見出し画像

当事者の私にもあった、発達障害への偏見。仲間と出会うことで広がる風景 LITALICO研究所OPEN LAB#4 スカラーシップ生レポート

社会的マイノリティに関する「知」の共有と深化を目的とした、未来構想プログラム「LITALICO研究所OPEN LAB」

10月31日に第4回講義 わたしたちは何を「見て」いるのか – ユニークな身体と自己肯定 を開催しました。

以下では、同講義の「スカラーシップ生」によるレポートを掲載します。

OPEN LABスカラーシップ生とは
・障害や病気、経済的な困難さがあり、参加費のお支払いが難しい方
・本講義に対する学びの意欲が高く、明確な目的を持って参加できる方
を対象にした、公募・選抜制での参加枠による受講生です。スカラーシップ生は、同講義に無料で参加(遠方の場合は交通費を一定額まで支援)、講義終了後に「受講レポート」を執筆します。

====

当事者の私にもあった、発達障害への偏見。仲間と出会うことで広がる風景

私は、3週間前に発達障害の診断を受けました。そこで、障害についてもっと深く考え、自分自身の障害に対する見方や考え方を柔らかくしようと思い、今回のセミナーへの参加を希望しました。

実際に聴講させていただき、発達障害の当事者である自分に引き付けて、考えたことや感じたことを、以下にレポートさせていただきます。

最初に、ユニークフェイスの石井さんが、「差別があるからこの活動をしているんだ」とおっしゃっていたのが印象的でした。私は、自分が発達障害とわかってすぐに、友人知人や学校の先生、ハローワークや福祉施設の支援員の方々などに、そのことを伝えました。基本的には障害をオープンにして生きていきたいと考えているため、今も就職活動をしながら、行く先々で発達障害があることを伝えています。

しかし、他人に伝えるとき、「なんでこんなこと言わなきゃいけないんだろう…」と、いつもほんの少し悲しい気持ちになります。それにも拘わらず「誰だって得手不得手があるんだから、気にしすぎだよ」と態度を閉ざされてしまったり、「要はこういうことでしょ」とその人の知識の中でバイアスをかけられてしまったりすると、さらに悲しい気持ちになります。そして、それ以上、相手に説明しようという気持ちもなくなってしまいます。

本当は、ここでもう少しうまくコミュニケーションが取れたら、お互いに理解しあえるのかもしれないと思いつつも、自分自身が発達障害であることと、それを持って社会に出ていくことに対して、まだ慣れていません。差別、とまで言わなくても、相手から理解されなかったときに、自分の中でうまく折り合いをつけるのが下手だなぁと思います。

私自身、発達障害をオープンにして数週間ではありますが、発達障害についての社会的な理解はまだまだこれからなんだな、と感じています。それは、当事者である自分にも同じことが言えます。問診や検査を受ける前に、発達障害についての解説書や当事者ブログを読んで、自分なりに勉強したつもりでしたが、実際に自身の発達障害をオープンにして他者と関わる中で、固定概念は覆され、もはや定義することなんかできないと思いました。

つまり、他人からの差別と、自分の中にある障害への偏見の両方に、常にさらされているような状態になっています。そのため、他人からの差別についても、悲しみはするものの、あまり責められたもんじゃないな、という結論に至ります。

石井さんが「(自分たちの障害が)個人的な問題と思われていて、社会問題として認識されていなかった」というようなことを発言されていました。これにも、とても共感しました。

発達障害はいろいろな社会問題を引き起こす要因になっていると思います。自分自身の人生を振り返ると、不登校や精神疾患、貧困(ワーキングプア)がそれに当たります。これらの問題を、今までは個人的な問題としてとらえていたため、一人で悩み、自分を責めたり、なんとなく過去を隠したりしてきました。

しかし、意外と障害をオープンにしてみると、同じような障害で悩んでいる人が思ったよりも多くいることがわかってきました。これらの問題に自分ひとりで立ち向かうのは、無理があると感じています。自分が福祉支援を受けるなんて!?と思っていましたが、実際に相談してみると、なるほどと納得することや、安心感を得られることが多いからです。

同時に、その社会問題に対して、当事者である自分自身がどのように関わっていくかも重要だと思っています。当事者だからこそわかること、できることがあるとすれば、まずは自分の気持ちを他者と分かち合うこと。それも当事者同士や福祉関係者などの理解ある人だけでなく、アンチ発達障害(?)と思えるような人たちとも、あきらめずに関わっていきたいと思います(たとえ分かり合えなくても、関わり続けること)。

また石井さんのおっしゃっていた障害者の孤独、「『五体満足なんだから』と言われてしまう」「固有の悩みが理解されない」という点にも共感しました。私も、発達障害があるものの、身体は五体満足なうえに、目に見える障害ではないので、やはり周りからは理解されにくいようで、とかく、本人や医療関係者が大げさに言っていると思われがちです。しかし、これも発達障害に限らず、障害者に共通する悩みなんだなとわかったことで、悩んでいるのは自分(または発達障害者)だけではないと思えて、気がラクになりました。

藤岡さんのプレゼンの中で、「(私にとって吃音とは)自分について、生きることについて深く考えるきっかけになった」とありました。実際に藤岡さんのヒストリーを聞きながら、とても苦労されながらも、前を向いて、自分らしい生き方を模索されてきたのだな、ということを感じました。

私はまだそこまでの自己理解と社会適応はできていないのですが、発達障害とわかったことで、自分の弱さをようやく受け入れることができたので、ここからが本当のスタートという感じがしています。もっと早く知りたかったという思いもありますが、今それがわかってよかった!という気持ちのほうが強いです。

また、このことを通して、様々な福祉関係や医療関係の方に出会い、同じ障害を持った仲間に出会い、発達障害について話すことで身近な人たちとの関係がさらに深まるなど、人生が今までよりも色濃くなったような気もします。

また、伊藤さんのプレゼンの中で、障害を持ったことで、人の痛みに敏感になったというようなお話があったかと思います。そのことも、とても共感しました。人生にはさまざまな痛みや困難が訪れ、それらも一種の障害と言えます。その意味では、自分自身の追っている肉体的・精神的な障害という痛み(弱み?)を通して、他者の痛みや弱みに共感したり、わかり合えたりするようになるのなら、障害の定義は拡張されて、それは強味にすらなると感じました。

最近、ある知人に発達障害を打ち明けたとき、「人は器用で賢いから幸せで充実した人生を歩めるわけではない」、と言われました。むしろ、人生に起こる様々な障害(広い意味での障害)を受け入れて、歩んでいったとき、自分が思う幸せとか理想的な人生とか以上の、新しい希望が見えてくるように思いました。

石井さんと藤岡さんのプレゼンから共通して感じたのは、お二人とも自分なりの「ありのまま」の姿を見出してこられたのだな、ということです。

それも、簡単に見つけたものではなく、試行錯誤を経て、たくさん悩み、他者を求めて外に出ていき、自分と向き合い、今があるということ。そのことは私にとって、とても励みになりました。

障害者と一口に言っても、それぞれのストーリーがあり、性格も価値観も異なり、また環境に左右される部分もあったりすることがわかりました。反対に、障害者に共通する悩みもあり、自分自身の障害に対する偏見がひとつはがされた感じがしました。

何より、私を悩ませていたものは、私自身の障害や障害者に対する偏見だったのかもしれません。もし、私が発達障害であることを知らずにいたら、自分の悩みや弱さや過去を誰にも打ち明けられずに、周囲に助けももとめずに、社会にいながら社会から孤立して歩んでいたかもしれません。そのこと自体を責められることもありました(なぜいつも孤独を選ぶのか、と)。

しかし、今回のセミナーや、ほかの場所で出会う当事者の人たちとの交流などを経て、障害や障害者に対する見方や考え方がだいぶシャッフルされて、こねられて、固まりようがないくらいに動き続けています。

発達障害や障害について考えることは、今は私にとって、一番の関心事です。ときどき周囲から理解されなくてどん底に落ちたような気持ちになることがあっても、仲間がいると思えばすぐに立ち直れます。不安よりも、未来への希望と新しい世界が開かれるのではないかという期待があります。世の中はこんなに厳しくも、やさしく、新しい出会いに満ちていると知って、生きることが本当に楽しいです。

このセミナーは私にとって、とても有意義な時間でした。ありがとうございます!

私は話をすぐに理解するのが不得意なのですが、司会の鈴木さんの要約がわかりやすく、とても助かりました。また機会がありましたら、参加させていただけましたら、うれしいです。

よろしくお願いいたします。


-----------------------------------------------------------------------------
LITALICO研究所OPEN LAB#4 スカラーシップ生
山本悠乃(やまもと ゆの)

画像1

プロフィール:
・埼玉県生まれ、東京の下町育ち
・2019年10月 発達障害の診断を受ける(自閉傾向、不注意型ADHD傾向)。
・中学時代の不登校、学生時代にアルバイトを転々とした経験などを経て、発達障害がわかり、ほっとしています。
・現在、一般企業の障害者枠での就業を目指して、就職活動中。
・桐朋学園芸術短期大学 芸術科ステージ・クリエイト専攻 卒業
・多摩美術大学 美術学部芸術学科 卒業(3年次編入)

-----------------------------------------------------------------------------

LITALICO研究所OPEN LAB


直近の講義はこちら。

1/28(火) 第7回「コミュニティは誰を救うのか – 関係の網の目から希望を紡ぐ」
ゲストは、小澤いぶきさん(認定NPO法人PIECES代表)、北川雄史さん
(社会福祉法人いぶき福祉会専務理事)、森川すいめいさん(精神科医)です。

お申込み受付中です!チケット販売サイトPeatixよりチケットをお求めください。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?