【洒落怖/名作選】礫ヶ沢の鬼の礫【中編(~30分)】
825 :本当にあった怖い名無し:2005/12/11(日) 12:26:10 ID:1rs1Db4i0
コソーリと埋め。
礫ヶ沢のつぶておにの話をしようと思う。
うちからそう離れてない山の中の小さな川なんだけど、そう言う名前のところがあるんだ。
その名前の由来というのが昔話からなんだけど、
その昔話に出てくる鬼の礫というのが変わった石で、
大きさはまちまちなんだけど鬼が握った後のような模様がついている。
で、確かにそれは石なんだけど、ぶつけられても痛くない。
多分粘土かなんかじゃなかろうかと思うんだけど、
握ってみると普通の石くらい硬いのよ。
で、その鬼の礫が礫ヶ沢を探すとたまーに見つかったりするんだ。
でも、それをうちに持ち帰ってはいけない、と言う決まりになっていて
「鬼の礫は向こう岸」といって川に投げ込まなければならないんだ。
その理由をばあちゃんに聞くと、昔話みたいに鬼がやってくるから、そう言うんだよな。
当然ほんとにー?とか言う訳なんだけど
その度にばあちゃんの子供の頃の話を聞かされる訳よ。
その話というのが、続く。
826 :本当にあった怖い名無し:2005/12/11(日) 12:26:55 ID:1rs1Db4i0
で、ばあちゃんの子供の頃の話というのが
つぶておにという、鬼ごっこみたいな遊びをしたときの話でさ、
簡単に言えば、鬼が石を持って鬼じゃないヤツにぶつける、
ぶつけられたらそいつが鬼になって石を持って追いかけるというもの。
ちょっと変わってるのは、鬼が使う石は鬼の礫で、
その石の交換は出来ない、だからぶつけそかなうと
それを探している間かくれんぼの様を呈してくるし、
ここからが大事なんだけど、遊び終わって帰るときは
その石を川に投げ込み「鬼の礫は向こう岸」
と叫ばなければならないと言うこと。
これは終わりの合図にもなっていたと思うんだけど
実はそれだけじゃないらしい。続く。
827 :本当にあった怖い名無し:2005/12/11(日) 12:28:17 ID:1rs1Db4i0
で、前置きが長くなったけどばあちゃんの子供の頃の話。
つぶておにで遊んでいたばあちゃんと近所の子供達なんだけど、
その日、ばあちゃんは家の都合で先に帰ったんだけど
その残りの子供達が遅くまで遊んでいたらしいのね。
で、日が暮れた後そいつ等は帰ってきたらしいんだけど
その晩、凄いことが起こったらしいんだ。
で、それは村のある家で、一家惨殺事件が起こったのよ。
爺、婆、お袋と包丁で滅多刺しにされた姿で翌朝発見されてさ、
あ、親父は出稼ぎ中でいなかったみたい、でイヤなことに
その死体は肝が食い荒らされていたらしい。
そんで、そこの子供の姿はなかったモンだから大騒ぎだったらしい。
せめて子供だけでも、と言うことだったんだろうね。続く。
828 :本当にあった怖い名無し:2005/12/11(日) 12:29:13 ID:1rs1Db4i0
ところがさ、それを聞いて青ざめたのが一緒に遊んでいた子供達で、
じつは大変なことをした、とばあちゃんにこっそり話した訳よ。
それはつぶておにの最後に鬼になったのが例の家の子供で
礫を探している間に、みんな帰っちゃったらしいのよ。
で、ここからはばあちゃんの推測なんだけど、
暗くなって誰もいない河原で石を見つけたヤツは、
そのまま石を持って泣き帰ったんじゃないか、そう思ったわけ。
ところが「鬼の礫は~」をしていないから鬼がついてきたんじゃ無かろうか、と。
子供心に心配になったばあちゃんは
村のお寺のお坊さんに相談に行ったんだって。
そしたら婆ちゃん、坊さんに怒られる怒られる。
なんか一生分怒られたかと思うくらい怒られたんだって。
今から思えばやったのは自分じゃないから理不尽この上ない
そう笑って話してくれたけど、とにかく凄い剣幕だったんだって。
で、坊さんは村の駐在さんと村長さんを呼んで何やら話し込んでたらしいんだけど
婆ちゃんは子供だから蚊帳の外。
その後、大人達がいろいろしている間に、子供が見つかったそうで、
婆ちゃんは心配になって見つかったヤツに会いに行ったら
縄でぐるぐる巻きにされて駐在さんに引きずられている
ヤツの表情は凄い面変わりしていてまるで獣のような表情だったんだって。
そして、そのとき婆ちゃんはしっかり見たんだそうだ。
子供の手に鬼の礫があるのともう一つ、子供の影に角が生えていたことを。
で、それ以来その事件は村の忌み事となって話題にはあがらないし、
つぶておにもしてはいけない遊びになってしまったと言うこと。
まあ、婆ちゃん達自体が怖くてもうする気はなかったみたいだから
あえて禁止するまでもなかったといってるけど。続く。
829 :本当にあった怖い名無し:2005/12/11(日) 12:30:04 ID:1rs1Db4i0
ところがね、実はここまでが前ふりだったりするんだけど、
今年の夏、うちの実家に大学の友達3人が遊びに来たんだ。
まあ、キャンプをするのに手頃な河原はないか、ってことで
礫ヶ沢を推薦したんだけどね。
それで、河原で2泊ほどして帰ったんだけど、そのときつぶておにの話をした訳よ。
そのとき一緒にいた友人をA,B,Cとすると、
オカルト好きAが早速やってみないか、そう言うんだけど
婆ちゃんの真剣な表情を見ている俺は断固拒否。
BとCはそう言った方面には全く興味がないから
いやがる奴がいるならあえてするまでもない、
と言うことでその場は終わりになったんだ。
で、夏休みも終わり大学が始まって秋口になると
気が付くとAを学校で見なくなったんだ。
おかしいなー、と思ってBやCとも話していたんだけど
そのときBが思いだしたように行ったんだ。
「そう言えば、やつ(A)先々週あたりお前の実家行くって言ってたぞ」
「?、なんで」
「なんでもオカルト研の連中に例の礫の話をしたら盛り上がったんだって」
それを聞いた俺はイヤな予感に包まれたんだ。
で、オカルト研の連中に話を聞いてみようと思ったんだが
奴らの活動場所が分からない。
すると、Cもイヤなことを言い出すんだ。
「そう言えば、俺の知り合いにオカ研がいるんだけどそいつも最近見ないな」
益々、イヤな予感が強くなる俺。
正直関わり合いになりたくなかったんだけど、
このままってのも気分が悪いので、とにかくAの家に行ってみよう、
そう言うことになったんだ。続く。
830 :本当にあった怖い名無し:2005/12/11(日) 12:31:57 ID:1rs1Db4i0
で、Aのアパートに行く途中、近くのコンビニに寄ったら偶然Aとバッタリあったんだ。
始め、何かやたら挙動不審な奴がいるな、と思ったら
それは酷くおびえたAだったんだ。
俺たちがAに声をかけると、Aは凄いおびえた表情で逃げようとしたが
俺の顔を見たとたん、Aは凄い勢いでまくし立てたんだ。
いや、正直もう何を言っているかも分からなかったんだけど
とにかく、凄い怯えようで、俺たちはAのアパートに連れ込まれたんだ。
で、Aの話を要約するとこんな感じ。
あの後、礫ヶ沢でつぶておにをオカルト研でやりに行ったらしい。
で、実際鬼の礫を見つけてつぶておにをやってみると
不思議なことに確かに石なのにいたくない。
その後、「鬼の礫~」をやらずに石を持って帰って調べてみよう、
そう言うことになって、石を持ち帰ったらしい。
ところがその帰り、夜の国道を走っているときに
異変が始まったらしい。続く。
831 :本当にあった怖い名無し:2005/12/11(日) 12:33:01 ID:1rs1Db4i0
礫ヶ沢に行ったオカルト研はAとCの知人、仮にDとしようか、
その他にEと3人で行ったらしい。
で、石を持ち帰ったのは教育学部の地学研究室のEと言うヤツ。
普段はやたらおしゃべりなのに、帰りの道中では殆ど口をきかない。
まあ、疲れているんだろうな、位に思い
3人は帰りにコンビニに寄り、飲み物なんかを補充していたら、
Eが飲み物の他にカッターなんかを買っている。
そのとき、おかしなヤツだな、程度しか思わなかったんだけど
コンビニを出るとき、Eの影に角が生えているようにAには見えたらしい。
ギョッとして見直すと、コンビニのガラスの影の具合でそう見えただけだったらしいが
何分、つぶておにの話を聞いた後だと神経質になっているんだ、
そう思い直して車に向かったとき、車からDの悲鳴が聞こえたらしい。
それはEがカッターでDに斬りつけたところだった。
Aは後ろからEを羽交い締めにしてどうしたんだ!と叫ぶと
Eの首がぐるっと回り(そう見えたらしい)獣のような目でイヤな笑いをしたそうだ。
次の瞬間Aは太ももをEのカッターで斬りつけられて、
その痛みでEを放してしまったそうだ。
Dはその間に車に乗り込み、ドアも閉めずにそのまま車で逃走。
Eは開きかけのドアに捕まり、車に引きずられていってしまったそうだ。
一人残されたAは恐怖に震えながらタクシーで家に帰ったそうだ。続く。
832 :本当にあった怖い名無し:2005/12/11(日) 12:34:12 ID:1rs1Db4i0
後日、Aは大学で連中のことを聞くと
その日Dの車は近くの陸橋で自爆事故、Dはそのときの怪我で入院中、
Eはその日以来姿を見せていないとのこと。
Aはその話を聞いて、次にEが来るのは自分のところじゃないか、
そう思ってアパートに閉じこもっていたらしい。
ことの顛末を聞いた俺は、実家に電話をかけて、村の寺の名前を聞き
番号案内で電話番号を聞いて寺の住職に電話をかけようとした。
その間、Aはベッドの上で毛布にくるまってふるえていたのだが
突然悲鳴を上げたんだ。
窓の外をみると、むちゃくちゃ汚れた男がベランダから部屋の中を覗いていたんだ。
目つきが尋常でなく、いやな笑い顔でぶつぶつ言っている
その常軌を逸した姿を見たとき、俺の背筋は冷たくなった。
男は手にした石でガラスを割ると、ゆっくりと部屋の中に入ってきた。
俺たちはしばし呆然としていたが、そこは男3人、
カッターを振り回す男相手に、椅子、ナベ、まな板などで立ち回り
何とかその男を取り押さえた時に、ドアの外から警官の声がしたんだ。
考えてみれば、こんな怪しい風体の男がベランダをよじ登ったりしてていれば
通報もされるわな、となぜか冷静に考えていた俺の脇では
Aが失神してしまったりしていた。続く。
833 :本当にあった怖い名無し:2005/12/11(日) 12:34:58 ID:1rs1Db4i0
その後、俺たちが捕まえた男は案の定Eで、
取り調べの結果、心神喪失状態でどうなるかは分からないとのこと。
Aは実家に帰って、その後のことは知らない。
寺の住職に電話をしたら、俺がこっぴどく叱られつ羽目になった。
後は任せてもう関わるな、と釘をさされた俺は
正直あんな大立ち回りを演じるのはいやなので住職の言葉通り
事件に関してはもう触れないようにしている。
たまにBとCで飲むときに少し話すくらいだ。
ただ、ひとつだけ気になっていることがあって
鬼の礫、その行方がどうなったか。
あのとき、Eを取り押さえたとき、部屋に鬼の礫が転がったはずだが
その後、警官がやってきたときには石の姿は見えなかった。
いや、警察が押収していれば、住職が何とかしているだろうけど
もし誰かが持っているのなら、今でもそう考えると背筋が寒くなる。
礫ヶ沢の鬼の礫には気をつけるように。
長文スマソ。
引用元:https://5ch.net/
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