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たまたま読んだ本17:「買うと一生バカを見る投資信託」投資初心者は知っておくべき。投信はタイミングにより損する。長期予測は誰にも分からない。

買うと一生バカを見る投資信託

来年度から新NISA制度が始まるので、投資信託を勧める本が多い中、同書は、投資を勧めない。
余裕のない人はすべきでない、ましてや退職金をもって銀行の窓口に何に投資すればよいかを聞くような人は絶対に投資などすべきでないと断言する。

政府は投資から資産形成という言葉を使っているが、損するイメージをなくすためだといい、次のように各制度を説明する。

iDeCoは、①積み立てたお金が60歳まで引き出せない。②投資商品なので、元本割れする可能性がある。③安くはない手数料がかかる。と指摘し、その税還付も手続きが忘れやすく、自動で税金が安くなるわけでないと難点を述べる。元本保証のない投資を手数料を払いながらするのは腑に落ち似合い制度だと切る。

投資信託の積み立てNISAや一般NISAは、値上がり益や配当金に税金がかからない制度だが、あくまでも値上がりを前提にした話で、値下がりした場合は、元本割れで損する上に税金まで払うことになりかねないと、この先、制度がどうなろうとも、私は、NISAをオススメしませんと力説する。

「ほったらかし投信積立」の「ドル・コスト平均法」を使った投資は、同じ投資商品を、常に一定の金額で、定期的に買い続けるもので、売る側にメリットのある投資、つまり金融機関にとって確実に手数料が入る収益商品だという。手数料より高い運用利回りでないと意味がない商品だと付け加える。

現在は世界の政治も経済も不安定で、新型コロナウイルスを筆頭に、円安、物価上昇、戦争、エネルギーや食料不足など、不安要因がたくさんある状況で、株価も為替も乱高下し、どちらに転んでも不安がつきまとう状況は、一般の個人投資家が手を出す相場環境ではないと注意喚起を促す。
この時代、「借金減らして、現金増やせ」に励もうと訴える。

投資信託には、購入時に「購入手数料」、保有時に「信託報酬」、売却時に「信託財産留保額」の3つの手数料がかかり、「分散・長期・プロに任せる」は投資信託の”まやかし”なのでやめなさい。長く持っていれば上がるという保証はどこにもないので、長期投資なんかやめなさいと、投資を勧めない理由を述べる。

日本の「運用のプロ」はサラリーマンが多く、10,20年先のことを考えて仕事をしているとは思えないので、分散、長期投資を信じながら、誰かに選んでもらった投資信託をじっと長い間持っているだけでお金が増えると思うのは、幻想に近いことであり、それを夢見るのはやめたはうがよいと覚醒を訴える。

この他、いろいろな投資商品もバッサリ切って捨てる。

もともと投資は世界の政治、経済、自然情況などにより相場の上下があり、上がれば得をし、下がれば損をする博打と同じである。
ただ、以前紹介した「21世紀の資本」にあるように、経済成長率より資本収益率の方が成長が早いという事実がある。世界はロシアのウクライナ侵攻を予測できていたのかどうか知らないが、今後20年30年先のことは誰にも予測できないのはその通りだ。でも過去の実績を見ると一時は大きく値下がりしても確実に値上がりしてきたわけである。資産が資産を増やしてきたのだが、もっとも今後もそうなるのかどうかは分からない。
同書は、損することもある投資信託に儲かると夢を見て期待を抱きすぎないように注意を促す警告の書ともいえるだろう。

もちろん投資をする人は、そんなこと先刻承知の上。自分なりの読みと、運にかけているわけだ。要は金融リテラシーを自分なりに高める努力が必要で、それをしない所謂素人は手を出さないほうがいいよと心配してくれているのだろう。

同書では、金融だけでなく、不動産や保険などにも言及、現代の家は資産どころか“お物”になる可能性が高い、家が欲しい人は築浅の中古物件が吉だと進言する。
そして、出世よりスキルアップを図り、在職中に教育訓練給付金などを利用してプロになり、個人で戦う武器を身に付ける方がベター。会社はスキルアップの場と考えようと提案する。

また、銀行口座を粉失や盗難のリスクのない無料で使える金庫として利用すればよいと言っている。問題は物価上昇があれば、確実に目減りすることだが。

投資信託はリスクのある商品、余裕の資金の範囲内で、覚悟して金融機関の言いなりでしないようにしましょう。


買うと一生バカを見る投資信託

出版社:宝島社 宝島社新書
発売日:2022/10/07
新 書:225ページ‏
定 価:990円(税込)

著者プロフィール

おぎわら・ひろこ 1954(昭和29)年、長野県生まれ。大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。以降、経済ジャーナリストとして活動。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説する第一人者として活躍。
著書に『10年後破綻する人、幸福な人』(新潮新書)、『生き返るマンション、死ぬマンション』『隠れ貧困』など多数。


トップ写真:ポーチュラカ

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