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目に見えない世界に目を向けるという話

いきなりですが「土中環境」という本を読んだ方はいますか?個人的には「BEST OF BOOKS 2021」にすでにノミネートされています。

サステナビリティや自然環境について考えるとき、人はどうしても目に見えるものから考えてしまうものですが「土中環境」では文字通り「土の中の出来事」について深い洞察を届けてくれます。


山の中に入ると木々や生き物に目がいきます。しかし、それらの生命を支えているのは「土中の水や空気の流れ」だそうです。人の目に見えない土の中の水脈によって有機物や無機物が循環し、山から海までの生態系を健康に保っている。日本人は古来より体感的にその現象を理解しており、鎮守の森や、巨木信仰といった行いによって地域の生態系を保全してきました。

しかし今、日本の自然環境は「コンクリート」によって"補強"が行われています。「目に見える」水の流れへの対処として行われてきましたが、その灰色の人工物によって土中の水脈が途絶え、生態系の荒廃、そして土砂災害を日本中で引き起こしているそうです。

今回、greenz.jpの「キノマチ会議」連載でそんなテーマをド直球で扱った記事が公開されました。

大分県日田市中津江村で、鎌倉時代から林業を営んできた田島山業さん。とても長い歴史がありながら、革新的なチャレンジを続けている日本を代表する林業家です。

田島山業さんは1200ヘクタールにも及ぶ自社林を保有しているのですが、2020年7月の九州豪雨によって、土砂崩れが100箇所以上も発生し、とても大きな被害を受けてしまいました。

その被害の原因を究明するべく、土中環境と生態系の改善を30年続けられているスペシャリスト「大地の再生 結の杜づくり」の矢野智徳さんを現地にお招きしました。

そこで行われた内容については、是非記事をご覧いただければと思いますが、記事中から2つだけ矢野さんの印象的な言葉について引用します。

いま全国で起きているのは、大地の呼吸不全です。大地の血管である水脈が、溜池、U字溝などの水路、砂防ダム、大型ダム、コンクリート道などの人工物にふさがれて、土中の水と空気が循環しなくなって土壌が呼吸不全になる。それで泥水や洪水の問題が起きたり、生き物も弱り、木が枯れるなど生態系に異変が起きています。
僕は、環境学習とは「自然界は不足を前提に成り立っている」と知ることから始まると思っています。水も空気も足りないところに移動しようとする。循環とは、不足を調整するエネルギーが生み出す結果なんです。食料も経済も、十分に満たされることなんてあり得ない。すべての生き物は毎日必死になって不足を補うように生きている。足りなくて当たり前なんです。生態系の一員である限りこのリスクを受け入れるところから始めるしかない。きれいごとじゃないんです。

greenz.jp:今、大地が呼吸不全を起こしている。未曾有の被害を受けた林業会社が乗りだす、自然みずから蘇る力を生かした開発

写真:後藤史成さん

植原正太郎 NPO法人グリーンズ COO/事業統括理事
持続可能な社会づくりのヒントを発信するWEBマガジン「greenz.jp」を運営するNPOグリーンズで健やかな経営と事業づくりに励んでます。都会のど真ん中に畑をつくるURBAN FARMERS CLUBの理事もやってます。山で暮らしたいけど、海釣りもしたい一児の父です。サステナビティを学ぶスクール #サスカレ 運営中。

Twitterやってます。よかったらフォローしてね→ @little_shotaro

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