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女生徒②

おやすみなさい。
私は、王子さまのいないシンデレラ姫。
あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか? もう、ふたたびお目にかかりません。

『女生徒』太宰治

はじめてこの言葉を知った時は
「私は、シンデレラ姫」っていう女なんか嫌い。
自惚れるなよと思っていた。

それが、次に読む時には
「どこにいるか、ごぞんじですか?」の方が
目に止まった。
見つけてほしいような、見つけて欲しくないような
想いと言葉が裏腹な感情。

次は「王子さまのいないシンデレラ」
王子さまに出会って、シンデレラははじめて
救われる。その王子さまがどこかに行ってしまった
失恋をした女性の言葉に思えた。

そして今は「もうふたたびお目にかかりません。」
この強い意志と決意に胸が打たれる。

たった4文の言葉を読むだけなのに
見えるものがこんなにも違う。

言葉が教えてくれる景色とか、見えるものは
歳を重ねたら変わるんだ。

価値観。

成長するにつれて自分の価値観を持つ。
それでいい、どんな時でも心に寄り添う小説は
決まってそんなものだと思う。

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