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「哀れなるものたち」の僕なりの解釈

ヨルゴス・ランティモス監督最新作「哀れなるものたち」が生涯ベストレベルで好きな作品だったので、感想をつらつら綴ります。

【注意】
壮大なネタバレを含む、かつ物語の起承転結についての説明は省きます。とにかくぜひ劇場に足を運んで下さい。











CMでも指原さんが携わっていたり、「女性の自立」が根幹にあるということは意図されていると思います。こちらが引くほど性描写にフォーカスした映画ですし、物語が進むにつれてベラが「自分は周囲の男に搾取されていたのだ」と気付くストーリー展開からもそれは明白でしょう。

ですが僕自身の解釈は少し違っていました。どうしても自分のポジショントークにはなってしまいますが、世の中の常識と自分のズレを自覚して、その中で自分の真の生きる目的とは何かを考えるベラと「発達障害者」の姿が重なって仕方無かったのです。

物語序盤、体は立派な成人女性なのに、分別がついていないせいで無邪気な言動を繰り返したり、好奇心の赴くまま動くベラ。周囲は彼女をうまいこと利用してやろうと近付きますが、ベラは疑いもせず言うことをホイホイ聞いて付いて行きます。

ベラを見ているとどうしても、見た目は大人なのに、世間一般の常識やルールへの理解が不十分なために過剰に人を信じたり無邪気に行動するため子供のような言動を繰り返す、アスペルガー・ADHDの姿を重ねてしまいます。(実際は人生経験が浅いだけなので関係は無いのですが)。

ですがだからこそベラから繰り出される主張や独自の視点・考え方は固定観念に縛られたものではなく、見ているこちらも思わず舌を巻いてしまうものなのです。

そんなベラの中にも世界中を旅して多種多様な人々の生き方に触れるにつれ、ある種の「メタ視点」が育っていきます。普通なら今まで自分を良いように扱って来た周囲や社会に対して報復するかのように、攻撃性を身に付けて他者を非難する方向に行っても良いはず。

ですがベラは無駄に好戦的になる道は選ばず、「知性」を身につけることで自分や周囲を守る道を選びます。

そんな姿から僕自身が受け取ったのは「世間や社会とのズレに対して絶望することなく、知識を正しく身につけることでスマートに生きていくことこそ正しいのだ」というメッセージでした。

自分の理念や美学に反することにははっきりとNOを突き付け、また正しいリテラシーの元で世の中を見るために貪欲に知識を吸収していくベラの姿は浅薄な言い方ですがとても格好良く映り、自分もそんな風に生きれたらと思わされたのです。

こんな感じで「哀れなるものたち」の自分なりの解釈を書き綴って来ましたが、受け取り方は大多数の人と違えどこの映画が素晴らしかった事実は変わりません。早くも今年ベスト級の作品に出会えた事実が嬉しかったです。

また印象に残った映画があれば、感想をつらつら綴っていきます!

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