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『Regenerative(再生的)なアプローチ』:サステナブルな未来のための100のアイデア vol.6

サステナブルな未来のための100のアイデア(通称:サス100)』は、NPOグリーンズの植原正太郎が自学自習のために更新していくサステナビリティ探究マガジンです。

「Regenerative」というキーワード

Circular Initiatives & Partners代表の安居くんから「Regenerative(再生的)」という言葉を先日教えてもらった。循環型社会の実現が先進的に進むヨーロッパにおいて、とても重要なキーワードとして扱われているそうだ。

従来の「Sustainable(持続可能な)」なアプローチは不十分とし「気候変動や環境破壊が急速に進む現代において、地球環境や地域コミュニティを再生するような経済と社会のあり方」を目指す考え方のようだ。

少し前の記事にはなるが英紙「The Guardian」にて、英国シューマッハ協会の会長を務めていたハーバート・ジラルデ氏によってその考え方が記されている。

冒頭から「持続可能性は役に立たない」という挑発的なタイトルではあるが、内容は至極真っ当である。以下、記事中で興味深かった部分をいくつか紹介する。(ほぼGoogle翻訳)

25年間、「持続可能な開発」は世界の問題の解決策として支持されてきました。しかし、代わりに、私たちはこれまで以上に汚染、生物多様性の損失、気候変動を経験してきました。持続可能性の概念は、歴史上、他のいくつかの用語と同様に悪用されてきました。世界のひどく損害を受けた生態系と人間のコミュニティを維持するだけでなく、それらを再生することを考える時です。

ハーバート・ジラルデ氏は1992年にリオデジャネイロで開催された国連地球サミットで合意された「持続可能な開発(Sustanable Development)」という言葉に限界が来ていることを記事中で指摘している。

「将来の世代のニーズを満たしつつ、現在の世代のニーズも満足させるような開発」と定義された「持続可能な開発」という言葉は、リオ以降、大きな役割を果たした一方で、悪用され続けていると指摘している。

この用語は、多くの方向にほぼ自由に伸ばすことができる輪ゴムのようになっている。
過去25年間で、特に化石燃料の使用については「リップサービス」だけが支払われた。

「持続可能な開発」という言葉の下に継続している各国・各企業の炭素排出と環境破壊。まさに今、日本でも起きている「SDGsウォッシュ」と同様のことである。

ハーバート・ジラルデ氏は「再生的なアプローチ」をこのようにまとめている。

単に持続可能な開発ではなく、再生可能性(Regeneration)について考え始める必要があります。土壌、森林、水路の再生を支援するために私たちが長年行ってきたように、それらをさらに悪化した状態で維持するのではなく、具体的な対策を緊急で講じる必要があります。私たちには、再生可能エネルギーを主なエネルギー源とする知識と技術があります。そして、経済のグローバル化が支配的な力となったため、道端に落ちていた地域社会と経済を再生する必要があります。

では、具体的にどんなアプローチだと「Regenerative(再生的)」だと言えるのだろうか。いくつか思い当たる節のある事例を紹介したい。

ゴミを資源に変換する「The Waste Transformers」

Yahoo!ニュースで紹介されていたオランダ・アムステルダムのプロジェクト。「The Waste Transformers」という企業は、その名の通り「ゴミをその場で資源に変換してしまうマシーン」を提供している。

The Waste Transformersは、地元の事業者、たとえばホテルや大学、食品企業、農場、港、空港、病院、卸売業者、ショッピングモールなどが、現場に「Waste Transformers」を設置するだけで、ごみや食品ロスを資源に変換できるような仕組みを生み出しています。
ここでいう「資源」とは、グリーンエネルギーや、天然肥料、水などです。得られたエネルギーや肥料は販売することができ、それにより収入を得ることができます。

※画像・テキストは記事より引用

すでに10店舗以上のレストランや、2つの劇場、醸造所などから食品ロスを含むごみ(有機性廃棄物)を集め、資源として生まれ変わらせているそうだ。まさに「Regenerative(再生的)」だ。このプロジェクトは凄すぎるのでちゃんと調べたい。

破壊しつくされた森林を再生するサンボジャ・レスタリ「不朽の森」

書籍「レジリエンス(回復力)」の中で紹介されていたプロジェクトは、壮大な回復の物語だ。

パーム油の生産のために森林破壊が進むインドネシアの森林。オランウータンをはじめとした生物の居場所が失われるだけでなく、湿原の泥炭層に溜め込まれていた大量のCO2も大気中に放出される問題が続いている。そのせいで、インドネシアは中国、アメリカについで3番目に温室効果ガスの排出量が多い国になっているそうだ。

生物学者のウイリー・スミッツ博士は、ボルネオ東部の「サンボジャ村」で、完璧に破壊しつくされた不毛の地に、三重の混成森林を20平方キロメートルに渡って計画的に植樹し、森林を戻した。

一番外の環には燃えにくい樹木を。中間の環には熱帯の広葉樹とパイナップルやパパイアなど、オランウータンも人も食べられる食用樹木を。中心部は動物保護区とした。また混成林の中には「サトウヤシ」を植え、パーム油を精製するアブラヤシに変わる持続的なエネルギー採取も可能にし、新しい産業も築いた。

サンボジャ・レスタリは、森林の回復や動物保護だけではなく、生態系サービスからもたらされる人間社会の経済的メリットもデザインしている驚くべき再生プロジェクトだ。スミッツ博士の挑戦は、TEDトークがあるのでぜひご覧ください。

「Regenerative」という言葉は、真に「持続可能な社会」を実現するためとても重要な視点であるアプローチだと感じる。

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そんなわけで今回のサス100は「Regenerative(再生的)なアプローチ」をテーマに書いてみました。次回もお楽しみに!

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