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春の盗賊

あまり期待してお読みになると、私は困るのである。これは、そんなに面白い物語で無いかも知れない。

『春の盗賊』太宰治

物語は冒頭で決まる。

The night was young, and so was he.
But the night was sweet, and he was sour.

『幻の女』ウィリアム・アイリッシュ

「恋人よ我に帰れ」のもじりとされていて
冒頭の秀逸さという意味で最も有名な作品。

最初の一文に惹かれた小説は手に取るし
逆に魅力を覚えなければ別に買うことはしない。

幻の女みたいなものは、絶対に読みたくなる本で
あることは間違いないけれど
『春の盗賊』はどうだろう。

「そんなに面白い物語で無いかも知れない。」
ページを開いて最初に、作者からの言い訳。

「そんなに」と言われたら
どれどれ確かめてみようか。とカリギュラ効果が
発動してしまうわけで
人の心理ってやつをよくわかってる気がする。

結局、太宰は最初から引き込んでくる。
もう最初から最後まで虜にされて終わるんだ。
と、思った。

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