恵美須町駅

筆:黒須葉一

2023年9月23日、通天閣の大規模リニューアルが終わり、点灯式が開かれた。
2年前には東京オリンピック、2年後には大阪・関西万博だというから、時間の流れは速いものだ。
その通天閣を臨むこの場所には駅があった。正確には規模を小さくして移転しただけではあるが。

2020年1月31日まで、ここには2線3面の立派な駅舎があった。

かつてあった恵美須町駅

木造の梁が昭和レトロ感を醸し出している。台風で損傷を受けた為、一部立入禁止になっている。

張り巡らされていた立ち入り禁止のロープ

夕暮れ時、出発を待つ折り返し電車。奥の乗務員詰所も非常に味がある。

夕景にしっくりと馴染むレトロな駅舎

大阪で唯一残る路面電車として、幾度となく廃線の危機を乗り越えてきた。
国内最古の電車である「モ161」が今でも現役で活躍する辺りは「もったいない精神」の大阪ならではと言ったところか。

とはいえ限界がある。旧恵美須町駅も台風で損傷を受け、再開発でキレイになった天王寺駅前と比べて利用者が少ない。天王寺よりも都心なのに勿体ない。本数も少ないから更に悪循環になる。

風の噂でこの駅舎が無くなると聞きつけて、初めて大阪へやってきた2004年頃から親しみがあったこの駅舎を見納めに来ることにした。この土地は更地にしてホテルになるのだとか(※当時)。
インバウンド、爆買いという言葉が出てきて、ホテルが足りず、民泊を解禁しようとして軋轢も生じていた頃である。
1月31日は大勢の客で落ち着いて撮影できない、しかも平日だから仕事でここまで来るのは難しかった。
ちなみに2月2日、貸し切り列車のイベントで聞いた話だと、会社の粋な計らいで、あの「モ161」がやってきたとか。それは見たかった!
駅に隣接していた喫茶店は「駅舎が移転後もしばらく営業する」といっていたので、残っていてほしいものである。

モ161 あびこ道車庫にて、約5万円で貸切が可能
線路上からの画角は、貸切イベントでの撮影であり許可を取ったもの
当時、駅舎に隣接していた喫茶店 YAMAMOTO COFFEE

2月2日、駅舎はすでに解体が始まっていた。

解体が始まり、あの風景を見ることはもうできない
約100m手前の新ホームから駅舎を臨む。

ありがとう、旧恵美須町駅舎。


あれから3年後。現在の場所を再訪すると、ホテルになっているかと思いきや、インドアテニスになっていた。世界的パンデミックもありホテル計画は頓挫したようですね。
隣接する喫茶店もいつの間にか無くなっていました。
えー、喫茶店まで無くなったら何も残らないじゃん。
古き良き「もったいない精神」は「モ161」だけになってしまったものの、沿線にはまだまだレトロな建物もあるので、時間のある時に記録を残していきたいものである。

筆:黒須葉一

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