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ユダヤ教のいま

みんなに嫌われる公民科の授業について、現役教員が授業実践を通じて考えたことを共有します。

高校公民科の倫理の授業で、宗教の単元がある。
世界宗教、一神教を学ぶ。はじめに取り上げるのが、ユダヤ教だ。日本に馴染みのない宗教、身近ではないから関心も低い。国際化により外国への関心がある生徒もいるが、宗教は話題にならない。倫理の授業は興味・関心を引き出すところから始まる。

イスラエル
ヘブライ語
ユダヤ人

関連するトピックを探して紹介する。教科書の内容から離れても、文化の違いやエピソードを授業で扱う。

聖地エルサレム
アメリカ大使館
中東戦争
ナチス

教科書の関連や世界史の学習内容を授業で取り上げるのは悪くない。遠い異国の話題への導入としては、生徒たちを前のめりにする力は弱い。

現代の情報、ニュースを活用するのがいい。

ユダヤ教徒は豚肉を食べない。

食事に関するユダヤ教徒の規定は異文化理解につながるので、よく紹介してきた。豚だけではなく、馬も食べない。牛肉や鶏肉は食べる。

牛と豚、何が違うの?
魚はいいの?
ヤギや羊、鴨は?
乳製品は?

生徒が抱く疑問を調べておいて話した。予備知識や雑学かもしれない。最終的には神との契約、信仰と服従など律法を守る意義や意味につながるように授業展開を組み立てる。

2017年01月23日の朝日新聞夕刊
2018年12月29日の読売新聞朝刊

テルアビブに日本の豚骨ラーメン店があり、ユダヤ人客で賑わっている。

ユダヤ教徒が豚骨ラーメンを食べるんだ。

常識的なタブーの紹介だけでは足りない。ユダヤ人に対するステレオタイプを与えかねない。ユダヤ教徒には、世俗派がいる。この事実を授業で取り上げる必要がある。世俗派のユダヤ教徒の中には豚肉を食べる人がいる。パレスチナから世界に離散したユダヤ人の中には、その国の風習に馴染もうと、教義の捉え方を変えた人もいた。

イスラエルでも、人口に占める世俗派の割合は大きい。一方で、超正統派と呼ばれる立法の厳守を実践しているユダヤ人もいる。超正統派はイスラエルの人口の12%を占める。

倫理の授業では、安息日について必ず取り上げる。安息日についてのイエスの捉え方は、キリスト教を理解するためのポイントの1つである。

ユダヤ教徒は安息日に仕事をしない。

通勤、出社しない。
家事労働もしない。
掃除・洗濯・炊事もしない。
安息日には乗り物を運転しない。
だからエレベーターの行き先階ボタンも押さない。スイッチ操作も仕事をした、働いたことになる。ガスコンロも電子レンジも使わないです。

超正統派は、安息日にはトイレットペーパーを切る行為、外出の際に物を持って出る行為も「労働」とみなすため、しない。普段からインターネットやテレビ、映画も見ない生活をしている。

2019年04月05日 読売新聞朝刊

新聞記事にはこれら超正統派の生活が紹介されている。信仰の妨げになるので就労せず、イスラエル政府から12万円ほどの生活保護を受け取って暮らしている。兵役も免除されている。

ユダヤ教徒は〇〇だ、と言いたいが、世俗派も超正統派もいる。多様性を知っておきたい。





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