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『旅のコマんドー [アジア編]』 たびコマさんインタビュー【前編】

ネパール、インド、タイ、タジキスタン、中国、チベット…。
寝て、起きて、食べて、また寝て。
旅をしながら生きていく。旅をしながら考える。
『旅のコマんドー』作者のたびコマさんに話を聞いた、
ロングインタビュー前編です!

聞き手:大和田洋平(LITTLE MAN BOOKS)

●楽だからこそ、面白くないんですよね

−−−−たびコマさんがこれまで一番行ってるのは、どの辺りですか?

たびコマ:何回も行ってるのは、タイ、台湾とか。あと中国、インドですかね。

−−−−マンガを見ていると、ネパールが多いなと思ったんですが?

たびコマ:それは、ネパールでマンガを描き始めたからなんですよ。カトマンズって面白い場所で、すごいエキゾチックなんですよ。古い町の感じが残ってるんです。人も優しかったし。

−−−−時間の流れはのんびりしてる?

たびコマ:いや。市場の周辺とか、すごいごちゃごちゃしてて。人が行き交って、せわしないです。僕はそういうところが好きみたいです。人のエネルギーみたいなのがあるところが、すごく元気になるんですよね。

−−−−東京はどうですか? 人は多いですけど。

たびコマ:東京はまた違う雰囲気かな。人は同じくらい多いけど、カトマンズの方がカオスな感じがするんですよね。東京はもっとルール立てされてて、規律が守られてる感じがするんです。

−−−−秩序の中で暮らしてるっていう?

たびコマ:カトマンズは、人間の無意識が増殖して造り上げた町、みたいな感じがしますね。電線もすごいし、全部やりっぱなしだし、町は汚いし。でもそういうところにエネルギーを感じるんですよね。

−−−−東京は、全部目に見える形にされてしまって、潜在的なものを押し込めてる、見えなくしてる感じはしますね。

たびコマ:そうですね。日本って、制御されて、人間のどろどろした部分が見えなくなってるんですよ。カトマンズは、一見汚いとか、無秩序みたいなのがあふれてて、東京と比べると生命力が強い感じ。それは東南アジアの市場に行ってもそうなんですけど、ああいう民衆のエネルギーみたいなものにすごい惹かれますね。香港とかも、屋台の文化がちゃんと残ってて、すごいカオスで面白いですね。日本は神経質に、整理されすぎてる感じがしますね。それによって生命力を失っている。

−−−−いろいろなルールで守られているということがあるんでしょうけど。

たびコマ:そう。だから、すごい楽なんです。楽だからこそ、面白くないんですよね。列を乱すと、すごい抵抗を受けるんで。効率重視なんですよ、日本って。でも、それによってエネルギーみたいなものが失われてるような気がします。

−−−−インドはカースト制度がいまだにあるでしょうし、男女の差別も大きいと思います。中国も、政府の権限が強いじゃないですか。けれどもその中で、人は結構自由に生きてるんじゃないか、ということですか。

たびコマ:そうなんですよ。中国も、みんな押さえつけられて息苦しそうに見えるんですけど、実際に行ってみると日本よりも全然自由な感じで。みんな自分の好きな格好してるし、大声でしゃべりまくったりとか。あまり、周り、人目を気にしない感じですね。ああいう所は、僕からしたら居心地がすごくいいですね。

−−−−もちろん、何かあったときには強権が発動されて…。

たびコマ:いきなり出ていけとか言われることも、なきしにもあらずですが(笑)。なぜか、日本ほどは息苦しくない。でも、中国もだんだん息苦しくなりつつあるのかなって感じはしますね。食べ物残したら駄目とか、食事中のマナー的なところを気にし始めて。あれが息苦しさにつながってくるんですよね。上半身裸は駄目だとか。中国は昔トイレが汚いって有名でしたけど、最近きれいになり始めて、逆につまんなくなったんですよね。汚いままでいいんじゃないのって、僕なんかは思うんですけど。

−−−− きれいな方がいいとか、安全な方がいいとか、マナーがいい方がいいとか、っていうのは価値観としてはわかるんですけど、それによって失われちゃうものがある。

たびコマ:コロナも同じなんですよね。1人でも死者を出しちゃいけないっていう思考になってしまうと、世の中がすごくつまらなくなる。すごい矛盾して聞こえるんだけど。

−−−−日本もある意味行きすぎてる部分があるでしょうし、中国は中国で別の行きすぎている部分があるかもしれない。何が正解かはなかなか難しい。

たびコマ:そうですね。どちらが正しいと思うかは、個人個人の考え方なので。僕は整理されすぎてるよりは、カオティックな所に心地よさを感じます。たぶん、そこには怖い病気とか食中毒とか、危険なこととかあるんですけど。でも、そこで生活しているだけで、すごく楽しいと思う。日本って、長いこといてたら生きてる感じがしなくなったんですよね。

−−−−生きてる感じがしなくなるっていうのは、なぜなんですか?

たびコマ:安全すぎたりとか。考えなくても何でも手軽にできたりとか。言葉が簡単に通じたりとか。日本の中でも、宿無しでテント持っていけば、それはそれで楽しいんだと思いますけど、普通に生活してたら、あんまり生きてる感じがしない。

−−−−たびコマさんの場合は、旅に出ることで生きてる感じを得ているわけですか?

たびコマ:場所を変えると、もう前の常識が通用しなくなるんで。ずっと同じ場所にいたほうが、楽は楽なんですけど、楽だとすぐにつまらなくなってしまう。慣れてしまうから。

−−−−慣れたら、別の場所に移動するんですか?

たびコマ:そうですね。すごい気に入った場所なら、ビザぎりぎりまでいたりしますけど。宿が安かったり、環境がよかったりとか、人がよかったりとか。

−−−−海外のどこかに定住するっていう気持ちはないんですか?

たびコマ:前はちょっとありましたね。グルジアで、日本人宿が売りに出てるっていううわさを聞いて、ちょっと買おうかと思ったりしてた。あとは、チェンマイとかすごい居心地いいんで。でも定住って言っても、2、3年で飽きて、出たくなっちゃうかもしれないですけどね。

−−−−じゃあ、いくら自由な所で、たびコマさんにとって居心地がよくても、そこにずっと住み続けるのはちょっと違うということですか。

たびコマ:定住はないかもしれない。遊牧民みたいな感じなんじゃないですかね。とにかく移動し続ける、それが自分を正常に保っておける方法なのかもしれないですね。

●海外では僕は外国人なんですけど、素の僕でいられるんですよ

−−−−今まではどのくらいのペースで、海外と日本を行き来していたんですか?

たびコマ:1年とか1年半海外で、日本に半年とか。でも、結構変則的ではあります。1年以上日本にいないってことはあまりないですね。

−−−−一度帰ってくると、日本にはどのくらいいるんですか?

たびコマ:1カ月弱とか、2週間とか。ここ10年は、ずっとそういう感じの生活でしたね。

−−−−家を借りて定住していた時期もあったと思うんですが、そのときから違和感というか、何となくこのやり方違うかなっていうのはあったんですか?

たびコマ:東京に10年以上いたんですけど、その間、音楽やったりとか映像やったりとか、アート系の活動をしてて。それはそれで楽しかったんですけど、並行して海外にバックパッカー旅行するようになって。海外すごい面白いなと思って、目覚めたんですよね。

−−−−国としてはどこが?

たびコマ:インドです。インドって、みんな兄弟みたいな感じで。初対面でも、うわあっと来て、心の障壁がないというか。それがすごいなと思って。インドですごくリラックスしてる自分に気付いたんですよね。向こうもかしこまった感じがないし、こっちも素の自分でいられるというか。

−−−−自我のバリアみたいなのが、お互いあまりない?

たびコマ:そうですね。日本だと、周りに合わせるのが一番じゃないですか。人に迷惑を掛けないとか、ルールを守れとか。インドに行って、日本ではあまりにもすごいプレッシャーの中で生きてきたんだなというということに気づいたんですね。海外では僕は外国人なんですけど、素の僕でいられるんですよ。それがすごい居心地いいなと思って。

−−−−職業とか、地位とか、人間関係とかがない状態ですね。

たびコマ:自分を飾る必要もないし、煮詰まる必要もない。そう考えると日本って、どれだけ自分を偽らないと社会の中で生きられないのかっていうことに気付いたんですよね。

−−−−たびコマさんが旅行者だからソーシャルプレッシャーが少ないというわけではなくて、インドという国自体に、社会的な縛りみたいなものが少ないんですか?

たびコマ:そうだと思います。日本より、全然自由な国だと思う。ただ男女関係とか、そういうのはすごく厳しいんでしょうけど。僕なんかは、外国人でちょっと行っただけだから、そんなに深いところまではわからない。それでも、すごい居心地がいいなと思った。そこから、旅にはまっていきましたね。

●やりたいことをやっていくと、いつ死んでもいいと思えるようになる

−−−−海外にいると、宿に1日中いたりってこともあるわけですか?

たびコマ:ありますあります。基本的に引きこもり体質なんで、宿にずっといたりすることもありますね。

−−−−行く前に、大体その先何カ月間かの予定を決めておくのか、それとも行った先でまた考えるのか、どちらなんですか?

たびコマ:決めていく場合もあるし、途中で大きく予定を変える場合もあるし。例えば、何となくのルートを考えて、飛行機が安いのがなかったら別のルートにしてみるとか。インド行った後にネパールでトレッキングしようと思ったけど、インドで疲れたんで、ネパールはただいるだけみたいな、そういうことはありますね。

−−−−かなり行きづらい所も、バイクに乗って行ったりしてましたよね?

たびコマ:インドのラダックですね。大変だったですけど、楽しかったですね。バイク借りて1カ月くらいラダックの中を走って。その前は、インドでバイクを買ったんですよ。1カ月くらい、北から南へインド走ってました。次も、ロシアでバイク調達できたらバイクで走りたいと思ってます。なんかね、やりたいと思ったことはすぐやっておかないともったいないっていう考え方なんですよ。だから、バイク旅行も機会があったらとかじゃなくて、もう次やろうかっていうイメージで。

−−−−機会があったら、じゃないわけですね?

たびコマ:そうなんです。やりたいと思ったら、やっとかないと駄目だと思ってて。そうやって生きてると、いつ死んでもいいって思えるようになったんですよ。やりたいと思っててやんない人生って、逆に、死にたくないって生にしがみつくものなんですよ。

−−−−まだ、やりたいことができていないわけですもんね?

たびコマ:そうなんですよ。やれてないから、まだ死にたくないっていう。逆に、やりたいと思ったことを次々行動に移してやっていくと、「ああ、もういつ死んでもいいかな」と思えるようになってくるんです。これはすごい不思議なことで。現代社会って、あまりにも自分がやりたいと思ってたことを行動に移しづらい社会なんじゃないのっていう。だから、コロナでこんなに騒いで、みんな死にたくないって一心じゃないですか。命に対する価値観が上がりすぎている。それは、自分がやりたいと思ったことを行動に移せていない結果なんですよね。

−−−−自分のやりたいことの価値は低くて、命の価値は高い。

たびコマ:そうそう、そうなんです。だから、心臓は動いてるけど、死んだように生きてるような。生きるとか、人生とか、生命とかって面白いですよね。逆説的っていうか。だから、みんなもっと楽しんでいろいろやればいいのに、って思うんだけど。そしたら「別にいつ死んでもいいや」って思うようになるんですよ。そこが、僕が最近やっとわかってきたことですね。だから僕なんか、今までだいぶ楽しんできたから、普通の人よりはいつ死んでもいいのかなって思いますね。

−−−−やりたいことをやっていない自覚があるっていうのは、どこかで我慢しているわけですよね。我慢したまま死ぬのは嫌ですね。

たびコマ:日本は、我慢の世界じゃないですか。自分のやりたいことをやっていたら、わがままとか、自己中とか言われてしまう。何が足かせになってるかっていうと、恐怖心なんですよ。乗り越えるときの恐怖心。それから面倒くさいとか、自分のライフスタイルを変えるのが嫌だとか。そういうのを乗り越えていけば、人間ってそう簡単には死なないんで。恐怖心と面倒くささとを、何とか克服していくっていうことなんじゃないですかね。

−−−−恐怖心というのは、予測ができないことに対する恐怖心?

たびコマ:そうですね。やりたいけど、なんか怖いっていう。

−−−−先回りしていろいろと考えて、こうなるだろうみたいな。それと違うこと、つまり予測していなかったことが起こるのがすごく怖い。

たびコマ:そのときはそのときで考えればいいんじゃないのって思いますけどね。予測しすぎて、自らの行動を縛ってしまう。情報があり過ぎるのも問題ですよね。

−−−−情報って、頭で考える部分じゃないですか。頭で考える部分が多すぎて、頭でっかちになってくると、どんどん自分の直感とか感覚的なものが、信じられなくなってきますよね。そうすると、余計に情報に踊らされようになると思うんですよ。

たびコマ:動物的な直感力みたいなのって大事ですよね。

(インタビュー中編へ続く↓)
https://note.com/littlemanbooks/n/nabcad6a72983

立体書影

『旅のコマんドー[アジア編]』たびコマ著
1,400円(+税)/176ページ
ISBN978-4-910023-02-1 C0026
https://www.amazon.co.jp/dp/491002302X

〇プロフィール
たびコマ
海外生活9年間で、もはや旅が人生。
なるべくお金を節約し世界の隙間をふらふら生きる人。
読み手を選ぶ狂気の旅日記本「タミオー日記」の作者でもある。
空気の薄い場所が好き。

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http://www.tamioonews.com/
https://www.instagram.com/tamiooonews/
https://www.instagram.com/tabi.koma/

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LITTLE MAN BOOKSは、ふつうの人のために本を作って販売する、小さな出版プロジェクトです。 http://www.littlemanbooks.net

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