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冬のリモートワーク #ショートショート3

働き方が大きく変わり、一緒に住んでいる彼氏もリモートワークで家にいることが多くなった。
出社していた時には見られなかった、会議でハキハキと話をしたり、集中してパソコンのキーボードに打ち込む姿に惚れ惚れして誇らしくなる。

基本的に私は一日中家にいて、天気の良い週末にはたまにベランダで日光浴をする。
そんな何気ない毎日で一人暮らしの彼の家にいることが幸せだった。
寒い冬の時期にはお風呂上がりには体を抱き合い、お互いの体を温め合っていた。

以前までの彼は夜遅くに飲んで帰ってくるも頻繁にあり、心配しながら彼の帰りを待っていることもしばしばあった。
そんな私の心配をよそに飲み会から帰った彼は、お風呂にも入らずベッドに飛び込んで寝るのだった。
そんな時は私は寒空の中帰った彼の体を温めるように一緒に寝ていた。

リモートワークのおかげで本当に彼氏と一緒にいる時間が増えたが、それが故に彼氏に嫉妬する出来事に遭遇してしまった。

ふと見ると、彼氏がパソコンの画面上に写っている女性と楽しそうに話していたのだった。
それは今流行りのリモート婚活というもののようだ。
いつもと違いおしゃれなジャケットを羽織り、私をベッドにほっぽり楽しく談笑する彼氏。
その時から嫌な予感を感じ始めていた。

それから1年が経った。
彼氏は家を出ていくことにしたらしい。
あの時パソコンで話をしていた女性と付き合い、一緒に住むらしい。
私もできればついていきたかったが、彼氏から別れを告げられた。

私は悲しい気持ちでいっぱいだった。
彼の匂いが染みついた私は捨てられた。
でも、それだけ大事に扱われていたということと前向きに考える。
悲しいけど、こういう運命なのだ。
私と彼は体を重ねることはできても、心を重ねることができない。
また次の彼氏を探して街を彷徨うのだった。



私の名前はパーカー。
グレー色のモコモコのフード付きパーカー。
冬に体を温めるために作られて、家の中から出ることはほとんどない。
大切に扱ってもらえると、着ている人への情が湧くこともある。

#ショートショート
#短編小説
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