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ベストと思った2022年に入手したレコードたち

思えば2022年もレコードは買い続けたので、折角なので5枚に絞って残しておきます。選盤の基準は「2022年に買ったレコード」です。発売年とか、CDで持ってたとか、そういうのは関係なく、純粋に2022年に買ったレコードから選びました。最終的に6枚になっちゃったけど、まあいいか。



Mount Maxwell / The People’s Forest
バンクーバーのDandelion Records & Emporiumで店主からお勧めされた本作は、「カナダのアーティストでアンビエントっぽいのを探している」と言ったら何枚か聴かせてくれて買ったうちの1枚です。このレコード屋さんはバンクーバーのスラム街の近くにあって、行くまでがリアルに治安悪くて結構怖かったんだけど、そんなスラム街近くの小さなレコード屋さんなのにお客さんも何人かいて、お店の方々もとてもフレンドリーでいいところだった。Music From Memoryの棚もあったし素晴らしいレコード屋さん認定で間違いない。出先でレコード屋さんに行くのは、その街に触れられるし、レコードも思い出にもなるから好き。肝心の本作は、ドローン的なアンビエントというよりは、ビートとピアノとダブの雰囲気で、清潔な感じがとてもいいです。ビート、ピアノ、ダブの組み合わせは2022年の自分が求めていたもので、そういえば藤原ヒロシ/Dub Conferenceも今年レコードで手に入れた。


Apichat Pakwan / Nam Ton Tad
こちらもダブで、タイに住んでた頃からずっと好きだったアーティストの12インチ。タイに詳しいひとなら「イサーンの音楽」っていえばいくつかイメージ湧くところなのだけど、彼らは古いモーラムの演奏をベースに(厳密にはモーラムは語りのこと)、エレクトロニカなダブを加えたそれを「イサーントロニカ」と呼んでおり、これがまさにイサーントロニカとしか言えない仕上がりで本当に最高。もともと民族楽器のひとつであるケーンの音階とか音色がとても好きで、ダブとの相性もとてもいい。日本の盆踊りもそうだけど、アジアの民族音楽とダブは相性がいい気がする。インドネシアのケチャとかもダブにしたら凄いことになりそう。聴いたことないけど。


Zakir Hussain / Making Music
ECMのレコードを細々と買い集めている。細く長く集めたいなと思っていて、そのためのルールとして、ネットで買わないことと日本盤を買わないことを自らに課している。そのルールを破ってしまった現在唯一のレコードが本作で、でも正直全く後悔はしていない。ECMはレコード屋さんではジャズコーナーで見かけるわけなのだけど、Zakir Hussainがインドのタブラ奏者なので(U-zhaanさんの師匠)ジャズなのか?ワールドなのか?しかもZから始まるんだけど?ということでレコード屋さんで探すときもどこを探していいかわからず(ジャズもワールドも、ザキールさんの他の作品も含めて見たことない)、ネットの力を借りたのでした。タブラの音はECM哲学との相性も抜群で、特に夜に聴くと落ち着きます。安心して聴いていられる程度の雨粒の音を部屋の中で聞いているような。


Durutti Column / The Return of The Durutti Column
2020年10月にタイから帰国して、その冬に聴いていたのがDurutti Columnだった。一時期、音楽のローカル性みたいなのが薄れたと感じた時期があって、その時はどの国でも同じような曲が流れていると思っていたのだけど、タイに住んで、やっぱりその土地でしか生まれない音とか、その土地に似合う音が確実にあると感じるようになった。それまで常夏の国にいたせいか、Durutti Columnのような音楽をタイでは全く聴かなかったけれど、久しぶりの日本の冬に、Sketch for Summerはとてもよく沁みた。他の作品もちょこちょこ集めてて、このファーストアルバムもとりあえず再発盤で買った。本作は高くてもオリジナルを買う価値があると思っていて、でもネットじゃなくてレコード屋さんで出会いたい。ザキールさんの作品と同様に、出会わなすぎてネットで買ってしまうのをずっと我慢している。ネットで買っちゃうと、まだ後悔しそうだから。


Alex G / God Save The Animals
2022年リリースのレコードのはず。新譜も追うようにしているのだけど、サブスクから入るせいか感性のせいか、何度も聴きたいとか消化したいと感じる作品が減る中で、本作はよく聴いた。サブスクでもダウンロードしたけど、そっちでは殆ど聴いてなくて、家で夜中に仕事しながら、あるいは仕事しているふりをしながらレコードで聴くことが殆どで、仕事しててもしてなくても、とにかく聴き終わって針をあげるころには静かな気持ちでその日を終わらせてくれた。サブスクのプレイリストでヒットチャートを流していると、殆どの曲は右から左に流れて終わるなか、本作は全曲通してアルバムとして聴く価値がある。逆に単曲だと地味だしヒットチャートにも出ないんじゃないかと思う(失礼)。


Utada Hikaru / Fantome
1日の終わりの少し前、職場から帰宅する最中に宇多田ヒカルをよく聴いていた。2022年に限らず、ここ何年もの間、特に繁忙期の帰路に聴きたい音楽は宇多田ヒカルが多かった。それはきっと彼女の曲が明るいものではなくて、暗くて繊細で、でも光や希望、覚悟みたいなものを感じるから。疲れて何も考えたくない頭と体を少しのあいだ癒してくれた。本作はそんな宇多田ヒカルの凄みが詰まっているように思う。怖さのベクトルが少し強くて、本当に疲弊しているときはうかつに聴けないアルバムでもあった。冒頭の「道」は自分の言葉で表すことなど到底できないし、表すとするなら「天才」としか言えない。本当にすごい。同世代の彼女が歳を経るごとに自分も歳をとり、自分はこれからどんな風に彼女の音楽と接していくのかと思ったりもする。ところで繁忙期の帰路には、宇多田ヒカルの他に浜崎あゆみもよく聴いていた。自分が高校生の頃くらいが絶頂期で、その頃は特に意識せずとも耳に入ってきちゃう感じだったけど、その頃に何かのインタビューで言っていた「消費されても構わない」という言葉が今でも記憶に残っている。そんなわけで浜崎あゆみの曲も繁忙期に合うのかもしれない。

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