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words

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両手からこぼれ落ちた言葉
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#小説

なるように、な

 生まれた人間には国からひとつ座右の銘というものが与えられる。それは単純な言葉がほとんどだったが、言霊のようなもので、それに縛られて生きることになる人が多いため、ここ何年かで廃止しようという動きもあった。が、いわゆる老害の連中のせいでズルズルと続けられてきているのがこの制度だった。

 出生証明書や身分証明書とともに与えられる座右の銘。自分のものにはなんと書いてあるのかわからなかった。自国の言葉で

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Had a bad day.

Had a bad day.

 家に帰ると僕のもの以外は綺麗さっぱり何もなかった。正確には僕があげたものは持ってって、僕がもらったものや、元々僕のものはゴミ袋にまとめてゴミ置き場に捨ててあった。
 なんだそれ。図々しいにもほどがあるだろ。
 っていうか家財道具一式、また買い直しかよ。ここに来るときにひと通り揃えたのは僕だった。あいつは文字通りビタイチ金を出していない。あれから半年。全部持っていったのだ。泥棒じゃねえか。
 仕事

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かはたれ

 もう夏というには涼しくなりすぎた頃のことだ。
 日も暮れて、学校から帰ってきていた僕は宿題を早々に放り投げて興味もないテレビを見ていた。
 開け放した窓から風がときどき入ってきて、カーテンが顔に当たるのがじゃまだった。
 玄関で音がする。団地の金属製のドアを叩く音が廊下に響いて、風を通すために開けた隙間からすこし大きく聞こえた。
 そのうち僕の名前を呼ぶ声が聞こえて、そこには見慣れた顔があった。

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見たいのは夢じゃない/言えない言葉を突きつけられ/涙はいつか止まるもの

小説の公募に出しても、いつも一次にも引っかからないし、ウェブで公開しても閲覧数も少なくて、まして感想なんかついたこともない。傾向と対策ばかり考えて書いてもつまらないので、気分転換に好き勝手書くこともあるけれど、見直せば削除したくなるだけだった。
小説家になろうなんて、もう無理かな、と思うことがある。だが、書きかけのファイルの整理もできない。いつもそのままにしてしまう。
この前も書き上げたはいいけれ

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