言葉の裏側

「いつまでも過去のことに縛られて、
恨んだり憎んだりすることは、愚かだ。」
こんなことを言われたら、
私も含め、大概の人は
「は?何言ってんの?私の何がわかるの?
どれだけつらかったのか、知りもしないくせに。」
と思うでしょう。

実際にそう言われたとき、
体中の血液が沸騰し、逆流するような
気持ちになりました。
自分が受けてきた理不尽な扱いや、
傷つけられてきた心を、
何も知らずに正論ぶって言ってくるなんて
信じられませんでした。

それを言ってきたのは、末っ子でした。
自分の息子に、しかも大切に育てた末っ子に
そんな風に言われるなんて、
私のことをきっと、
蔑んでいるのだろうと思いました。

子供は育てたように育つ。と
聞いたことがあります。
思いやりのない発言をする人になってしまったのは
きっと私がそう育てたのでしょう。
がっくりしてしまいました。

この末っ子には、ADHDという発達障害が
あります。
ディスレクシアという読み書き障害も
あります。
小さい頃から、こうした方がいいか、
ああした方がいいか、と頭を悩ませながら
一生懸命育てました。

彼は小さい頃、自己肯定感が低く、
自信のない感じでしたが、
毎晩、彼の良い所を10個ずつ言って
眠りにつく、を繰り返したこともありました。
成長すると、自分自身で反省と
改善を考え、実践していました。
大変個性的で、言葉のチョイスは
まだまだ下手ですが、
本当に努力して、今は
システムエンジニアとして
大企業に勤めるまでになりました。

そこで、最初に言われた言葉について
ですが、
彼の本意は、あの言葉の中には
ありませんでした。
彼は私に、もう苦しんでほしくなかった、
ということでした。
過去に囚われて憎んだり恨んだりしている
私が、ひどく苦しんでいるように
見えたのだそうです。
お母さんには、楽しいことだけ考えて
生きていってほしかった。と
後にそう言ってくれました。

彼は物言いにやさしさが無いことが
あります。
そのままストレートに聞いたら、
ひどく傷つけられることもあります。
けれど、あの時のあの言葉は、
本当は私を思ってのことだった、と
知ったとき、
私は過去には囚われないように生きよう、
と思いました。

彼の不器用な言葉は
彼の最大の優しさだったのですね。
彼には、もう少し
相手の立場に立って発言するということを
伝えていかなくてはなりませんが、
私自身も、彼の言葉の真意を読み取れるように
まだまだ修行が必要だな、と思いました。


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