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すべて正解の問い

公民科の授業について、授業づくりの考え方を整理して、発信しています。

授業づくりの基本は、生徒たちと対話する活動だ。教員は生徒たちに問いかける。生徒たちは学習の途中だ。テストにそのまま出るような質問をいきなりしてはいけない。

国会は何のためにある?
イギリスの首相は誰?
日本の輸出相手国第一位はどこ?

答えが1つで、的確な答えが決まっているものは、答えを生徒が言った瞬間、先生に○か✖️かを言われる。正解を知っていないと答えられない。
このタイプの質問は、前回の復習を授業の始めにするときなど、みんなが答えられる場合に限定したい。

最近、値上がりしているもの何か知っていますか?
法律で禁止されていることには、どんなことがありますか?
あなたは誰の命令なら従いますか?

公民はよのなかを見るための授業だ。生徒にはよのなかに関心を持ってもらいたい。授業での問いかけをきっかけに、授業後はよのなかを見てほしい。よのなかを見て考えてほしい。

最近、値上がりしているものは何か
答えられる生徒は、商品や値札をチェックしている生徒だ。値上がりはニュースに取り上げられることもある。原油や株式と答える生徒もいるかもしれない。よのなかを見ていないと答えられない問いだ。少し手助けして、小学生の時より高くなった物はないか?と問いかけてみるのもいい。
このタイプの質問も、まだ答えにくさはある。生徒の状況を見て、質問の仕方を変える必要はある。

発言させるのが基本だけど
教室で教師の問いかけに、挙手して答えるのは勇気がいる。間違っていてもいいから答えられるようにするには、生徒との距離を縮めて、先生は親しみやすくならなければならない。

書かせる・入力させる
小さな紙を配って、答えを無記名で書かせてすぐに回収して、ラジオ番組でハガキを紹介するように、みんなの答えを利用する。タブレット端末を全員が持っているなら、入力させると同じことが簡単にできる。

タブレットがあっても、大事なのは質問のしかたが優れていること

多くの生徒に発言させるために、みんなの知っていること集めは有効だ。みんなで果物の名前を言っていこう。これは理想的だが、公民の授業でなかなか、果物みたいなものはない。果物みたいなものを見つけるのが、教師の能力である。

みんなの知っている法律にはどんなのがある?

これは難しい。たいていは答えられない。刑法ですら、生徒は知らない。家庭科の授業で出てきたとか、最近のニュースで話題になっているものを答えられる生徒がいても、そんなに答えやすい質問ではない。
みんなの知っていること集めは、知っていることを言葉にする活動、考えを巡らせる活動だ。生徒同士が答えの重複を避けて、ほかにもこんな答えがある、と言ってくれる。他の生徒の発言に耳を傾ける。違うほかの答えを探す。とてもアクティブな活動だ。

法律そのものを答えさせるのではなく、法律で禁止されていることなら、答えやすい。条文を確かめていなくても、法律名を知らなくても答えられる。教員の助言方法としては、学校や先生に禁止されていることは?、飲食店では?と発言を促せる。子どもは禁止されていることって?特別な場合だけOKなものもあるね。先生はいろいろ助けられる。

優れた質問は答えが複数あることだけでなく、先生が生徒を助けやすいことも大事

あなたは誰の命令なら従いますか?
個人的なことや家庭の状況を答えるのは誰もが抵抗がある。プライバシーの問題だ。この質問には、親や恋人、好きな人と答えるだろうか。ひょっとしたら、裁判官や偉い人という答えもあるかもしれない。公民の授業では、自分なりに考えて答えてみることも大事だ。倫理の授業では、そういうテーマはよくある。プライバシーの問題を解決するには、紙やタブレットの利用がいい。

同じ答えが連続してもいい場合もある
答えの種類が少なくても答えることに意味がある

同じような答えが多く集まっても、必ず少数派の答えがある。少数派の答えに気づくことは、特に自分が多数派の場合、有意義である。ほとんどが親や恋人と答える質問の少数意見を、授業で紹介できれば多数派の生徒の視野を広げられる。少数派も自分が少数派だと気づける。
挙手して発言し、自分が少数派だと晒されるのは辛い。プライバシーに配慮して答えを集め、多くの人がこう答えたけど、こんな答えもあったよと紹介すればいい。ベスト3のようにランキング発表もできる。自分では思いつかない答えに出会えることが、教室で学ぶメリットだ。教員も予想できない答えはある。目の付け所がいい答え、違った角度からの答えは教員にとっても収穫だ。他のクラスで出た答えも紹介できる。

タブレットがあればこういう学び合い、視野を広げる機会や多様性を知る機会はつくりやすくなる。知識伝達や導入だけでなく、機会づくりは授業の大事な要素だ。


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