような人たちばかりで、ひねくれだったりナナメだったりハスりだったり言い訳に共感できたりするのが当たり前なような気がしていた。
でもそうじゃない、世界は全然広いんだと気付かされた。
 世の中マジョリティが正義。
その点ラジオリスナーはいつもマイノリティ。
陰の狭いコミュニティでキャッキャやってるくらいが丁度いい。
なんで僕は授業でみんなに共感されたいと思っていたのかよくわからない。
別にいいよね、共感されなくても。

 オードリー若林さんのエッセイに始まり、ハライチ岩井さん、何回キャンディーズ山里さん、ブラックマヨネーズ吉田さん、アルコ&ピース平子さん。三四郎相田さん、東海オンエア虫眼鏡さん。
ある程度自分が好きな人のエッセイしか読んでこなかった。
初めてタイトルだけ見てエッセイを買って読んだ。
恥ずかしながらの本を買うまで土屋賢二さんという方を全く知らなかった。
いままでは人柄をある程度知ったうえで、自分に波長が合っているだろうという前提でしか本を読んでなかった。
僕は本が好きというよりも好きな人の文章だから読んでいたのかもしれない。
でもこの本を読んで心から読書が楽しく思えた。
今回、偶然波長の合う筆者だっただけかもしれないが、タイトルで本を買って読むのも楽しいですね。

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