色紙の真意 #ショートショート7
「4年生から隣の市の学校に転校することになるのよ」
母さんの言葉が冬休み明けの学校帰りに俺に伝えられた。
まだ休み気分が抜けていない頭に、予想外の告知が舞い込んできた。
今までの転校生や転校生を知っているけど、それは自分には関係ないことだと思っていた。
新しい学校で何が待っているのか、俺の中には何の感情も湧いてこなかった。
その後すぐに学校の先生たちや友達の親たちにも、母さんから転校の話が伝えられた。
友達には俺自身からそのことを伝えた。
友達たちは寂しい気持ちを隠さずに声をかけてくれた。
その声に応えるように、俺も少しだけ寂しさを感じ始めた。
しかし、転校の日まで、気にせず友達と外で遊び、楽しい日々を送っていた。
春休みには友達たちがお別れパーティーを開いてくれた。
その日は母さんも口うるさくならず、みんなで思いっきりゲームを楽しんだり、お菓子を食べたりした。
その中で、友達たちから俺へのメッセージが書かれた色紙をもらった。
「楽しかったよ!ありがとう」
「寂しいけど、新しい学校でも遊ぼうね」
「新しい友達もできるよ!」
など、別れを惜しむ言葉がたくさんあって、俺は友達たちにとって特別な存在だったことを感じた。
ただ、その中に「新しい学校でも友だちに優しくしてね、コウタより」というメッセージがあった。
コウタは俺と仲が良く、お互いの家に遊びに行ったり、母さん同士も仲良くランチをしたりする友達だった。
コウタは頭が良く、パソコンに詳しく、パソコンゲームを一緒に楽しんだりもしていた。
俺はコウタを親友と思っていて、お互いにそう感じていると思っていた。
お別れパーティーにはコウタも参加していたが、他の友達がいる中で、そのメッセージについて何も言えず、俺は転校してしまった。
新しい学校でもツレができ、そのツレたちと同じ中学や高校に進学し、楽しい高校生活を送っていた。
成績はあまり良くなく、クラスメイトの大半は俺を避けているような雰囲気で、その視線が時折うっとうしい感じがした。
でも、ツレたちと馬鹿やってるだけで楽しかった。
ある日、移動教室での授業がうざったく感じ、遅れて行こうと階段を降りている途中、突然背中を押されて階段から転げ落ちた。
大きな音に驚いて担任が駆けつけ、病院に運ばれた。
検査の結果、右腕の骨を折ってしまった。
頭も軽く打っていたため、検査を受けるために一時的に入院することになった。
押した犯人の顔は見えなかったが、疑いのある人物がいすぎて、誰が犯人か特定できなかった。
数日後、担任と共にクラスメイトのタカシがお見舞いに来た。
タカシは涙ながらに「ごめんなさい」と言葉を口にした。
タカシは俺からいじめられ、暴力を振るわれることに我慢できず、俺を突き落としてしまったようだった。
「ふざけんなよ!腕折れてんだぞ」と俺は怒りを露わにしたが、タカシは涙を流しながらただ「ごめんなさい」と繰り返すだけだった。
担任と一緒に病室を後にした。
退院の日、母さんから友達からの手紙を預かったということで受け取った。
それは昔仲の良かったコウタからの手紙だった。なぜ彼からの手紙が来たのか、疑問に思いつつ開けた。
「久しぶり。親から怪我をして入院したと聞いて手紙を書きました。
クラスメイトから階段から突き落とされたと聞き、昔の君から変わってしまったと感じてショックを受けたのが正直です。
正直、昔から自己中で自分が世界の中心だと思っているような節は感じていました。
小学生の時はそんな君に憧れを持っていたし、友達として遊んでいるのは楽しかった。
でも時々友人たちにも強く当たっている姿を見ていると、君は将来良くない方向に言ってしまうのではないかと不安に思っていました。
だからお別れのメッセージに変わってほしい願いを込めて友達に優しくしてほしいというようなことを書いたのです。
寂しい気持ちを書こうかと思ったのですが、君には良い人になって大人になってからでもまた会いたいと思っていたので、そのようなメッセージを書きました。
君は転校先ではより自己中になってしまい、こうして怪我をするようなことになってしまって残念です。お大事に。」
手紙を読み終えると、俺の目から涙がこぼれた。親友を失ってしまったことに気づいた瞬間だった。
#ショートショート
#短編小説
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