Hip Hopの4大要素プラス5〜Human Beatbox編〜
冒頭に紹介した動画は、日本人ビートボクサーのアフラ(Afra)の存在が一気に日本中に知れ渡ったきっかけとなったコピー機のCMである。人間離れした神業で茶の間に衝撃を与えたこのCMを覚えている方も多いであろう。
説明は不要かと思うが、動画で行われた行為はビートボックス([Human]Beatbox)と呼ばれ、体の様々な部位(特に口、喉、手など)を用いて律動的な音や言葉を生み出す行為である。
日本ではヴォイスパーカッション※1として広く認知されているが、この行為がHip Hopコミュニティーではビートボックスと呼称され、Hip Hopの一要素として捉えられている。(KRS-Oneの著書『Gospel of Hip Hop』に基づく)
ヴォイスパーカッションとビートボックスの明確な違いを明示した文献はないようだが、インドのボルと呼ばれる、音節と手拍子でリズムを刻む伝統的演奏方法が存在することや、古代の人類が何万年も前からヴォイスパーカッション的な行為をやっていたことを類推すると、ヴォイスパーカッションという上位概念に、ビートボックスというHip Hopコミュニティーでの演奏方法が含まれるというニュアンスであろう。
<ボル>
いずれにせよ、ビートボックスはHip Hopにおいて必要不可欠な要素であり、フリースタイル・ラップを行う際などにはとりわけ欠かせないものである。即興のラップに対し、即興でラップを乗せるビートを刻み、「フリースタイル」の空間が醸成されるのである。
<Eminemフリースタイル / 映画『8mile』>
ビートボックスがHip Hopコミュニティーで誕生し、発展を遂げた歴史において、パイオニアや功労者は星の数ほどいるが、敢えて名を挙げるのであれば、ダグEフレッシュ(Doug E. Fresh)、ラゼール(Rahzel)、スクラッチ(Scratch)の3名は欠かせないであろう。
<La Di Da Di / Slick Rick & Doug E. Fresh>
この曲はスリック・リック(Slick Rick)※2というラップ・アーティストがラップをし、ダグEフレッシュがビートボックスを担当した楽曲であり、この曲がヒットしたことにより両者がHip Hop界のスターダムを駆け上がり、ビートボックスが世間一般に認知されるきっかけとなった。
そして、ビートボックスの発展において言及しなければならないもう2名は、ザ・ルーツ(The Roots)※3というHip Hopバンド・グループのラゼールとスクラッチである。
上述したダグEフレッシュや『8 Mile』のフリースタイル・シーンの例では、ビートボックス=ドラム音であるのに対し、ラゼールやスクラッチはロボット音や機械音、音の逆再生など、ドラム音だけのビートボックスを数段上のレベルまで昇華させた人物なのである。
<ラゼール>
<スクラッチ>
今日では、Youtuberヒカキンの人気により、ビートボックスが日本の世間でも身近なものとして捉えられており、ヒカキンに憧れビートボックスを始める子どもも少なくない。
Hip Hopの広がり・浸透をひしひしと感じる今日この頃である。
【同記事はアメブロに投稿した記事の再投稿である】
(現在アメブロからnoteへ移動中のため、過去のブログを再掲載しています)
※1:ヴォイスパーカッションとは日本名であり、英語ではヴォーカルパーカッション(Vocal Percussion)と呼称される(本稿ではヴォイスパーカッションと明記する)。日本では「ハモネプ」というテレビ番組でヴォイスパーカッションが認知されるきっかけとなった。
※2:この楽曲がリリースされた当初はMCリッキーD(MC Ricky D)と名乗っていた。さらに、この曲中に、坂本九の「上を向いて歩こう」の英語版(Sukiyaki)が歌われていることも特徴的であり、日本人にとっても馴染み深い。
※3:ルーツはHip Hop界において非常に珍しいバンドという形態を成しており、メインMCであるブラック・ソウト(Black Thought)は自分たちの創り出す音楽を「本物のHip Hopジャズ(Organic Hip Hop Jazz)」と呼称しているように、彼らの楽曲は東海岸Hip Hopサウンドにジャズの要素が色濃いという点が特徴的である。なお、ラゼールとスクラッチは既にメンバーからは脱退しており、バンド・メンバーの入れ替わりも激しいため、メンバーについては割愛させて頂く。
<Next Movement / The Roots>
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