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風呂と読書

夕食に満足したらすかさずお風呂の給湯スイッチを押す。サザンの真夏の果実を歌いながら皿洗いしていると、日本人お馴染みあの音でお風呂の完成を知らされる。すっぽんぽんの身体に読みかけの本を携え、1日で最も至福の時間が近づいている喜びを噛み締める。

ちょうどよい湯加減に自然と頬がゆるんだ。肩まで浸かるとあまりの気持ちよさに思わず声がでる。意識があっち側に行きそうになるのを必死に食い止め、本を持ち込んでいることを自分に言い聞かせた。

しおりを挟んだページを開き、しおりは最初のページに挟み込む。通常よりじっくりペースで読み進める。ページをめくるときにお風呂で湿った手が紙によく引っかかてくれる。誰にも、何にも邪魔されない贅沢な空間がここにある。

額から汗がにじみ出たら退散の時間だ。冷水シャワーを勢いよく浴びてしばし涼む。脳と身体の凝り固まった部分がすべて溶け出すのを感じる。

明日も良い1日になりそうだ。


「400字エッセイ」書いています。




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