リテピ花写036 雄だけなのに甘く強い香り 日本のキンモクセイは結実しない?
秋になると、突然どこからともなく、すごく素敵な香りが、漂ってきます。
歩いていても、自転車でポタリングしていても、
ふわっと鼻腔をくすぐる香り。
遠く懐かしい感傷的な香りに、深まる秋を肌で感じます。
そう、キンモクセイ(金木犀)のオレンジ色の小さな花。
その花の集まりが、いい香りのもと。
あまりにこの香りが素敵なので、いろいろな芳香剤に使われています。
近所の子供たちは、トイレの匂い。と、そのいい香りを楽しんでいます。
トイレと関連付けされているようですね。
なんとも…。
キンモクセイの仲間に、ギンモクセイ・ウスギモクセイがあります。
中国ではモクセイといえば、ギンモクセイのことで。桂と表記します。
キンモクセイは丹桂と呼ばれます。丹は橙色のことです。
モクセイの原産地は中国南部の桂林地方。
あの水墨画のような絶景の桂林は、
モクセイの林、モクセイの多い地方だったのですね。
日本には江戸時代に渡来しました。
樹皮がサイ(犀)の皮膚のようで、
金色の花を咲かせるので金木犀と呼んだそうです。
ジンチョウゲ、クチナシと並ぶ「三香木」のひとつのキンモクセイ。
その香りは、花の橙色に含まれるカロテノイドが分解され、
甘い香りの精油成分イオノンができるためです。
濃い橙色ほど香りが強いのですね。
いい香りを発散してくれるキンモクセイなんですが、
実は日本には雄株しか存在せず、実がならないので、
挿し木などで増やしているそうです。
折角の甘い香りで誘惑しても雌株がないんですね。
どこかから、持ってくることはできないのでしょうか?
どんな実なのか、見たいですよね。
キンモクセイのいい香りも、短い期間で過ぎ去ってしまいます。
その香りを長く楽しもうと、花の砂糖漬けや葉のお茶、
ジャム(桂花醤)、楊貴妃が好んだという桂花陳酒
(キンモクセイの花を白ワインに漬け込んだお酒)、
キンモクセイの花を乾燥させたお茶の桂花茶が楽しまれてきました。
現代でも、香水やアロマウォーターとエコ加湿器で香りも楽しんだり、
シロップ漬け、キャンドル、モイストポプリを
作ったりしているようですね。
ところで、キンモクセイの花は、胃炎、低血圧症、
不眠症の薬効があるのですよ。
花を集めて陰干しにしたものが生薬モクセイで、
焼酎に入れて、胃の調子が悪いときに水か湯で薄めて飲むとよいそうです。
キンモクセイの甘い香りには、
雌株を恋しく思う切ない想いが込められているかもしれませんね。
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