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Hip Hopの4大要素〜DJ編〜

 昨今のフリースタイルラップバトルの流行により老若男女にHip Hopの「一部」が広く認知され始めているが、Hip Hopは決して音楽の一ジャンルではない。MC(ラップ)、DJ、ブレイクダンス、グラフィティの4大要素から構成される「文化・芸術的要素の総称」なのである。今回も、KRS-ONE著書の「Gospel of Hip Hop」に基づき「DJ」を解説する。

 DJとはDisc Jockeyの略であり、①ラジオなどのパーソナリティーと、②クラブやディスコ等で選曲し、ターンテーブルと呼ばれるレコードを再生する音響機器を用いて曲を流すアーティストに大きく二分される。Hip HopにおけるDJは主に②を指すため、以下②に焦点を当てる。

 上述したように、クラブや野外イベント等で曲をかけるDJはお馴染みだろう。

<クラブでのDJ / J.Rocc>

 しかし、Hip HopにおけるDJの役割はそれだけにとどまらない。Hip HopにおけるDJは、音楽制作者として様々なアーティストの曲と曲を繋げるミックス音源の制作(ミックステープ/CD)、(主に)ラップ音楽のビート制作(プロデューサー業)と多岐に渡る。

<プロデューサーとしてのDJ / DJ Premier※2>

 そしてスクラッチと呼ばれる、レコードを前後させ同じ部分を反復再生させる行為で、リズムを刻むなどのパフォーマンスを主に行うターンテーブリスト(Turntablist)に部類されるDJも存在する(後述する)。

 Hip Hopの4大要素においてとりわけラップが一番人気で注目を集めている訳だが、Hip Hop史におけるDJの役割、特にHip Hop音楽の生みの親と呼ばれるDJ Kool Harkの存在は欠かせない。

 彼の出生地であるジャマイカからニューヨークへの移住の流れは割愛させて頂くが、DJ Kool Harkとは、Hip Hop音楽の元祖とも呼べるブレイクビーツ(Break Beats)を発明したHip Hop音楽のパイオニアである。ブレイクビーツとは、ファンクなどのドラムパーカッション部分(ドラムブレイク)を2枚のレコードを用いてループさせたものである。字面ではわかりづらいので以下動画を参照して頂きたい。

<ブレイクビーツの説明及びフリースタイル / Dev Large※3>

 動画中でも言及されていた「DJが餅をついてMCが手でかき回す」という例えは面白い表現であり、実に言い得ている。Dev Largeも動画中で述べていたが、元々Hip Hopのイベントやパーティーの主役はDJであり、MCはそのパーティーの盛り上げ役だったのである。

 そんなDJのもう一つの重要な種類がターンテーブリスト(Turntablist)である。上述したようにターンテーブリストとは、スクラッチと呼ばれるレコードを前後させ同じ部分を反復再生させる行為で、リズムを刻むなどのパフォーマンスを主に行うDJのことである。また、ターンテーブリストはスクラッチだけでなく、2枚の同じレコードの同じ音を左右交互に再生してループさせるビート・ジャグリング(Beat Juggling)や、手以外の体の一部(口など)でクロス・フェーダー※4を操る高度な技術を多用する。

<ターンテーブリスト / Roc Raida※5>

 以上のように、一口にDJといっても、その活動は多岐にわたり、その一つ一つに「」があるのである。

【同記事はアメブロに投稿した記事の再投稿である。】

https://ameblo.jp/lit-hiphop/entry-12435975230.html

※2:DJ Premierとは、80年代後半から現在に到るまで活躍しているDJであり、DJの役割をプロデュース業まで広げたパイオニアとして著名。DJとしても有名だが、プロデュース業での敏腕ぶりが広く認知されており、彼が組んでいたHip HopデュオのGang Starrをはじめ、Nas、Jay-Z、故Notorious B.I.G.など第一線のアーティストをプロデュースしてきている。

※3:Dev Largeとは、日本のHip Hopシーン創成期を支えた伝説的ラップグループBuddha BrandのMC・リーダーであり、日本のHip Hopシーンにおける金字塔である。2015年に45歳の若さで病により他界した(ご冥福をお祈りします)。

※4:クロス・フェーダーとは、クロスフェード(2つの音の片方をフェードアウトし、同時に他方をフェードインすること)を行う為のフェーダー。

※5:Roc Raidaとは、90年代初頭から2000年代にかけ活躍したDJ / Turntablistであり、the X-EcutionersというTurntablist集団の元メンバー。2009年に格闘技の稽古中に心肺停止となり、手術後の合併症により他界した(ご冥福をお祈りします)。

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