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きゅうかくうしお『地鎮パフォーマンス』辻󠄀本知彦、森山未來

2020年8月15日午前4時から無観客で公演を行い、その映像をYouTubeで無料公開した作品。制作プロセスもサイトで公開している。

ダンサー・振付家の辻󠄀本知彦氏と森山未來氏が立ち上げた「きゅうかくうしお」は、スタッフもメンバーとして制作に関わり、時には出演もする。

今回の作品『地鎮パフォーマンス』は、コロナ禍で劇場公演が思うようにできない中、山中に簡易な木製の「舞台」を設営し、野外で踊って、その映像を見せるというもの。

プロセスを言葉や動画で記録して公開していたり、クレジットで「開墾」や「育児」も入っていたりすることも、面白い。きゅうかくうしおを「観客」としているのも興味深い。

虫の音(セミとヒグラシ?)がこだまする中、たき火がパチパチとはぜ、静かな儀式のようなダンスが進行する。夏の終わりに見るのにふさわしいパフォーマンスだ。

冒頭、辻󠄀本氏と森山氏の身体がアップで映り、泥のようなものを体に塗り付ける。辺りは暗いし、顔もよくわからない。

虫の音が夏を感じさせ、暑さ、虫刺されを連想する。

ハーフパンツをはいて、鮮やかな色のひもかバンドのような衣装を身に着けている。しかしそれも泥にまみれている。木の枝を手に持ったり、ホオズキ(?)を身にまとっていたりし、動きも少し虫のようでもあり、人間を離れて別の生物か自然物のようになっているかのようだ。

2人の間に緊張関係が見られるが、戦いではなく、信頼できるかの探り合いのような動きをする。ゆっくりと移動し、目を見合わせ、足を踏み鳴らしたり、ドスンと倒れたり。

塩(?)の小山に2人で手をはわせ、その自分の指をなめる。全体的に、野生の色気のようなものを感じる。端正な顔もたくましい体もあまりよく見せずに、体全体から醸し出す動きと雰囲気から、色っぽさが放出される。

撮影者や音響担当、火をたく人など、スタッフもあえて映すシーンもある。手作り感や、同時にプロとしての仕事の巧みさが伝わってくる。

映像だが、ざわっとした違和感を覚えながらも心地いいような時間、感覚を共有できているような印象を持った。ずっと見ていたくなる作品で、あっという間に23分間ほどが終わっていた。

作品情報

■概要:きゅうかくうしお自らが開墾・建造した舞台で舞った、作り手・観客ともきゅうかくうしおの非公開パフォーマンスの映像を公開。
■公開日時:2020年9月18日(金)19:30 (無料公開・公開終了日未定)
■公開場所:YouTubeきゅうかくうしお公式チャンネル内「地鎮パフォーマンス」ページ 
■出演・企画制作・観客:きゅうかくうしお

【きゅうかくうしお】 中原楽(録音/監督)、辻󠄀本知彦(踊り子/原案)、松澤聰(撮影編集/脚色)
矢野純子(宣伝美術/検証)、石橋穂乃香(ほのちゃん/写真)
河内崇(舞台監督/施工)、吉枝康幸(照明/土木)、森山未來(踊り子/開墾)
藤谷香子(衣裳/新参)、村松薫(制作/育児)

▼制作過程


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