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気がづいたら台所に居る

母はいつも台所に居た。もちろん、ずっと台所に居たわけではないけど、母が台所に居る様子をリビング側から見ていた視点がやけに記憶に残っている。母は何をするにも台所に居た。料理するだけではなく、小さいスツール椅子に座って読書し、食事し、歌っていた。そんな母を、いつも不思議そうに僕は眺めていた。

台所が独立した家に住み始めると、僕も母と同じように、いつも台所に居ることに気づく。台所でコーヒーを飲み、音楽を聴き、本を読む。家で行う営みがほとんど台所で完結している。どうしてずっと台所に居たいのか、よくわからない。台所に居る自分を、不思議そうに眺める自分がいる。

台所に居るときの感情を無理やり言葉にしようとすれば、「快適」「落ち着く」「安心感」の3つが出てくる。通常、刃物や火元が存在する場所で抱く感情ではないかもしれない。それでも、台所に居たくなる。そんな台所の不思議さを、今日も台所に居ながら考えている。


400字エッセイ書いています。

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