方舟 読書日記

方舟 夕木春央

あらすじ

極限状況での謎解きを楽しんだ読者に驚きの〈真相〉が襲いかかる。

友人と従兄と山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った家族と地下建築「方舟」で夜を過ごすことになった。翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれ、水が流入しはじめた。
いずれ「方舟」は水没する。そんな矢先に殺人が起こった。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。タイムリミットまでおよそ1週間。
生贄には、その犯人がなるべきだ。――犯人以外の全員が、そう思った。(amazon)

感想

 面白かった。あらすじの通りタイムリミットありのクローズド・サークルものである。面白いのが、犯人を見つけても犯人を犠牲にしないと脱出できないという点。犯人を見つけることは関節的にその人を殺すことになるのが怖いなと思った。
 犯人の目星自体はなんとなくついていたが、最後のオチは飛行機内で思わず「マジかよ」と呟いてしまった。最後の場面の様子を描写するのではなく、声だけで表現するのがおしゃれだった。
 また、全体的に殺人事件に着目されていて方舟が出来た理由だとか、登場人物の感情の機微などは意図的に省かれているようだった。ただ、記号的だった登場人物が犯人に死んでくれるように頼む瞬間だけ、人間の汚らしいエゴイズムを見せるのがめちゃめちゃ良かった。記号から人間に一瞬で変わった。あそこのシーンのおかげで翔太郎のこと大好きになった。
 あと、推理の仕方も消去法というか、可能性を潰していくホームズ方式で全員が納得できる推理を心掛けていて分かりやすくて読みやすかった。
 やっぱり売れているものは面白い。

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